頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

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第131話「シモンの気遣い」

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 アレクサンドラ長官との懇親ランチが終わった。

 ……正式な婚約決定を待ち、それからエステル、クラウディアのふたりと結婚し、
シモンはラクルテル公爵家の跡を継ぐ。

 アレクサンドラからバックアップの約束も取り付け、人生の未来設計が見えて来て……
 3人は気持ちが大いに前向きとなった。

 シモンとエステルは、王宮の出口まで帰宅するクラウディアを送って行くと申し出た。
 アレクサンドラが相変わらず多忙なのを配慮しての事だ。

 一歩長官室を出れば、公の場であり、まだ就業中。

 さすがに3人はいちゃいちゃ抱き合ったりせず、普通に歩き、1階へのロビーへ降りた。
 1階のロビーには、クラウディアお付きの侍女リゼットと、警護役の騎士アンヌが待っていた。

 お付きとはいえ、プライベートな話題満載な懇親ランチに同席させる事は出来ない。
 それゆえ、クラウディアは待っていた家臣ふたりに『気遣い』したようである。
 彼女の心の成長が感じられると思い、シモンは喜ばしい。

「リゼット、アンヌ、今終わったわ。そちらはお弁当を食べたかしら?」

「はい、お嬢様に作って頂いたお弁当を完食致しました」
「渾身の作、とても美味しゅうございましたよ」

 リゼットとアンヌの心からの笑顔。
 クラウディアの料理の腕は相当上がっているようだ。

 悔しそうにエステルが反応する。

「う~、局長。残念ながらお料理修業は私、苦戦中です」

「まあ、来週シモン様のご自宅で行うお料理勝負は、私の楽勝でしょう」

「クラウディアがそこまでの軽口を叩くのも今のうちだけ、絶対に巻き返しますから」

「いよいよ来週か、料理勝負。俺も風車亭のレシピで料理特訓中だ」

「シモン様、魔法の教授もお願い致します」

「そうね、攻防の魔法に、治癒魔法。レベルアップを目指しましょう」

「ははは、何かデートっていうより、3人で鍛錬とか修行……みたいになって来たな」

「宜しいのです! 私達3人は愛し合いながら、高め合う関係なのですわ」

「あ、クラウディアったら、たまには良い事言う」

「何をおっしゃいます、エステルお姉様。私は常に良き事しか言いませんわ」

 そんな他愛もない会話を交わしながら……
 シモン達は王国復興開拓省庁舎を出て、王宮の駐車場へ向かう。

 ……駐車場には、ラクルテル公爵家の専用馬車が待っていた。

 ここで、アンヌが直立不動でシモンへ敬礼する。

「シモン・アーシュ局長! ではクラウディア様を無事、ご自宅まで送り届けます」

 アンヌは……クラウディアの父アンドリュー・ラクルテル公爵から聞き、
シモンが、クラウディアと婚約すると認識している。
 ゆくゆくはシモンが主になるとも。

 しかしシモンの態度はいつもと変わらない。

「アンヌ、改めて君に礼を言おう。いつも身体を張って、クラウディアを守ってくれ、ありがとう。深く感謝しているよ。そして君の姉ジュリエッタも支援開発戦略局の為に頑張ってくれている。今や彼女は欠かせないウチの局員のひとりだ」

「勿体ないお言葉です。姉ジュリエッタともども粉骨砕身し、局長にお仕えする所存です」

 シモンは、恐縮し、控えている侍女リゼットもいたわる。

「リゼット」

「は、はい!」

「本当にありがとう! 君が俺の顔を思い出して、ここで声をかけなかったら、今のこの状態はなかった。感謝しているよ。いつもクラウディアに尽くしてくれている事にも深く礼を言いたい」

「そ、そんな! シモン様! 何と、勿体ないお言葉を!」

「いや、勿体なくない。アンヌもリゼットも身体を大切にな。それとクラウディアが無茶しそうになったら、必ず止めてくれよな」

「はい! それはもう! あのような事件が二度とないよう、閣下と奥様からも重々念を押されておりますから」
「私も、閣下ご夫妻から何度も厳命されております」

 リゼット、アンヌの言葉を聞き、むくれたのはクラウディアである。

「もう! それでは私が節操のない、暴走娘のようではありませんか!」 

「ははは、クラウディア。今はそんな無茶はしないと信じているさ」

「はい、シモン様。絶対に無茶は、うかつな行動もクラウディアは致しません」

「分かった! でもエステル、クラウディア、身の回りには……充分、注意してくれ。王都は素敵な街ではあるが、同時に危険に満ちた迷宮……だからな」

「はい! 気をつけます! 約束します!」
「はい! 充分注意致しますわ。私の心と身体はシモン様のものですから!」

 シモンは先日のデートを引き合いに出し……
 ふたりの想い人の身を案じ、改めて注意を促したのである。

 そんなシモンの気遣いをはっきり感じ、エステルとクラウディアは晴れやかな笑顔で応えたのであった。
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