131 / 160
第131話「シモンの気遣い」
しおりを挟む
アレクサンドラ長官との懇親ランチが終わった。
……正式な婚約決定を待ち、それからエステル、クラウディアのふたりと結婚し、
シモンはラクルテル公爵家の跡を継ぐ。
アレクサンドラからバックアップの約束も取り付け、人生の未来設計が見えて来て……
3人は気持ちが大いに前向きとなった。
シモンとエステルは、王宮の出口まで帰宅するクラウディアを送って行くと申し出た。
アレクサンドラが相変わらず多忙なのを配慮しての事だ。
一歩長官室を出れば、公の場であり、まだ就業中。
さすがに3人はいちゃいちゃ抱き合ったりせず、普通に歩き、1階へのロビーへ降りた。
1階のロビーには、クラウディアお付きの侍女リゼットと、警護役の騎士アンヌが待っていた。
お付きとはいえ、プライベートな話題満載な懇親ランチに同席させる事は出来ない。
それゆえ、クラウディアは待っていた家臣ふたりに『気遣い』したようである。
彼女の心の成長が感じられると思い、シモンは喜ばしい。
「リゼット、アンヌ、今終わったわ。そちらはお弁当を食べたかしら?」
「はい、お嬢様に作って頂いたお弁当を完食致しました」
「渾身の作、とても美味しゅうございましたよ」
リゼットとアンヌの心からの笑顔。
クラウディアの料理の腕は相当上がっているようだ。
悔しそうにエステルが反応する。
「う~、局長。残念ながらお料理修業は私、苦戦中です」
「まあ、来週シモン様のご自宅で行うお料理勝負は、私の楽勝でしょう」
「クラウディアがそこまでの軽口を叩くのも今のうちだけ、絶対に巻き返しますから」
「いよいよ来週か、料理勝負。俺も風車亭のレシピで料理特訓中だ」
「シモン様、魔法の教授もお願い致します」
「そうね、攻防の魔法に、治癒魔法。レベルアップを目指しましょう」
「ははは、何かデートっていうより、3人で鍛錬とか修行……みたいになって来たな」
「宜しいのです! 私達3人は愛し合いながら、高め合う関係なのですわ」
「あ、クラウディアったら、たまには良い事言う」
「何をおっしゃいます、エステルお姉様。私は常に良き事しか言いませんわ」
そんな他愛もない会話を交わしながら……
シモン達は王国復興開拓省庁舎を出て、王宮の駐車場へ向かう。
……駐車場には、ラクルテル公爵家の専用馬車が待っていた。
ここで、アンヌが直立不動でシモンへ敬礼する。
「シモン・アーシュ局長! ではクラウディア様を無事、ご自宅まで送り届けます」
アンヌは……クラウディアの父アンドリュー・ラクルテル公爵から聞き、
シモンが、クラウディアと婚約すると認識している。
ゆくゆくはシモンが主になるとも。
しかしシモンの態度はいつもと変わらない。
「アンヌ、改めて君に礼を言おう。いつも身体を張って、クラウディアを守ってくれ、ありがとう。深く感謝しているよ。そして君の姉ジュリエッタも支援開発戦略局の為に頑張ってくれている。今や彼女は欠かせないウチの局員のひとりだ」
「勿体ないお言葉です。姉ジュリエッタともども粉骨砕身し、局長にお仕えする所存です」
シモンは、恐縮し、控えている侍女リゼットも労わる。
「リゼット」
「は、はい!」
「本当にありがとう! 君が俺の顔を思い出して、ここで声をかけなかったら、今のこの状態はなかった。感謝しているよ。いつもクラウディアに尽くしてくれている事にも深く礼を言いたい」
「そ、そんな! シモン様! 何と、勿体ないお言葉を!」
「いや、勿体なくない。アンヌもリゼットも身体を大切にな。それとクラウディアが無茶しそうになったら、必ず止めてくれよな」
「はい! それはもう! あのような事件が二度とないよう、閣下と奥様からも重々念を押されておりますから」
「私も、閣下ご夫妻から何度も厳命されております」
リゼット、アンヌの言葉を聞き、むくれたのはクラウディアである。
「もう! それでは私が節操のない、暴走娘のようではありませんか!」
「ははは、クラウディア。今はそんな無茶はしないと信じているさ」
「はい、シモン様。絶対に無茶は、うかつな行動もクラウディアは致しません」
「分かった! でもエステル、クラウディア、身の回りには……充分、注意してくれ。王都は素敵な街ではあるが、同時に危険に満ちた迷宮……だからな」
「はい! 気をつけます! 約束します!」
「はい! 充分注意致しますわ。私の心と身体はシモン様のものですから!」
シモンは先日のデートを引き合いに出し……
ふたりの想い人の身を案じ、改めて注意を促したのである。
そんなシモンの気遣いをはっきり感じ、エステルとクラウディアは晴れやかな笑顔で応えたのであった。
……正式な婚約決定を待ち、それからエステル、クラウディアのふたりと結婚し、
シモンはラクルテル公爵家の跡を継ぐ。
アレクサンドラからバックアップの約束も取り付け、人生の未来設計が見えて来て……
3人は気持ちが大いに前向きとなった。
シモンとエステルは、王宮の出口まで帰宅するクラウディアを送って行くと申し出た。
アレクサンドラが相変わらず多忙なのを配慮しての事だ。
一歩長官室を出れば、公の場であり、まだ就業中。
さすがに3人はいちゃいちゃ抱き合ったりせず、普通に歩き、1階へのロビーへ降りた。
1階のロビーには、クラウディアお付きの侍女リゼットと、警護役の騎士アンヌが待っていた。
お付きとはいえ、プライベートな話題満載な懇親ランチに同席させる事は出来ない。
それゆえ、クラウディアは待っていた家臣ふたりに『気遣い』したようである。
彼女の心の成長が感じられると思い、シモンは喜ばしい。
「リゼット、アンヌ、今終わったわ。そちらはお弁当を食べたかしら?」
「はい、お嬢様に作って頂いたお弁当を完食致しました」
「渾身の作、とても美味しゅうございましたよ」
リゼットとアンヌの心からの笑顔。
クラウディアの料理の腕は相当上がっているようだ。
悔しそうにエステルが反応する。
「う~、局長。残念ながらお料理修業は私、苦戦中です」
「まあ、来週シモン様のご自宅で行うお料理勝負は、私の楽勝でしょう」
「クラウディアがそこまでの軽口を叩くのも今のうちだけ、絶対に巻き返しますから」
「いよいよ来週か、料理勝負。俺も風車亭のレシピで料理特訓中だ」
「シモン様、魔法の教授もお願い致します」
「そうね、攻防の魔法に、治癒魔法。レベルアップを目指しましょう」
「ははは、何かデートっていうより、3人で鍛錬とか修行……みたいになって来たな」
「宜しいのです! 私達3人は愛し合いながら、高め合う関係なのですわ」
「あ、クラウディアったら、たまには良い事言う」
「何をおっしゃいます、エステルお姉様。私は常に良き事しか言いませんわ」
そんな他愛もない会話を交わしながら……
シモン達は王国復興開拓省庁舎を出て、王宮の駐車場へ向かう。
……駐車場には、ラクルテル公爵家の専用馬車が待っていた。
ここで、アンヌが直立不動でシモンへ敬礼する。
「シモン・アーシュ局長! ではクラウディア様を無事、ご自宅まで送り届けます」
アンヌは……クラウディアの父アンドリュー・ラクルテル公爵から聞き、
シモンが、クラウディアと婚約すると認識している。
ゆくゆくはシモンが主になるとも。
しかしシモンの態度はいつもと変わらない。
「アンヌ、改めて君に礼を言おう。いつも身体を張って、クラウディアを守ってくれ、ありがとう。深く感謝しているよ。そして君の姉ジュリエッタも支援開発戦略局の為に頑張ってくれている。今や彼女は欠かせないウチの局員のひとりだ」
「勿体ないお言葉です。姉ジュリエッタともども粉骨砕身し、局長にお仕えする所存です」
シモンは、恐縮し、控えている侍女リゼットも労わる。
「リゼット」
「は、はい!」
「本当にありがとう! 君が俺の顔を思い出して、ここで声をかけなかったら、今のこの状態はなかった。感謝しているよ。いつもクラウディアに尽くしてくれている事にも深く礼を言いたい」
「そ、そんな! シモン様! 何と、勿体ないお言葉を!」
「いや、勿体なくない。アンヌもリゼットも身体を大切にな。それとクラウディアが無茶しそうになったら、必ず止めてくれよな」
「はい! それはもう! あのような事件が二度とないよう、閣下と奥様からも重々念を押されておりますから」
「私も、閣下ご夫妻から何度も厳命されております」
リゼット、アンヌの言葉を聞き、むくれたのはクラウディアである。
「もう! それでは私が節操のない、暴走娘のようではありませんか!」
「ははは、クラウディア。今はそんな無茶はしないと信じているさ」
「はい、シモン様。絶対に無茶は、うかつな行動もクラウディアは致しません」
「分かった! でもエステル、クラウディア、身の回りには……充分、注意してくれ。王都は素敵な街ではあるが、同時に危険に満ちた迷宮……だからな」
「はい! 気をつけます! 約束します!」
「はい! 充分注意致しますわ。私の心と身体はシモン様のものですから!」
シモンは先日のデートを引き合いに出し……
ふたりの想い人の身を案じ、改めて注意を促したのである。
そんなシモンの気遣いをはっきり感じ、エステルとクラウディアは晴れやかな笑顔で応えたのであった。
0
お気に入りに追加
470
あなたにおすすめの小説
最弱テイマーの成り上がり~役立たずテイマーは実は神獣を従える【神獣使い】でした。今更戻ってこいと言われてももう遅い~
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティーに所属するテイマーのカイトは使えない役立たずだからと追放される。
さらにパーティーの汚点として高難易度ダンジョンに転移され、魔物にカイトを始末させようとする。
魔物に襲われ絶体絶命のピンチをむかえたカイトは、秘められた【神獣使い】の力を覚醒させる。
神に匹敵する力を持つ神獣と契約することでスキルをゲット。さらにフェンリルと契約し、最強となる。
その一方で、パーティーメンバーたちは、カイトを追放したことで没落の道を歩むことになるのであった。
ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。
途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。
さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。
魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる