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第125話「ウチの会議は楽しい」

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 お昼休み、王国復興開拓省職員食堂……
 支援開発戦略局のメンバーはもう『お決まり』ともいえる全員ランチを楽しんでいる。

 ……小村の支援策補完を詰める打合せは既に終わっていた。

 バルテレミーの三圃式農法の村民への教授は……
 出向が承認された農民出身のギルド冒険者が参加する事により、教授がより丁寧に、細やかに且つ徹底されると全員の意見が一致した。
 分かりやすく改稿されたマニュアルを基に、村民と念入りに打合せをする事となった。
 また果実を小村の特産品として育成して行く提案も、とても面白いと皆が賛成した。

 イネスの住居対策提案も……
 村民がより使いやすくする為、試作品として建築した汎用住宅の設計に大幅な改良が加えられ、コストも軽減された事が大いに評価され、余裕でクリアした。
 再度、改良版の試作品を数棟、建てる事となる予定だ。

 ペリーヌの商業対策は、商業ギルドの調査部により村民の消費傾向が完全に分析された。
 そのデータを基に、小村唯一の店舗に仕入れる販売品リストが完成した。
 データ報告書をエビデンスとし、村長と店主へ商品販売を提案、改めて打合せをする事となる。
 また建築担当のイネスとタッグを組み、店舗の大幅な改築も提案する事に。

 そして、ジョゼフの防護壁と防犯対策に関しては、村の自警団と打合せを持ち、実際の使い心地を取材、不満点の有無を確認、もしあった場合、相談の上、対応した改良点を探る事となった。

 と、いう事で、局員達の話題は支援策の補完から、特産品の提案に移っていた。

「小村へは果実育成を提案したから、王国各地の野菜の特産品化も提案するぞ。水属性の冷温魔法をかければ、遠方の野菜でも鮮度を保ったまま王都で売れる!」
「私はお菓子関係の原料かな! 甘党をターゲットにした高収益狙い! 私が大好きなメイプルシロップとかどうかしら!」
「俺は燻製くんせいで攻める! 燻製なら肉と魚、野菜。何でも行けるじゃないか! 酒好きには燻製って、つまみで人気が出る!」
「私は工芸品だ! 知る人ぞ知る、世に埋もれた職人がたくさん居ると思うぞ!」

 ランチを摂りながら、局員達の会話は弾んでいる。

 シモンとエステルはとても嬉しくなり、頷き合うと、一緒に会話へ加わったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ランチが終わり……
 シモンとエステル以下、局員達は3階の支援開発戦略局のオフィスへ戻った。

 午前に引き続き、本日は午後も会議である。

 シモンのアイディアが採用されて、商業ギルド内にオープンするショップで販売される特産品の提案が行われる。

 局員各自の提案内容は、自分の専門分野に基づいたリアルなものから、素人の思い付きレベルまで様々だが……

 ひとつの提案に対し、全局員が一丸となり、議論が尽くされ、実現する為の可能性が探られ、裏付けも取られて行く。

 最終的には……
 王国復興開拓省と商業ギルドの各調査部が様々なデータを基に、提案者が正式な企画書にする為に、『予算付きのひな型』を作成してくれる運びとなった。

 この会議においては……
 シモンとエステルは提案もするが、進行且つ調整役としての役割が大きい。

 実のある『結果』を出す事が、会議を行う最大の目的。

 だが、今後の事もある。
 提案者のモチベーションを下げず、積極的に発言して貰う為、場が否定的にならないよう、シモンとエステルは腐心する。

 提案されたもの、発言された言葉が、とんでもないアイディア、意見だとしても、
『積極性の表れ』だと他者に好意的に受け止めて貰う気遣いとフォローをしたのだ。

 その為、局員達は臆せず、活発に意見交換をする事が出来た。
 
 やがて時間が来て、会議は終わった。
 討論が盛り上がり過ぎて、夜通し続くような雰囲気となったのは嬉しい悲鳴である。

 しかし、超が付く緊急案件以外に徹夜などはしないというのがシモンのモットーなのだ。
 無理をする場合もあるだろうが、けして『今』ではない。
 
 時間切れを理由に、仕事を投げ出すような愚行をするつもりはないが……
 前職場の超が付くダークサイドをさを反面教師とし、シモンは仕事にちゃんとメリハリをつけたいのである。

 さてさて!
 提案内容は、「あり」と「なし」に大きく分けられた。
 更に「あり」の中でも前向きに検討するもの、少し改善するもの、コンセプトから完全に練り直すものなどに分けられたのだ。

 最後にシモンとエステルが会議を締める事となった。

 まずはシモンが局員達をいたわる。

「皆、お疲れ様。今日はずっと会議で疲れただろう。ゆっくり休んでくれ。そして本日出された提案内容の裏付けだが、ウチの調査部には俺とエステルが依頼する。商業ギルドの方は、悪いがペリーヌ、頼むぞ」

「あいあいさー! お任せあれ、局長!」

 ペリーヌが騎士隊風に「びっ!」と敬礼する。
 仕草が可愛かったので、局員達は全員楽しそうに笑う。

「ははははは」
「あはは」
「ふふふっ」

 そして、エステルが、散会を告げる。

「では、皆さん、お疲れ様でした。本日の業務は終了です」

「「「「「お疲れ様でした!」」」」」

 オフィスから引き上げる騎士のジュリエッタが、見送るシモンへ微笑む。

「局長」

「おう」

「武道ひと筋の私は本来、会議が大の苦手だ。しかしウチの会議は全く違う」

「へえ、違うかい?」

「ああ、武道以外は素人である私の意見も、誰もが真面目に聞いてくれる。私もいろいろな意見を聞くのが面白い! それが全員の力ではっきりとした形となるのだ! 本当に楽しいな……では、失礼する、また明日!」

 ジュリエッタは嬉しそうにウインクして、元気よく去って行った。

 こうして……
 支援開発戦略局の会議漬けの一日は、とてもポジティブに終わったのである。
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