上 下
123 / 160

第123話「本気の本気」

しおりを挟む
 翌日、木曜日午前8時15分……
 
 今日も、シモンとエステルのふたりは元気に出勤。
 ふたりの朝は挨拶から始まる。

「局長、おはようございます!」

「おはよう、エステル、今日も頑張ろう」

「はい、頑張りましょう! 局長。もうお約束ですが、まずはご報告です」

「ああ、聞こうか」

 エステルから知らされたのは、朗報である。

「昨日、アレクサンドラ長官からOKが出たと次官補から連絡がありました。局長の提案は全て承認されました」

「おお、やったな」

「はい、局長のご提案通り、冒険者ギルド、騎士隊他、関係各所へ声をかけ、志願者を募ります。志願者を集合させ、ウチの省で説明会を開き、仕事の趣旨を理解して貰った上で、選抜テストを行う事となります」

「おお! 楽しみだな! 有能な奴が来ると良いな!」

「はい! どのような人材が来るのか、大いに楽しみです。冒険者ギルドはジョゼフ、騎士隊へはジュリエッタ経由で、正式発表より少し前に知らせれば宜しいと思います。それに、長官から新たなご指示が出ました」

 アレクサンドラから?
 新たな指示?
 一体、何だろうか?
 シモンは気になる。

「長官から? 新たな指示?」

「はい! この説明会は、我が支援開発戦略局局員募集にとどまりません。省内の各部を支える一般職員、専門職の募集も行う事となりました」

 何と!
 アレクサンドラは、支援開発戦略局のみでなく、王国復興開拓省全部門における職員の募集をかける事を決めたらしい。

 さすがにシモンは驚いた。
 アレクサンドラの決断力と……かける予算に。

「おいおい、それって、凄い応募者数にならないか? 採用の為の予算だって莫大になるぜ」

「はい! 応募者も多いし、採用数も結構な数となりますし、予算も莫大ですね! ですから当然、長官、次官、次官補の3人、そして人事部も全面的に協力致しますから、冒険者ギルド、騎士隊へも改めて人事部からも正式に通知が行く事となります」

「おお! 上席3人と人事部が? ウチの局員募集だけのはずが、えらく話が大きくなって来たな」

「はい! えらく大きくなりました。ちなみに、3案件の討伐予算組みですが、結局、金貨30万枚のままで、確定致しました」

「はあ? 30万枚って、要らないよ、そんなに」

「まあ、そうおっしゃらずに、長官が最終決定した事ですから、くつがえせません。とりあえず受け取りましょう。ちなみに、この30万枚の予算の使途は、局長の裁量に任せ、特に縛りを設けないそうです」

「はあ? 予算が俺の自由裁量? 特に縛りを設けない?」

「ええ、一応案件ひとつに付き、10万枚の目安ですが、使う際、1案件が5万枚しか費用がかからなかった場合、残りの2件で25万枚予算を使ってもOK。また討伐以外の予算に使用しても全然構わないそうです」

「何だ、それ。本当に俺が自由に使って良いんだ、金貨30万枚を」

「はい! 無駄遣いをしなければ。それと、念の為、話を戻しますと、局員、職員採用の予算は別枠だそうです」

「そうか! いろいろ言いたい事はあるが、俺も宮仕えの身だ、もろもろ了解した。アレクサンドラ長官の意を受け、ウチの省を大幅に強化する陛下とマクシミリアン殿下は本気の本気なんだな」

「はい! 局長と同じく、本気の本気だと私も思います! 王家から、我が王国復興開拓省への大きな期待の表れだと」

 エステルは軽く息を吐き、話を続ける。

「では局長、次は本日の予定です。ええっと、いろいろありますから、本日も午前午後ぶっ通しで会議となりますね」

「うわ! ぶっ通し? また省内でずっと会議か! でも仕込みの時期だからしょうがない。その代わり、一旦、出張に出たら俺達って、省外での業務が長いしな」

「ですね! と、いう事で午前中は今、ご報告した募集の話を局員全員へ伝え、すり合わせ。その後は成り行きで終業時間まで、各支援策補完の詰めと、特産品選定と同ショップオープンの具体的な打ち合わせを。打合せは局員全員でディスカッションする形になると思いますが、ペリーヌ局員からはショップも含め、新たな提案があると思われます」

「成程。じゃあエステルの言う通り、ランチをはさんで、ずっと省内に詰め込まれだな!」

「はい! という事で改めて気合を入れ直し、頑張りましょう!」

「おう!!」

 ティーグル王国は、王国復興開拓省に大いに期待している。
 シモンも近々、マクシミリアン殿下への謁見も控えている。
 仕事への「やりがい」が、どんどん大きくなる!

 シモンとエステルは、こぶしとこぶしを軽く突き合わせるフィストバンプを行い、3階の支援開発戦略局オフィスへ向かったのである。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最弱テイマーの成り上がり~役立たずテイマーは実は神獣を従える【神獣使い】でした。今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティーに所属するテイマーのカイトは使えない役立たずだからと追放される。 さらにパーティーの汚点として高難易度ダンジョンに転移され、魔物にカイトを始末させようとする。 魔物に襲われ絶体絶命のピンチをむかえたカイトは、秘められた【神獣使い】の力を覚醒させる。 神に匹敵する力を持つ神獣と契約することでスキルをゲット。さらにフェンリルと契約し、最強となる。 その一方で、パーティーメンバーたちは、カイトを追放したことで没落の道を歩むことになるのであった。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...