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第119話「良き秘書! 良き調整役!①」

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 シモンとエステル、ジョゼフ、ジュリエッタの打合せは改めてリスタートされた。

 まずは、クランを組む上で担う役割を再確認する。

 冒険者ギルドのサブマスター、ジョゼフが口を開く。

「局長、俺達4名ならば、王国の騎士隊や軍というよりも冒険者のクランです。クランの一番シンプルな構成だと探索役、盾役、攻撃役、後方支援役の4つに分けられる……まずは各々の役割を決めましょう」

 ジョゼフの言葉に最初に反応したのは、……シモンだ。

「分かった。となれば、探索役と盾役は俺だな」

 だがシモンの提案に反論したのはジュリエッタである。

「な! 何を言う! 王国騎士たる私が、当然盾役だろう。攻撃役も兼ねるがな」

 ここで、冷静に言葉をはさんだのはエステルである。

「皆さん、私から、各自の役割をご提案しても宜しいでしょうか?」

 更にエステルは、シモンに『大いなる味方が加わった事』も告げた。

「局長は先日、召喚魔法で高位の存在を呼び出しました」

 シモンが高位の存在を魔法で呼び出した!?

 エステルの話は唐突で驚くべきものだった。
 ジョゼフとジュリエッタは、びっくりしてしまう。

「こ、こ、高位の存在って?」
「な、な、何を! よ、呼び出したというのだ?」

「うふふ……局長、私からお話しても宜しいですね?」

「ああ、構わないよ」

「では、私からお伝えします。局長が召喚魔法で呼び出したのは伝説の冥界魔獣ケルベロスです」

「はああっ!? ば、ばかな!」
「ケ、ケ、ケルベロスだとぉ!?」

「そして! 更に更にっ! 地の高位魔法が同時に行使可能ですので、盾役として人間大で動きの機敏なゴーレムも召喚出来ます」

「な! 局長が使役するのは巨大ゴーレムだけではないのですか!」
「それもっ! ケルベロスと同時に呼び出せるのか?」

 ジョゼフとジュリエッタの疑問に対し、エステルはすまし顔で、

「はい! という事で局長、ご指示を!」

 シモンにクロージングを要請した。

「ああ、という事で、変更する可能性もあるが……基本的に探索役は俺とケルベロス。盾役はゴーレムが担い、ケルベロスも兼務。攻撃役は、ケルベロス、ゴーレム、俺が兼務で、ジュリエッタも担当する。後方支援役はエステルとジョゼフに任せたぞ」

「う! あ、ああ、分かりましたよ」
「りょ、了解したぞ」

 あまりにも……あまりのも圧倒的な戦力を加えたシモンの決定に……
 ジョゼフとジュリエッタが異議を唱える事は不可能だった。

「だからさ、オーガ100体なんか、俺ひとりで充分だって言ったのに……」

 思わずつぶやいたシモンの独り言。
 対して、エステルはきっぱりと、

「局長! だめです! それは断固! ……却下です!」

 微笑みながら、怖い眼差しで言い切ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 更にシモンは話を続ける。

「小村から西へ約20Km の森林にオーガの群れが100体。こちらはもう概要を説明したな。……更に2案件あるんだ。その森林から西へ約10Kmの渓谷内にゴブリンの群れ2,000体が、更にその渓谷から少し下流へ下った広大な湿地帯にリザードマン約500体といったところか……まあ、これくらいなら村に戻らず3連チャンぶっ続け、俺達4人だけで充分だろう」

 高難度案件3連発。
 それをたった4人で完遂しようとするシモン。
 またも仰天したのは、ジョゼフとジュリエッタだ。

「おいおい、これくらいなら充分って……局長は何言ってるんすか! オーガだけでも大変なのに、ゴブリン2,000体に、リザードマン500体っすか! ギルドなら、最低でも上級ランカー100名以上で挑む高難度案件ですよっ!!」
「そうだ!! 騎士隊だって、私のような魔法騎士を入れて最低でも100名は必要だぞ。ちなみに王国軍なら一個大隊、いや一個師団は必要と言い切れる。当然装備は万全にしてだ!」

「え~! さすがに大げさだろ! それに、そんなん頼んだら、ウチの予算が底ついちまうよ」

 ここで意外にもシモンへブレーキをかけたのが、彼の味方であるはずのエステルである。

「局長!」

「お、おう! 何だい、エステル」

「はい! ジョゼフ局員とジュリエッタ局員の心配も尤もです。局長が倒されたオーク100体と捕縛した山賊1,000人の実績はとりあえず置いておきましょう。まずはオーガ100体討伐の完遂を目指すのです。オーガの討伐をなし得た以降は討伐メンバー全員の健康状態と状況を見て、成り行きという事で! ……いかがでしょう?」

「様子を見て、成り行き……健康状態と状況次第か。う~ん、道理だな、分かった」

「それと! 3案件の討伐予算はすでに申請中ですが、改めて次官補へ、今のふたりのご意見を基に再申請しておきましょう」

「お、おう! それも分かった。ウチの局のダークサイド化は避けなきゃな」

「と、いう事で、おふたかたには、ギルド及び騎士隊が参加する討伐作戦立案の提示を見積付きでお願い致します……宜しいでしょうか?」

 エステルは良き秘書であるとともに、シモンと局員の間に立てる良き調整役のようである。

「ああ、納得した! そして無謀とは思うが、局長の意見も尊重しよう。我々4人で行う作戦の方も、ジュリエッタと相談する」
「うむ、了解だ!」

 ジョゼフとジュリエッタは顔を見合わせ、苦笑すると……
 大きく頷いていたのである。
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