頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

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第116話「参った!」

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 シモンの魔物討伐単独行希望に対し、エステルを筆頭とし、局員全員から非難が殺到。

 最後に騎士ジュリエッタが締める。

「局長! 冗談はよしこさんとしても、だっ! 単独行は局員全員で却下だぞ! 改めて魔物討伐の段取りを組んでほしいものだ!」

「はあ? 冗談はよしこさんって……ジュリエッタ、まだ若いのに。その言い回しは、もう年寄りしか使わんぞ」

「バ、バカモノ! 論点はそこではないっ!」

 ジュリエッタはわずかに頬をあからめると、

「今回は! 私も必ず魔物の討伐に参加する!」

 と、きっぱり言い切った。

 ハッとし、ジョゼフが慌てて手を挙げる。

「きょ、局長! お、俺、わ、忘れてましたぁ!」

 場の全員の視線がジョゼフへ集中する。

 プレッシャーの中、ジョゼフはおずおずと一枚の金属片を差し出した。

「次官補からお聞きになっていると思いますが、このたび局長は冒険者ギルドランクSに認定されました。更に! 私や次官補と同じく、サブマスターの権限も与えられます。こちらは新たなプラチナ製の身分証ですっ!」

 エステルは先ほどレナから聞いている。
 だから淡々と、

「局長、おめでとうございます」

 というが、ジョゼフ以外の局員は、口々に祝辞を述べる。

「おめでとうございますっ!」
「素敵ですっ!」
「やりましたね!」
「凄いです!」

 局員達が賛辞するのは、サブマスターという役職ではなく、ランクSという強さの証が誇らしいのである。

 ただひとり、渋い顔つきなのがジュリエッタである。
 主ラクルテル公爵から、万が一シモンが退官する場合は、騎士隊へ引っ張るよう厳命されているからだ。
 ちなみにジュリエッタは、公爵の愛娘クラウディアがシモンと恋人の証を交わした事をまだ知らない。

 さてさて!
 なんやかんやあったが、結局シモンは折れた。
 単独行を諦めたのである。

「仕方ない。では小村の支援補完を行いながら、魔物討伐の為、俺を含め別部隊を組む」

 すかさず挙手したのは、エステルである。

「はい! 当然、私も志願し、参加致しますっ!」

「おいおい、エステル」

 シモンが止めようとするが、エステルは断固拒否。

「いくら局長命令でも、これだけはお断り致します。私……局長を守る為なら、容赦なく非情になりますから!」

 エステルの決意を聞き……
 「ふっ」と、笑い、大きく手を挙げたのがジュリエッタだ。

「うむ! 良い覚悟だ。素敵だ、最高の秘書だぞ、エステル。そして、改めて言おう! 騎士として、私も当然参加する!」

 更に、参加を表明したのはジョゼフである。

「俺も参加するっ!」

 しかし、ジョゼフまで討伐に参加すれば、小村の警護役が皆無となってしまう。

 シモンが懸念を伝えれば、

「なのでぜひ局長に認めて頂きたい! 前回参加した、警護役兼務が可能な農民出身の冒険者達の出向を!」

 ジョゼフは、きっぱりと言い、一歩も引かなかったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 局内会議は終わった。
 時刻はすでに午後5時30分前。

 シモンは前職の教訓から、残業を強いたりはしない。
 但し、自分が省内に残って仕事をすれば、局員達も遅くまで残業をするに違いない。

 なので、局員達から受け取った雇用関係、企画書等、書類の内容確認、申請を行ったら、帰宅する事にした。
 一応、エステルも含め、局員各自へ伝えておく。

「皆、まだ疲れが残ってるだろ? 俺も今日は早めに、そうだな、遅くとも午後6時30分には帰るからな」

 シモンとエステルは、局員達へ告げると、局長室へ戻った。

「後は書類の確認と申請だけだ。エステルも、もう帰って構わないぞ」

「ええっ?」

「いや、ええって……業務が終了したら、無理に残業する事はないからさ」

「だって、私と離れるのが、そんなに喜ばしいですか?」

「は? 何言ってるの? エステル。そんなわけないだろ」

「うふふ、冗談です。私、今日の単独行の言動で改めて認識致しました。局長は向こう見ず過ぎます」

「向こう見ず過ぎるかな? 俺……そんなつもりないんだけど」

「いいええ、凄く向こう見ずですよ。まあ、これまでご自身に降りかかった修羅場のご経験が自信のみなもととは思いますけど……無茶は絶対にいけません」

 修羅場の経験が自信の源……か。
 確かにそうだ。
 コルボー商会時代に体験した様々な地獄が俺を強くした。

 エステルの指摘にシモンは苦笑した。
 彼女は、自分をしっかりと理解した上で、柔らかくたしなめていると。

 原因は、はっきり分かる
 よこしまな理由などではない。
 エステルはひたむきにシモンを愛し、支えようとしているからだ。

「参った! エステルはいつも鋭いな。まあ確かにこれまで経験した最悪の状況より全然まし、もしくは楽勝だと思うからなんだ」

「うふふ」

 図星だというシモンの言葉を聞き、エステルは優しく微笑んだのである。
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