頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

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第115話「心配でたまらないんですからっ!!」

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 シモンとエステルが局員達へ周知した通り、本日午後は支援開発戦略局の局内会議である。
 議題は、小村支援の仕上げ及びシモンが行う近隣の魔物討伐に関してである。

 当然議長役はシモン、補助役は秘書のエステルが行う。

「では、局内会議を行う。まずは本日の会議の打合せの内容と今後の予定を言おう。午前中に幹部会議が行われ、長官以下上席3人とすり合わせをし、おおむね了解を得た。小村に関しては、先日行った支援の補完作業及び、収益が稼げる特産品の提案とフォローを行う。但し、支援のやり過ぎは禁物だと長官から釘を刺された。あくまで俺達は手助けをするという基本スタンスで、村民の自主性を重んじ、やる気を出させよという事だ」

 シモンは軽く息を吐き、話を続ける。

「そしてこれらの施策の実施中に、俺と何人かは別部隊として、近隣の魔物討伐を行う……以上だ」

 少し長いシモンの説明が終わり、エステルのフォローが入る。

「まずは小村支援の補完作業に関してです。皆さん、何かご意見やご提案があればお願い致します」

 ここで挙手をしたのが、冒険者ギルドサブマスターのジョゼフである。

「局長はご存じかもしれませんが、前回参加した農民出身のランカー冒険者が全員当局へ出向を求めております。ぜひ受け入れをご検討ください」

 続いて挙手をしたのが、農業の専門家バルテレミーである。

「ジョゼフが連れて来たランカー冒険者は実に優秀でした。警護役も兼務出来ますし、腰が低く、教え方も丁寧です。村民とも折り合いが抜群に良いので、ぜひウチの局員に加える事を提案致します。彼らの協力を得て、三圃式農法の徹底的な教授を行いたいと思います」

「成程。では今のふたりの意見に反対の者は居るか? 何かあったら挙手した上で、意見を述べてくれ」

 シモンが尋ねたが、挙手をする者は居なかった。
 局員全員が冒険者達の採用に賛成という事である。

「よし! 前向きに検討しよう。ではジョゼフ、念の為、雇用条件を再確認した上で、書面にて提案してくれるか? 提出先はエステルだ」

「了解です、局長」
「分かりました」

 ここで「はいっ!」と手を挙げたのが、商業ギルドのサブマスター、ペリーヌである。

「局長! ウチからも商業施策と店舗開発が専門の人間を複数出向させたいと思います。ぜひご検討を!」

「おお、前向きだな、ペリーヌ。ジョゼフ同様、書面にて提案してくれ」

「はいっ! 既に持参しておりますっ!」

 こうなると、建築の専門家イネスも負けてはいられない。
 続いて挙手をする。

「局長! ウチの作業員も引き続き雇用のご検討を! それと汎用型一般住宅のコストダウン及び改良を提案致します。修正済みの設計図と見積書も持参しております!」

「おし! 見せて貰おう!」

 ここで、再びバルテレミーが挙手をする。

「局長! 私は特産品候補となる果実の提案をしたいと思います。ぜひ小村で栽培の提案を! 企画書も用意しております。ぜひご覧くださいっ!」

 こうして、局内会議はとんでもなく熱く盛り上がり、局員全員が参加し、意見を交わしたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 約2時間、小村支援の補完作業に関して議論が尽くされ……
 議題は、シモンが行う近隣の魔物討伐に移った。

 いきなり大ブーイングが起こる。
 シモンの不用意なひと言が原因である。

「資料を見たんだけど、たぶん大丈夫そうだからさ……効率を考えて、俺ひとりで討伐に行こうと思う」

 またも出たのだ。
 シモンの単独行動宣言が。

 すかさずエステルが。

「絶対ダメ! 却下ですっ!」

 続いて局員達全員も猛反対。

「いかんです!」
「とんでもない!」
「またですか! いけません!」
「何考えてらっしゃるのですか!」
「論外だ!」

「いや~、大丈夫だって。所詮オーガ100体とか、そんなもんだよ」

 シモンは「しれっ」と言い、苦笑した。

 補足しよう。
 オーガとは人食い鬼とも呼ばれる大型の人型魔物ヒューマノイドだ。
 体長は3mから最大級の個体は5m前後に達する。

 肉食で特に人間を好み、性格は残忍且つ、凶暴である。
 但し魔法は使えず、武器はとてつもない膂力りょりょくと、爪、牙である。
 実力対比の目安ならば、1体につきゴブリンの約30倍、オークの約5倍の強さを持つと言われている。
 
 普通の常識を持つ者なら、たったひとりで、100体もの群れに挑む無謀はしない……

「はあ!? 所詮とかあ!! オーガ100体がそんなものって!! 何をおっしゃっているんですか!! 局長!!」

 エステルが声をからして、いさめるのも無理はない。
 しかし、シモンは、相変わらず苦笑したままだ。

「まあまあエステル、そう興奮しないで」

「当たり前ですっ! 興奮しますよぉっ!! 心配でたまらないんですからっ!!」

 エステルは怒鳴るように言い返すと、巣ごもり前のリスの如く、頬を可愛く、
「ぷくっ」とふくらませたのである。
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