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第114話「私達を突き動かすもの②」

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 シモンとエステルは一旦局長室へ戻った後、幹部会議の内容を簡単にまとめ……
 再び3階の支援開発戦略局オフィスへ。

 現在の時刻は午前11時30分少し前。
 午後は局内会議の予定だ。
 長丁場となるやもしれない。

 少し早いが、シモンは局員全員と職員食堂へランチへ行く事にする。

 局内朝礼を行った時、告げているのだが、本日のランチは全てシモンの『おごり』である。
 このランチはささやかだが、局員への慰労も兼ねていた。

 当然、正式な慰労会も行おうとシモンは考えている。
 小村のプロジェクトが一段落した際に行うつもりだ。
 シモンが学生時代、世話になったお礼も兼ね、風車亭を貸し切りなど、どうだろう。

 今後の為、アレクサンドラ長官、リュシー次官、レナ次官補を招くのも良い。
 上席3人が混ざると、局員達は最初緊張するかもしれない。
 だが、3人はとても気さくな性格だ。
 すぐにうち打ち解けるだろう。

 つらつら考えながら、シモンは告げる。

「お~い! 午後は局内会議だ。だから、ちょっと早いが、全員ランチへ行くぞぅ!」

「おう!」
「はいっ!」
「わっかりましたぁ!」
「了解っす!」
「うむっ!」

 やはり全員で一致団結し、仕事をやりとげると絆が生まれる。
 局員達には、はっきりとした連帯感が生まれていた。

 シモンは更に言う。

「さっきも言ったが、すべて俺のおごりだ。好きなものを好きなだけ食べてOKだぞ」

「やった!」
「ラッキー!」
「局長、ごちそうさんです!」
「ありがとう、局長!」
「思い切り、食べるぞ!」

 局員各自から歓声が上がった。
 皆、満面の笑みを浮かべている。
 好きなものを好きなだけといっても、職員食堂だから、高価なランチではない。
 だが、皆シモンの気遣いが嬉しいのである。

「さあ! 皆さん! 行きましょう!」

 エステルの鈴を鳴らすような美声に促され……
 シモン、エステル達、支援開発戦略局の局員一行は、職員食堂へ向かったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 王国復興開拓省庁舎内職員食堂……

 休憩時間開始の12時前だけあって、まだ席は空いている。

 入室後、エステルがさっと動き、テーブルをひとつ確保した。
 これで、7人全員が一緒に座れる。

 職員食堂は、各自が好きなメニューを選び、カウンターに並んで料理を受け取り、最後に精算するシステムだ。

 シモンは約束通り、局員が全員料理を受け取った後に、勘定場で全員の料金を支払う。
 ちなみに魔法銀行の口座に連動した王国公務員の身分証により……
 現金不要の支払いが可能なのだ。

 最後にシモンとエステルが料理を選び、支払いを済ませ、席についた。
 さあ、ランチのスタートである。

 まずはシモンが挨拶する。

 但し、省内の食堂とはいえ、ここは公の場。
 幹部会議の内容をそのまま伝えるわけにはいかない。
 だけどシモンは、懸命に頑張ってくれた局員達を励まさずにはいられない。

 言葉を変えつつ、シモンは言う。

「全員、良くやってくれた。小村の支援はもう少しで終わる。だがまだまだ難儀する人達は多いし、受ける仕事に対し、人手は全く足りていない。

 だが……
 俺達の頑張りで、助け合い、支え合う事を意気に感じる人が増えている。
 このティーグル王国の総力を結集し、誰もが幸せになれるよう願う人が増えているんだ。

 やがて俺達の行いは認められ、同志は増え続け、大きなうねりとなるだろう。

 そう!
 俺達、支援開発戦略局は先駆けとなる。
 そして新たな同志を迎え入れ続け、誰もが熱い思いを持ちながら、笑顔と感謝の気持ちで仕事が出来るよう導いて行くのが役目なのだ。

 まだまだ未熟者の俺だが、局長として身体を張り、お前達の盾となり、剣となる覚悟だ。これからも宜しく頼む」

 ぱちぱちぱちぱち。

 空いているとはいえ、局外の職員も居る。
 きわめて控えめに拍手したのは、真剣な眼差しをシモンへ発するエステルであった。

 ぱちぱちぱちぱち。
 ぱちぱちぱちぱち。
 ぱちぱちぱちぱち。

 続いて、他の職員達も拍手する。
 同じく控えめにだ。
 しかし誰もがシモンに向ける眼差しは、エステル同様真剣であった。

 ここで一転、シモンは柔らかく笑う。

「長々と硬い話をして済まない。さあ、メシにしよう」

 シモンの笑顔を見たエステル、そして他の局員達は、大きく頷き食事を摂り始めたのである。
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