上 下
114 / 160

第114話「私達を突き動かすもの②」

しおりを挟む
 シモンとエステルは一旦局長室へ戻った後、幹部会議の内容を簡単にまとめ……
 再び3階の支援開発戦略局オフィスへ。

 現在の時刻は午前11時30分少し前。
 午後は局内会議の予定だ。
 長丁場となるやもしれない。

 少し早いが、シモンは局員全員と職員食堂へランチへ行く事にする。

 局内朝礼を行った時、告げているのだが、本日のランチは全てシモンの『おごり』である。
 このランチはささやかだが、局員への慰労も兼ねていた。

 当然、正式な慰労会も行おうとシモンは考えている。
 小村のプロジェクトが一段落した際に行うつもりだ。
 シモンが学生時代、世話になったお礼も兼ね、風車亭を貸し切りなど、どうだろう。

 今後の為、アレクサンドラ長官、リュシー次官、レナ次官補を招くのも良い。
 上席3人が混ざると、局員達は最初緊張するかもしれない。
 だが、3人はとても気さくな性格だ。
 すぐにうち打ち解けるだろう。

 つらつら考えながら、シモンは告げる。

「お~い! 午後は局内会議だ。だから、ちょっと早いが、全員ランチへ行くぞぅ!」

「おう!」
「はいっ!」
「わっかりましたぁ!」
「了解っす!」
「うむっ!」

 やはり全員で一致団結し、仕事をやりとげると絆が生まれる。
 局員達には、はっきりとした連帯感が生まれていた。

 シモンは更に言う。

「さっきも言ったが、すべて俺のおごりだ。好きなものを好きなだけ食べてOKだぞ」

「やった!」
「ラッキー!」
「局長、ごちそうさんです!」
「ありがとう、局長!」
「思い切り、食べるぞ!」

 局員各自から歓声が上がった。
 皆、満面の笑みを浮かべている。
 好きなものを好きなだけといっても、職員食堂だから、高価なランチではない。
 だが、皆シモンの気遣いが嬉しいのである。

「さあ! 皆さん! 行きましょう!」

 エステルの鈴を鳴らすような美声に促され……
 シモン、エステル達、支援開発戦略局の局員一行は、職員食堂へ向かったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 王国復興開拓省庁舎内職員食堂……

 休憩時間開始の12時前だけあって、まだ席は空いている。

 入室後、エステルがさっと動き、テーブルをひとつ確保した。
 これで、7人全員が一緒に座れる。

 職員食堂は、各自が好きなメニューを選び、カウンターに並んで料理を受け取り、最後に精算するシステムだ。

 シモンは約束通り、局員が全員料理を受け取った後に、勘定場で全員の料金を支払う。
 ちなみに魔法銀行の口座に連動した王国公務員の身分証により……
 現金不要の支払いが可能なのだ。

 最後にシモンとエステルが料理を選び、支払いを済ませ、席についた。
 さあ、ランチのスタートである。

 まずはシモンが挨拶する。

 但し、省内の食堂とはいえ、ここは公の場。
 幹部会議の内容をそのまま伝えるわけにはいかない。
 だけどシモンは、懸命に頑張ってくれた局員達を励まさずにはいられない。

 言葉を変えつつ、シモンは言う。

「全員、良くやってくれた。小村の支援はもう少しで終わる。だがまだまだ難儀する人達は多いし、受ける仕事に対し、人手は全く足りていない。

 だが……
 俺達の頑張りで、助け合い、支え合う事を意気に感じる人が増えている。
 このティーグル王国の総力を結集し、誰もが幸せになれるよう願う人が増えているんだ。

 やがて俺達の行いは認められ、同志は増え続け、大きなうねりとなるだろう。

 そう!
 俺達、支援開発戦略局は先駆けとなる。
 そして新たな同志を迎え入れ続け、誰もが熱い思いを持ちながら、笑顔と感謝の気持ちで仕事が出来るよう導いて行くのが役目なのだ。

 まだまだ未熟者の俺だが、局長として身体を張り、お前達の盾となり、剣となる覚悟だ。これからも宜しく頼む」

 ぱちぱちぱちぱち。

 空いているとはいえ、局外の職員も居る。
 きわめて控えめに拍手したのは、真剣な眼差しをシモンへ発するエステルであった。

 ぱちぱちぱちぱち。
 ぱちぱちぱちぱち。
 ぱちぱちぱちぱち。

 続いて、他の職員達も拍手する。
 同じく控えめにだ。
 しかし誰もがシモンに向ける眼差しは、エステル同様真剣であった。

 ここで一転、シモンは柔らかく笑う。

「長々と硬い話をして済まない。さあ、メシにしよう」

 シモンの笑顔を見たエステル、そして他の局員達は、大きく頷き食事を摂り始めたのである。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

ざまぁから始まるモブの成り上がり!〜現実とゲームは違うのだよ!〜

KeyBow
ファンタジー
カクヨムで異世界もの週間ランク70位! VRMMORゲームの大会のネタ副賞の異世界転生は本物だった!しかもモブスタート!? 副賞は異世界転移権。ネタ特典だと思ったが、何故かリアル異世界に転移した。これは無双の予感?いえ一般人のモブとしてスタートでした!! ある女神の妨害工作により本来出会える仲間は冒頭で死亡・・・ ゲームとリアルの違いに戸惑いつつも、メインヒロインとの出会いがあるのか?あるよね?と主人公は思うのだが・・・ しかし主人公はそんな妨害をゲーム知識で切り抜け、無双していく!

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

処理中です...