111 / 160
第111話「勝って兜の緒を締めよ!」
しおりを挟むマリクと話してから1週間
その間俺はただレティと過ごす時間に癒されていることを改めて実感していた
「シア、ここよね?」
いつの間にか少し先を歩いていたレティがカフェの前で立ち止まる
「ああ」
俺は頷いて少しペースを速めた
今日訪れたのは町にあるカフェだ
ここはナターシャさんの知り合いがやっていて俺達も昔からよく連れてきてもらってる店だ
「考え事?」
「ん?あぁ、ちょっとな」
レティの事を考えてたなんて言えないだろ…
俺は適当にごまかしながら扉を開けてレティを先に通した
「いらっしゃい。久しぶりねシア」
「どーも。テラス行っていい?」
「ふふ…いいわよ」
隣にいるレティを見てから生暖かい視線を向けられた
恥ずかしいからやめてもらいたい
レティはケーキとホッとコーヒー、俺はアイスコーヒーを頼んだ
「お待たせ。お客さん少ないから貸し切りにしとくわね」
「…どうも」
「そんな不貞腐れないの。彼女に嫌われちゃうわよ」
店員はそう言いながら戻って行った
「貸し切りって大丈夫なの?」
「あぁ、元々ここは常連しか知らない席だから問題ない」
というより多分俺達しか知らない
チビの集団が店内で走り回るからって開放された場所だからな
庭も手入れされててかなり落ち着く場所だ
2人掛けのベンチが3つ少し間隔をあけて置いてあり、その前に丸い木のテーブルが置いてある
「シアも食べる?」
「いや、いいよ」
満足そうな顔をしながら尋ねてきたレティは『そう?』と言いながら次のひと口を頬張った
「そんなに気に入ったのか?」
「甘いものなんて食べる機会なかったもの」
「あぁ、なるほど」
レティの生い立ちを考えれば当然かもしれない
「母さんもよく作るから、頼めば作り方教えてもらえると思うぞ」
「本当?私でも作れるかな?」
「ああ。チビが手伝えるようなレシピも多いから、そういうのから教えてもらえばいい」
「それはすごくうれしいわ。サラサさんのお料理どれも美味しいしすっごく楽しみ」
そういうレティからはワクワクしてるのが伝わってくる
やっぱりこういう素直な真っすぐな反応は気持ちがいい
計算とか駆け引きとかそういうのが透けて見える反応にばかり接してきたから余計にそう感じる
「やっぱレティがいいな」
「え?」
レティの驚いた表情に自分が声に出していたことに気付く
やばい…
心の声が漏れるとかあり得ない
俺は内心かなり焦っていた
「私がいいって何が?」
「…」
改めて尋ねられて誤魔化そうとするのを諦めた
どうせ周りにもバレてる
かっこ悪いけど結局この1週間言い出せなかったのが現実だ
それならなし崩しだろうと何だろうと伝えてしまえばいい
「…隣に居たいと思うのも、隣にいて欲しいと思うのもレティだけだってこと」
「!」
覚悟を決めてそう言うとレティの目が大きく見開かれた
そして次の瞬間…
「何で泣くんだよ…」
これまで見たこともない満面の笑みの直後溢れ出したのは涙
「だって嬉し…」
「泣くほど?」
何度も首を縦に振るレティを思わず抱きしめた
驚いたせいか一瞬体をこわばらせたレティはすぐに警戒を解いて俺にされるがままになった
「…みんなシアは私を大事にしてくれるって…でも…」
「でも?」
「皆が思ってるような気持じゃないんだろうなって…ただ保護した対象だからだろうなって…」
「…」
「なのに…シアの事を知れば知るほど惹かれていくのを止められなかった」
時々鼻をすすりながら吐き出される想いに今日まで引っ張ったことを恨めしく思う
「もっと早く伝えればよかったな」
マリクの言うとおりだ
かっこ悪くてもその時その時に伝えればよかったんだ
今更言っても遅いけど
「愛してるよレティ。多分、出会った頃から」
「私も…愛してる!」
戸惑いながらも抱きしめ返されて顔がにやけて来る
こんな気持ちを知らずに来たのはもったいなかったなとどこかで思う
同時にそれを与えてくれるレティを、そんなレティと過ごせる時間を大事にしたいと思った
元の世界以上に何が起こるかわからない世界
今日が平和でも、明日にはスタンピードが起こる可能性だってある
当たり前の日常が当たり前じゃないこの世界で、共に過ごしたい相手と過ごせる時間だから猶更だった
その間俺はただレティと過ごす時間に癒されていることを改めて実感していた
「シア、ここよね?」
いつの間にか少し先を歩いていたレティがカフェの前で立ち止まる
「ああ」
俺は頷いて少しペースを速めた
今日訪れたのは町にあるカフェだ
ここはナターシャさんの知り合いがやっていて俺達も昔からよく連れてきてもらってる店だ
「考え事?」
「ん?あぁ、ちょっとな」
レティの事を考えてたなんて言えないだろ…
俺は適当にごまかしながら扉を開けてレティを先に通した
「いらっしゃい。久しぶりねシア」
「どーも。テラス行っていい?」
「ふふ…いいわよ」
隣にいるレティを見てから生暖かい視線を向けられた
恥ずかしいからやめてもらいたい
レティはケーキとホッとコーヒー、俺はアイスコーヒーを頼んだ
「お待たせ。お客さん少ないから貸し切りにしとくわね」
「…どうも」
「そんな不貞腐れないの。彼女に嫌われちゃうわよ」
店員はそう言いながら戻って行った
「貸し切りって大丈夫なの?」
「あぁ、元々ここは常連しか知らない席だから問題ない」
というより多分俺達しか知らない
チビの集団が店内で走り回るからって開放された場所だからな
庭も手入れされててかなり落ち着く場所だ
2人掛けのベンチが3つ少し間隔をあけて置いてあり、その前に丸い木のテーブルが置いてある
「シアも食べる?」
「いや、いいよ」
満足そうな顔をしながら尋ねてきたレティは『そう?』と言いながら次のひと口を頬張った
「そんなに気に入ったのか?」
「甘いものなんて食べる機会なかったもの」
「あぁ、なるほど」
レティの生い立ちを考えれば当然かもしれない
「母さんもよく作るから、頼めば作り方教えてもらえると思うぞ」
「本当?私でも作れるかな?」
「ああ。チビが手伝えるようなレシピも多いから、そういうのから教えてもらえばいい」
「それはすごくうれしいわ。サラサさんのお料理どれも美味しいしすっごく楽しみ」
そういうレティからはワクワクしてるのが伝わってくる
やっぱりこういう素直な真っすぐな反応は気持ちがいい
計算とか駆け引きとかそういうのが透けて見える反応にばかり接してきたから余計にそう感じる
「やっぱレティがいいな」
「え?」
レティの驚いた表情に自分が声に出していたことに気付く
やばい…
心の声が漏れるとかあり得ない
俺は内心かなり焦っていた
「私がいいって何が?」
「…」
改めて尋ねられて誤魔化そうとするのを諦めた
どうせ周りにもバレてる
かっこ悪いけど結局この1週間言い出せなかったのが現実だ
それならなし崩しだろうと何だろうと伝えてしまえばいい
「…隣に居たいと思うのも、隣にいて欲しいと思うのもレティだけだってこと」
「!」
覚悟を決めてそう言うとレティの目が大きく見開かれた
そして次の瞬間…
「何で泣くんだよ…」
これまで見たこともない満面の笑みの直後溢れ出したのは涙
「だって嬉し…」
「泣くほど?」
何度も首を縦に振るレティを思わず抱きしめた
驚いたせいか一瞬体をこわばらせたレティはすぐに警戒を解いて俺にされるがままになった
「…みんなシアは私を大事にしてくれるって…でも…」
「でも?」
「皆が思ってるような気持じゃないんだろうなって…ただ保護した対象だからだろうなって…」
「…」
「なのに…シアの事を知れば知るほど惹かれていくのを止められなかった」
時々鼻をすすりながら吐き出される想いに今日まで引っ張ったことを恨めしく思う
「もっと早く伝えればよかったな」
マリクの言うとおりだ
かっこ悪くてもその時その時に伝えればよかったんだ
今更言っても遅いけど
「愛してるよレティ。多分、出会った頃から」
「私も…愛してる!」
戸惑いながらも抱きしめ返されて顔がにやけて来る
こんな気持ちを知らずに来たのはもったいなかったなとどこかで思う
同時にそれを与えてくれるレティを、そんなレティと過ごせる時間を大事にしたいと思った
元の世界以上に何が起こるかわからない世界
今日が平和でも、明日にはスタンピードが起こる可能性だってある
当たり前の日常が当たり前じゃないこの世界で、共に過ごしたい相手と過ごせる時間だから猶更だった
0
お気に入りに追加
470
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる