頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

文字の大きさ
上 下
103 / 160

第103話「王都探索デート③」

しおりを挟む
 職人通りを出た笑顔のシモン、エステル、クラウディアの3人は……
 中央広場に隣接する市場へ向かっている。
 手はしっかりと、つないだままであった。

「局長、ありがとうございますっ! いきなりプレゼントを頂くなんて!」
「とても嬉しいですっ! 一生大事に致しますわっ!」

 エステルとクラウディアは、すこぶる上機嫌である。
 無理もない。
 ふたりは、シモンからプレゼントされた『おそろいのミスリル製のアミュレット』を首からかけているのだ。
 歩くたびに揺れるアミュレットには朝の陽光が反射し、きらきらと輝いている。

「喜ぶ」ふたりを見守るシモンも、不思議な感覚にとらわれている。
「シンプルに嬉しい」のとはまた違う「愛おしい」という感覚だ。

 シモンが肉親以外の女子へ、貴金属をプレゼントする経験は、これまでなかった。
 そのような機会は今までに皆無だったから。

「さあ、移動して、メシにしよう」

「「はいっ!」」

 プレゼントだけではない。
 シモンはエステルとクラウディアに、今までになかった経験をさせてくれた。

 モノが造られるとはどういう事なのか?
 そして、造り上げた『作品』を生み出した職人とも直接引き合わせてくれた。

 わざわざふたりの為にアミュレットを手配してくれたシモンの優しさを感じるとともに……
 細工職人が、送り出す作品アミュレットを見る慈愛の眼差しと言葉が心に残っている。

「お姉さん達よ、ウチの子を宜しく頼まあ。どうか末永く可愛がってくれ!」

 エステルもクラウディアも当然、応えた。

「はいっ! ひたむきに可愛がります!」
「この身から絶対に離しませんわっ!」

 揺れるアミュレットをそっと触ったエステルとクラウディア。
 真ん中にはシモンが居た。

 3人の『心の距離』は確実に縮まっている。
 きっと、食事も楽しいに違いない。

 まもなく中央広場である。
 歩む3人の足取りはどんどん軽くなっていった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 中央広場に隣接する市場。
 時刻はまもなく午前11時になる。
 朝の活気は過ぎ、市場本体は静まり返っている。

 しかし……
 市場に隣接する露店はにぎやかであり、衣食その他、様々な店が軒を連ねている。

 シモン達3人はランチを摂るから、露店群の中でも、食べ物を売る店が密集している一画へ向かう。
 そう、シモンが一昨日、朝食を摂りながら下見をしておいた一画である。

 エステルは勿論、上級貴族の令嬢たるクラウディアは、露店で食事などした事はない。
 ふたりとも単独で入るのは臆するというか無理なのだが、愛するそして頼れるシモンが居れば全然安心なのである。

 シモン達の前には様々な料理をテイクアウトさせる露店が建ち並んでいる。

「さあ、食べようか! 好きなものを選んでくれ」

「と、言いましても」
「私もエステルお姉様も、どうしたら良いのか、全く分かりません」

 シモンに勧められたが、エステルとクラウディアはひどく戸惑っている。
 このような露店の作法、勝手が分からないからだ。

「ははは、簡単だ。片端から見て行って、好きなものがあれば買えば良い。但し、食べ物は返品が不可能だぞ」

「返品が不可能?」
「ええっと、それは……」

「一旦買って、ひと口食べて自分には合わないから返すとか、多く買いすぎて食べきれないから不要とかは、ナシだ」

「成る程……それはとんでもないです」
「分かりました。シモン様のおっしゃる通り失礼な行為ですわ」

「と、いう事で……念の為、好き嫌いはないか?」

 シモンが問うと、ふたりは少し口ごもる。

「な、ないです」
「ええっと……努力致しますわ」

「ははは、ふたりとも無理をするな。栄養バランスの、問題だけ気を付けて好きなものを食べれば良いんだ」

「はい!」
「はいっ!」

「じゃあ、まずは肉を選ぼうか……」

「私は羊を!」
「では私はチキンを!」

「よし! じゃあ、……ここはどうだ?」

 シモンがエステルとクラウディアを連れて行ったのは……
 家畜、獣肉を含め、様々な肉を木串に刺し、炭焼きして売る店である。

「おっちゃん、売っておくれ」

「あいよっ! 兄ちゃん、どんな肉か、どんどん気軽に聞いてくれっ!」

「じゃあ、それは?」

 シモンがある商品を指さすと、店主は「にかっ」と笑う。

「羊のバラ、ショルダーの串焼きだ」

 シモンと店主のやりとりを凝視する女子ふたり。
 専門用語が入ったのでシモンが補足する。

「バラは、あばら骨周囲、ショルダーは肩の肉だ」

「あ! 私、それにしますっ!」

 エステルが目を輝かせて手を挙げると、クラウディアも負けてはいない。
 商品を見つめ、少し思案し、直接、店主へ迫る。

「じゃあ、私は……店主さん、それは鶏肉ですよねっ!」

「おう! もも肉かいっ!」

「はいっ! 私はそれを!」

「ささみにレバーもあるぞっ!」

 商売上手の店主らしい。

「うふふ、頂きますわっ!」

 食欲旺盛なクラウディアは、にっこり笑って、大きく頷いたのである。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

その転生幼女、取り扱い注意〜稀代の魔術師は魔王の娘になりました〜

みおな
ファンタジー
かつて、稀代の魔術師と呼ばれた魔女がいた。 魔王をも単独で滅ぼせるほどの力を持った彼女は、周囲に畏怖され、罠にかけて殺されてしまう。 目覚めたら、三歳の幼子に生まれ変わっていた? 国のため、民のために魔法を使っていた彼女は、今度の生は自分のために生きることを決意する。

処理中です...