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第99話「悩みまくるシモン」
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「困った! 困った! 困ったぁ!」
自宅へ戻ったシモンは頭を抱えてしまった。
エステルから、とんでもない『宿題』を出されてしまったのだ。
彼女はシモンへこう告げた。
「はい、つきましては、どこに行って何をするのか、お任せ致しますから、素敵なデートプランを局長にお考えいただきたく……何卒宜しくお願い致しますっ!」
素敵なデートプランを……考える!?
普段から『女子慣れ』している男子なら、
「よっしOK! 俺に任せとけぇ! 楽しいデートにしてやるぜぃ!」
と余裕たっぷりに引き受ける事だろう。
しかし、恋愛経験値『極小』否!
限りなくゼロに近いシモンにとっては、到底無理、無理、無理ゲー……なのだ!
でもシモンにはまだ運が残っている。
そう、時間だけはある。
デートは明日ではない。
幸い、明々後日の土曜日。
まだまだ時間はあるのだ。
よし!
仕事以上に高難度のテーマ。
燃えるぜぃ!
気合を入れ直したシモンは書斎の書架を漁る。
記憶の片隅に刻まれていた。
以前、書店で買い込んだ大量の書籍の中に、『恋愛マニュアル本』があったはずだと。
「ええっと……確か、ここら辺に……あ、あったぁ!!」
良かったぁ!
これで、何とかなる!
大いに安堵したシモンは早速、むさぼるように恋愛マニュアル本を読みだした。
まず食事は必須。
これは間違いない。
「そっかあ。エステルは気に入ってくれたけど……クラウディア様が一緒だと、庶民向けの居酒屋風車亭はいかがなものだろか?」
店のセレクトは後回しにするとして……
王道デートの行き先。
遊園地。
動物園。
水族館。
美術館。
博物館。
夜までデートするならば、夜景が素敵な場所。
「でも、未成年で箱入りのクラウディア様を夜まで引っ張り回すわけにはいかないし……」
他にも、市場で買い物。
創世神教会でおごそかに礼拝。
馬車で王都内の名所を回る……とかか。
ええっと、インドアだと……
レトロなゲームで遊ぶ。
一緒に料理やスイーツを作る。
俺のウチへ来て貰うって……男の部屋に引っ張りこむとか、いきなりはない。
エステルの家へ?
いやいやいや!
女子の部屋へいきなりもない!
かと、いってラクルテル公爵邸だと、また公爵夫妻の寝技?に持ち込まれてヤバくなりそうだし。
エステルも完全アウェーで機嫌が悪くなりそうだしなあ。
う~む。
屋外は?
アウトドアだと……
ミニキャンプ。
ハイキング。
などは、俺ひとりならともかく王都郊外では人喰いの魔物が出て危険だから却下。
スポーツ観戦は、闘技場《コロシアム》?
格闘技は、父親譲りでクラウディア様が好き?
……エステルは、どうだろうか?
う~ん、どうしたら良いのか分からん!!
1対1のデートならともかく1対2。
それも、クラウディアが何を好むのか、嗜好の情報はほとんどない。
結局その日、帰宅してから就寝するまで……
悩みまくったシモンは、食事もろくにとらず……
恋愛マニュアル本をひたすら読みふけっていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しかし……
いつもの事ながら、悩みに悩むと……
「思い切り突き抜けて開き直る」のが、シモンの長所。
恋愛マニュアル本を読みふけって、もやもやしていても仕方がない。
実践&経験あるのみ。
気持ちを切り替えたシモンは朝早くから出かける事にした。
朝食は摂らない。
市場に隣接するどこかの食堂で摂る。
そう決めて、午前7時に家を出た。
シモンの姿を認め、庭で花へ水をやっていた隣家の騎士爵夫人が声をかけて来る。
「あら、おはようございます! シモンさん、おでかけ? 最近お留守だったみたいね」
「おはようございます! はい、ちょっと出張していたので!」
「あらあら、ご出張って、お疲れ様。今日もお仕事ですか?」
「いいえ、公休を貰ったんで今日から日曜まで休みです」
「うふふ、ゆっくり休んでね。行ってらっしゃい」
「行ってきま~す」
などという会話を交わす。
騎士爵夫人の笑顔がエステルに重なり……
つい、自分の未来像が見えてしまう。
クラウディアとの未来像は……申しわけないが、全く想像出来ない。
平民と超上級貴族……
身分が違いすぎて、イメージが見えては来ない。
シモンは騎士爵夫人に一礼して再び歩き出した。
歩きながら、思案する。
美味い朝食。
自分の好きなもの……
焼き立てのパンにスクランブルエッグ、新鮮な牛乳かな。
少し焦げ目のついたウインナーも付けたら、更にグッド。
あ、ウインナーは塩ゆででもOKか。
なんて、他愛もない事を考えながら歩いていると、やがて市場へ到着した。
午前7時20分過ぎ……
朝一番のピークは過ぎているが……
まだまだ活気が残っている。
シモンは、嗅覚の感度をあげる。
雑多な匂いが鼻孔へ流れ込んで来た。
しばし立ち止まり、シモンは鼻を鳴らした。
「よし! こっちか!」
やがて……
朝食を摂る店を決め、シモンは迷わず真っすぐに歩き出したのである。
自宅へ戻ったシモンは頭を抱えてしまった。
エステルから、とんでもない『宿題』を出されてしまったのだ。
彼女はシモンへこう告げた。
「はい、つきましては、どこに行って何をするのか、お任せ致しますから、素敵なデートプランを局長にお考えいただきたく……何卒宜しくお願い致しますっ!」
素敵なデートプランを……考える!?
普段から『女子慣れ』している男子なら、
「よっしOK! 俺に任せとけぇ! 楽しいデートにしてやるぜぃ!」
と余裕たっぷりに引き受ける事だろう。
しかし、恋愛経験値『極小』否!
限りなくゼロに近いシモンにとっては、到底無理、無理、無理ゲー……なのだ!
でもシモンにはまだ運が残っている。
そう、時間だけはある。
デートは明日ではない。
幸い、明々後日の土曜日。
まだまだ時間はあるのだ。
よし!
仕事以上に高難度のテーマ。
燃えるぜぃ!
気合を入れ直したシモンは書斎の書架を漁る。
記憶の片隅に刻まれていた。
以前、書店で買い込んだ大量の書籍の中に、『恋愛マニュアル本』があったはずだと。
「ええっと……確か、ここら辺に……あ、あったぁ!!」
良かったぁ!
これで、何とかなる!
大いに安堵したシモンは早速、むさぼるように恋愛マニュアル本を読みだした。
まず食事は必須。
これは間違いない。
「そっかあ。エステルは気に入ってくれたけど……クラウディア様が一緒だと、庶民向けの居酒屋風車亭はいかがなものだろか?」
店のセレクトは後回しにするとして……
王道デートの行き先。
遊園地。
動物園。
水族館。
美術館。
博物館。
夜までデートするならば、夜景が素敵な場所。
「でも、未成年で箱入りのクラウディア様を夜まで引っ張り回すわけにはいかないし……」
他にも、市場で買い物。
創世神教会でおごそかに礼拝。
馬車で王都内の名所を回る……とかか。
ええっと、インドアだと……
レトロなゲームで遊ぶ。
一緒に料理やスイーツを作る。
俺のウチへ来て貰うって……男の部屋に引っ張りこむとか、いきなりはない。
エステルの家へ?
いやいやいや!
女子の部屋へいきなりもない!
かと、いってラクルテル公爵邸だと、また公爵夫妻の寝技?に持ち込まれてヤバくなりそうだし。
エステルも完全アウェーで機嫌が悪くなりそうだしなあ。
う~む。
屋外は?
アウトドアだと……
ミニキャンプ。
ハイキング。
などは、俺ひとりならともかく王都郊外では人喰いの魔物が出て危険だから却下。
スポーツ観戦は、闘技場《コロシアム》?
格闘技は、父親譲りでクラウディア様が好き?
……エステルは、どうだろうか?
う~ん、どうしたら良いのか分からん!!
1対1のデートならともかく1対2。
それも、クラウディアが何を好むのか、嗜好の情報はほとんどない。
結局その日、帰宅してから就寝するまで……
悩みまくったシモンは、食事もろくにとらず……
恋愛マニュアル本をひたすら読みふけっていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しかし……
いつもの事ながら、悩みに悩むと……
「思い切り突き抜けて開き直る」のが、シモンの長所。
恋愛マニュアル本を読みふけって、もやもやしていても仕方がない。
実践&経験あるのみ。
気持ちを切り替えたシモンは朝早くから出かける事にした。
朝食は摂らない。
市場に隣接するどこかの食堂で摂る。
そう決めて、午前7時に家を出た。
シモンの姿を認め、庭で花へ水をやっていた隣家の騎士爵夫人が声をかけて来る。
「あら、おはようございます! シモンさん、おでかけ? 最近お留守だったみたいね」
「おはようございます! はい、ちょっと出張していたので!」
「あらあら、ご出張って、お疲れ様。今日もお仕事ですか?」
「いいえ、公休を貰ったんで今日から日曜まで休みです」
「うふふ、ゆっくり休んでね。行ってらっしゃい」
「行ってきま~す」
などという会話を交わす。
騎士爵夫人の笑顔がエステルに重なり……
つい、自分の未来像が見えてしまう。
クラウディアとの未来像は……申しわけないが、全く想像出来ない。
平民と超上級貴族……
身分が違いすぎて、イメージが見えては来ない。
シモンは騎士爵夫人に一礼して再び歩き出した。
歩きながら、思案する。
美味い朝食。
自分の好きなもの……
焼き立てのパンにスクランブルエッグ、新鮮な牛乳かな。
少し焦げ目のついたウインナーも付けたら、更にグッド。
あ、ウインナーは塩ゆででもOKか。
なんて、他愛もない事を考えながら歩いていると、やがて市場へ到着した。
午前7時20分過ぎ……
朝一番のピークは過ぎているが……
まだまだ活気が残っている。
シモンは、嗅覚の感度をあげる。
雑多な匂いが鼻孔へ流れ込んで来た。
しばし立ち止まり、シモンは鼻を鳴らした。
「よし! こっちか!」
やがて……
朝食を摂る店を決め、シモンは迷わず真っすぐに歩き出したのである。
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