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第93話「平気だよ」
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シモンが気を失った傭兵の胸ぐらをつかみ……
発動した威圧のスキル、そして無限地獄《エターナルインフェルノ》という必殺のコンボ。
発動に所要した時間はほんの1分足らずである。
リアルな夢でも見ているような雰囲気で、悪鬼に喰われるリアルな感覚もある。
それが何度も何度も何度も……繰り返されるのだ。
……心身ともに追い込まれた傭兵は全てを白状していた。
シモンは、心と心の会話、念話により敵が襲撃を考えた経緯及び全容を知ったのである。
気を失ったままの傭兵を「ぽいっ」と捨てたシモン。
左腕に装着した魔法の収納腕輪をかざす。
すると、地に伏していた傭兵の姿は煙のように消え去った。
驚いたエステルが身を乗り出す。
「きょ、局長!?」
「安心しろエステル、このままコイツを村には残しておけん。俺の腕輪へ一旦収納……したんだよ」
「一旦、収納……ですか?」
「ああ、コイツはこのまま死なさない。残りの奴らとともに捕縛し、生きたまま王都へ連れ帰る。そして王国の司法に任せる。どうせ極刑だろうがな」
「極刑……」
「コイツが白状して全部分かった」
「は、はい。私たちには何がどうだか、全く分かりません。宜しければ、詳しいご説明をお願いします」
「うん、分かった。但し、詳しい説明は後だ」
「は、はい!」
「簡単に説明しよう。コイツらは今、王国中を荒らしまわっている傭兵くずれの山賊団だ」
「さ、山賊団」
「ああ、俺がこの村を脅かしていたオークの群れを倒した事を何かで知り、村の近くで様子をうかがっていたんだよ」
「う、うかがっていた?」
エステルだけでなく局員一同、村長も含め村民が全てシモンに注目している。
「ああ、オークという『邪魔者』が居なくなり、好機到来だと思い、斥候を放った。総勢は首領以下1,000人強。今頃、出撃準備をしていて、すぐ攻めて来るぞ」
「「「「「「「せ、せ、せ、1,000人っ!!?? す、すぐっ!?」」」」」」」
山賊団の総勢は何と! 1,000人以上!!!
対して、局員は7人。冒険者は3人、土木作業員は5人。
戦える村民は自警団の12名。
非戦闘員の村民は村長以下、約100名。
普通に考えれば、絶望的な状況である。
しかし、シモンは極めて冷静。
動揺は全く見られない。
「……全員、落ち着け。慌てても状況は変わらない」
「はいっ!」
エステル達局員は元気良く返事を戻した。
ドラゴンスレイヤー、英雄ラクルテル公爵と引き分けたシモンが居るのだ。
気持ちは徐々に落ち着き、勇気が湧いて来る。
「村民は自警団の12名以外は自宅へ退避。ウチの局員は、武器魔法を使える者だけが防衛にあたる」
「は、はい!」
「新設した防護柵が、早速役に立つぞ。ジョゼフが精魂込めて作ったものだからな」
「ですねっ!」
「ようし、指示を出すぞ。エステル、バルテレミー、イネス、ペリーヌは、村長とともに、村民の退避を手伝え。ジュリエッタは正門脇の物見やぐらから、周囲を視認しながら、風の攻撃魔法で敵を迎撃。ジョゼフは部下の冒険者達とともに村内で迎撃にあたれ、防護柵を越えて来た敵を漏らさず、自警団とともに撃破するんだ」
「わ、分かりました!」
「OKです!」
「はい! 局長!」
「ご指示に従いますっ!」
エステル、バルテレミー、イネス、ペリーヌが大きな声で了解の返事をすれば、
部下を率いるジョゼフが確認を求める。
「局長、もしもヤバイ時は、躊躇なく相手を殺して良いんだな」
「おう、当然だ! 村民、局員の命が優先だぞ。殺して構わない」
ただひとり、命令に不服そうなのが、ジュリエッタだ。
「局長! 貴方はどうするのだ?」
ジュリエッタの質問を聞き、シモンは晴れやかに笑う。
「俺? 当然、防護柵の外で迎撃だよ。ひとりでな」
「な!? ひとりでっ!?」
「ああ、奴らはさ、多分ゴーレムの存在を知らないだろ。押し寄せて来た時に召喚して迎撃させれば、ひるんで大きく混乱するはずだ。その隙に俺が出来るだけ敵の数を減らす」
「そ、そ、そんなの! む、無茶だ! 勇気があるのは結構だが、蛮勇以外の何モノでもない!」
「いや、全然無茶じゃない。念の為、ジュリエッタは魔法を撃つ時、俺に当てないようにな」
「バカな! 騎士たる私も、絶対参加するぞ。局長を援護するのだ! 2対1,000でも、死なばもろともだっ!」
騎士のジュリエッタは死地?への同行を申し出た。
エステルも「ずいっ!」と前に出る。
「わ、私も行きますっ! 水の攻撃魔法で援護しますっ! し、死ぬ時は一緒だと申し上げましたからっ!」
「いや、ふたりとも却下」
「何故だっ!」
「何故ですっ!」
勢い込むジュリエッタとエステル。
シモンは、頭をかきながら言う。
「いやぁ、みんなには内緒にしていたけど」
「な、内緒?」
「な、何が内緒なのですかっ!」
「いやあ、実は俺ひとりで、5,000人以上の山賊と戦った事があるから」
「は!!!???? ご、ごせん!?」
「はい~!?」
「という事でっ。1,000人くらいは全然平気だよ。エステルとジュリエッタが入ると、却って同士討ちの可能性もあるから」
最後にはきっぱりと言い切ったシモン。
「ふう」と大きく息を吐いたのである。
発動した威圧のスキル、そして無限地獄《エターナルインフェルノ》という必殺のコンボ。
発動に所要した時間はほんの1分足らずである。
リアルな夢でも見ているような雰囲気で、悪鬼に喰われるリアルな感覚もある。
それが何度も何度も何度も……繰り返されるのだ。
……心身ともに追い込まれた傭兵は全てを白状していた。
シモンは、心と心の会話、念話により敵が襲撃を考えた経緯及び全容を知ったのである。
気を失ったままの傭兵を「ぽいっ」と捨てたシモン。
左腕に装着した魔法の収納腕輪をかざす。
すると、地に伏していた傭兵の姿は煙のように消え去った。
驚いたエステルが身を乗り出す。
「きょ、局長!?」
「安心しろエステル、このままコイツを村には残しておけん。俺の腕輪へ一旦収納……したんだよ」
「一旦、収納……ですか?」
「ああ、コイツはこのまま死なさない。残りの奴らとともに捕縛し、生きたまま王都へ連れ帰る。そして王国の司法に任せる。どうせ極刑だろうがな」
「極刑……」
「コイツが白状して全部分かった」
「は、はい。私たちには何がどうだか、全く分かりません。宜しければ、詳しいご説明をお願いします」
「うん、分かった。但し、詳しい説明は後だ」
「は、はい!」
「簡単に説明しよう。コイツらは今、王国中を荒らしまわっている傭兵くずれの山賊団だ」
「さ、山賊団」
「ああ、俺がこの村を脅かしていたオークの群れを倒した事を何かで知り、村の近くで様子をうかがっていたんだよ」
「う、うかがっていた?」
エステルだけでなく局員一同、村長も含め村民が全てシモンに注目している。
「ああ、オークという『邪魔者』が居なくなり、好機到来だと思い、斥候を放った。総勢は首領以下1,000人強。今頃、出撃準備をしていて、すぐ攻めて来るぞ」
「「「「「「「せ、せ、せ、1,000人っ!!?? す、すぐっ!?」」」」」」」
山賊団の総勢は何と! 1,000人以上!!!
対して、局員は7人。冒険者は3人、土木作業員は5人。
戦える村民は自警団の12名。
非戦闘員の村民は村長以下、約100名。
普通に考えれば、絶望的な状況である。
しかし、シモンは極めて冷静。
動揺は全く見られない。
「……全員、落ち着け。慌てても状況は変わらない」
「はいっ!」
エステル達局員は元気良く返事を戻した。
ドラゴンスレイヤー、英雄ラクルテル公爵と引き分けたシモンが居るのだ。
気持ちは徐々に落ち着き、勇気が湧いて来る。
「村民は自警団の12名以外は自宅へ退避。ウチの局員は、武器魔法を使える者だけが防衛にあたる」
「は、はい!」
「新設した防護柵が、早速役に立つぞ。ジョゼフが精魂込めて作ったものだからな」
「ですねっ!」
「ようし、指示を出すぞ。エステル、バルテレミー、イネス、ペリーヌは、村長とともに、村民の退避を手伝え。ジュリエッタは正門脇の物見やぐらから、周囲を視認しながら、風の攻撃魔法で敵を迎撃。ジョゼフは部下の冒険者達とともに村内で迎撃にあたれ、防護柵を越えて来た敵を漏らさず、自警団とともに撃破するんだ」
「わ、分かりました!」
「OKです!」
「はい! 局長!」
「ご指示に従いますっ!」
エステル、バルテレミー、イネス、ペリーヌが大きな声で了解の返事をすれば、
部下を率いるジョゼフが確認を求める。
「局長、もしもヤバイ時は、躊躇なく相手を殺して良いんだな」
「おう、当然だ! 村民、局員の命が優先だぞ。殺して構わない」
ただひとり、命令に不服そうなのが、ジュリエッタだ。
「局長! 貴方はどうするのだ?」
ジュリエッタの質問を聞き、シモンは晴れやかに笑う。
「俺? 当然、防護柵の外で迎撃だよ。ひとりでな」
「な!? ひとりでっ!?」
「ああ、奴らはさ、多分ゴーレムの存在を知らないだろ。押し寄せて来た時に召喚して迎撃させれば、ひるんで大きく混乱するはずだ。その隙に俺が出来るだけ敵の数を減らす」
「そ、そ、そんなの! む、無茶だ! 勇気があるのは結構だが、蛮勇以外の何モノでもない!」
「いや、全然無茶じゃない。念の為、ジュリエッタは魔法を撃つ時、俺に当てないようにな」
「バカな! 騎士たる私も、絶対参加するぞ。局長を援護するのだ! 2対1,000でも、死なばもろともだっ!」
騎士のジュリエッタは死地?への同行を申し出た。
エステルも「ずいっ!」と前に出る。
「わ、私も行きますっ! 水の攻撃魔法で援護しますっ! し、死ぬ時は一緒だと申し上げましたからっ!」
「いや、ふたりとも却下」
「何故だっ!」
「何故ですっ!」
勢い込むジュリエッタとエステル。
シモンは、頭をかきながら言う。
「いやぁ、みんなには内緒にしていたけど」
「な、内緒?」
「な、何が内緒なのですかっ!」
「いやあ、実は俺ひとりで、5,000人以上の山賊と戦った事があるから」
「は!!!???? ご、ごせん!?」
「はい~!?」
「という事でっ。1,000人くらいは全然平気だよ。エステルとジュリエッタが入ると、却って同士討ちの可能性もあるから」
最後にはきっぱりと言い切ったシモン。
「ふう」と大きく息を吐いたのである。
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