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第62話「冒険者ギルド訪問①」
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翌日……
シモンは次官補のレナことエレン・デュノアとともに、冒険者ギルドへ向かう馬車に揺られていた。
馬車は、王国復興開拓省専用馬車。
専任の御者付きで数台あり、申請すれば使用可能だという。
勿論エステルとレナの秘書、セリア・ベルも同乗している。
セリアはエステルとタイプは違い、レナに似たタイプで金髪碧眼の美女である。
秘書としてはエステルの先輩となる。
レナが話しかけて来る。
「シモン君」
「はい」
「既に知っているだろうが、念の為……昨日、君が面接をしてくれたイネス・アントワーヌ、バルテレミー・コンスタンの両名だが、私と次官は異動の内示OKを出した。本日中にアレクサンドラ長官の承認が得られるだろう。明日には辞令が出て来週明けには正式に異動という事となる」
「ありがとうございます」
「シモン君が候補としてリストを回してくれた時点で、私も次官も改めて両名の確認を行っていた。元々君よりはふたりの事を良く知っている。優秀な人材だと思う。必ず君を支えてくれるはずだ。……エステル同様に、な」
レナの言葉に同意し、シモンは大きく頷いた。
「はい、俺もそう思います」
仲間が増えるという事で、エステルも気合が入っているらしい。
「私も、異動して来るふたりに負けないよう、秘書として、より一層頑張ります」
そんなふたりを見て、レナは満足そうに頷いた。
「うむ、いよいよ我が王国復興開拓省の要たる支援開発戦略局の発進だ」
支援開発戦略局?
初めて聞く自分の部署名にシモンは少し戸惑う。
「え? 支援開発戦略局? 俺の部署ってそういう名前だったんですか?」
思わずシモンが尋ねると、レナはにっこり笑った。
「ああ、昨日決定した。ようやく長官からご指示があった。命名に関しては、ご多忙の中、ずっとお考えになっていたようだ」
「そうだったんですか」
シモンの部署は名称が検討中となっていた。
気になっていたシモンではあったが、他にやる事が多すぎて、失念していた。
それに部署の命名はシモンの役目ではない。
レナは更に説明を続ける。
「うむ。支援開発戦略局は、庁舎内の3階に設置する。その為の部屋もすでに用意してある。君が案内された時、空き部屋がいくつかあっただろう?」
「はい、ありました」
「現在、局員はたったふたりだが、支援開発戦略局はゆくゆく大所帯となる。多分、省内で何回か引っ越しをする事となる。とりあえずは50名分の席を用意してある。当然シモン君とエステル君の席もある。局長室と別にな」
「何から何までありがとうございます」
「ははははは、私は長官、次官の指示に従い、総務部へ指示しただけだ。どうという事はない。それより本日のギルド訪問のすり合わせをしておこう。資料には目を通してくれているな」
「はい、ひと通りは」
そう言いながら、シモンはいつもの癖で、受け取ったギルドの資料を丸暗記している。
資料には課題も記載されており、本日の打合せの際、双方で議論が交わされるだろう。
求められたり、機会があれば、シモンも意見を述べる用意をしてある。
「先日の会議で話したように、スカウト、出向、そして依頼の発注などの下請けに伴う業務提携、人事交流が本日やりとりする主要な課題となる」
「ですね」
「冒険者のスカウトは相手次第だが、基本は筋を通せば良いし、案件の発注に関しては我々が依頼主、つまりクライアントとなる。これらは問題がないと思う。問題は出向と協力だな」
「成る程」
「多分、ギルドはこちらへサブマスターレベルの名誉職を用意し、出向を求めて来るだろう。その方が双方の案件を処理しやすいからだ」
「成る程」
「基本、その名誉職には私が就任し、対応しようと思う」
「申しわけないです」
「いや、私は元々ギルドの出身だし、シモン君は、先日の研修のように、仕事柄出張が多くなる。身体がいくつあっても足りなくなるからな」
「うわ! まあ、大丈夫でしょう。出張は慣れてますから」
「ははははは、確かにそうだ。シモン君が前職で世界中を回ったのに比べたら、ウチの仕事は基本、王国内限定だ」
「です」
「うむ、ギルド案件の協力だが、人的には厳しいと思う。こちらは人手不足だからな」
「はい、ギルド案件の場所がこちらの任地の最寄りで、時間が許せば等の条件で折り合わないと、遂行は困難だと思います」
「まあ、基本はあちらで対応するだろう。もしもこちらへ助力を求めて来るとしたら、相当高難度の案件だと考えられる。たとえばドラゴンや高位の魔物討伐等の案件だ」
「俺もそう思います」
「ははははは、もしこちらが助力し、上手く完遂出来れば、ギルドへ大きな貸しを作る事が出来るから、やってみる価値は大いにあるがな」
「成る程」
「そういう案件はいくつかあるだろうから。だがあちらも誇りがあるし、依頼主に対する信用の問題もある。ま、その時の状況次第だ」
「分かりました」
「おお、そろそろ到着だな。シモン君、エステル君、訪問の手続きはセリアが行う。セリア、頼むぞ」
「了解です、次官補」
やがて……
馬車は冒険者ギルド、グラン・シャリオ支部へ到着したのである。
シモンは次官補のレナことエレン・デュノアとともに、冒険者ギルドへ向かう馬車に揺られていた。
馬車は、王国復興開拓省専用馬車。
専任の御者付きで数台あり、申請すれば使用可能だという。
勿論エステルとレナの秘書、セリア・ベルも同乗している。
セリアはエステルとタイプは違い、レナに似たタイプで金髪碧眼の美女である。
秘書としてはエステルの先輩となる。
レナが話しかけて来る。
「シモン君」
「はい」
「既に知っているだろうが、念の為……昨日、君が面接をしてくれたイネス・アントワーヌ、バルテレミー・コンスタンの両名だが、私と次官は異動の内示OKを出した。本日中にアレクサンドラ長官の承認が得られるだろう。明日には辞令が出て来週明けには正式に異動という事となる」
「ありがとうございます」
「シモン君が候補としてリストを回してくれた時点で、私も次官も改めて両名の確認を行っていた。元々君よりはふたりの事を良く知っている。優秀な人材だと思う。必ず君を支えてくれるはずだ。……エステル同様に、な」
レナの言葉に同意し、シモンは大きく頷いた。
「はい、俺もそう思います」
仲間が増えるという事で、エステルも気合が入っているらしい。
「私も、異動して来るふたりに負けないよう、秘書として、より一層頑張ります」
そんなふたりを見て、レナは満足そうに頷いた。
「うむ、いよいよ我が王国復興開拓省の要たる支援開発戦略局の発進だ」
支援開発戦略局?
初めて聞く自分の部署名にシモンは少し戸惑う。
「え? 支援開発戦略局? 俺の部署ってそういう名前だったんですか?」
思わずシモンが尋ねると、レナはにっこり笑った。
「ああ、昨日決定した。ようやく長官からご指示があった。命名に関しては、ご多忙の中、ずっとお考えになっていたようだ」
「そうだったんですか」
シモンの部署は名称が検討中となっていた。
気になっていたシモンではあったが、他にやる事が多すぎて、失念していた。
それに部署の命名はシモンの役目ではない。
レナは更に説明を続ける。
「うむ。支援開発戦略局は、庁舎内の3階に設置する。その為の部屋もすでに用意してある。君が案内された時、空き部屋がいくつかあっただろう?」
「はい、ありました」
「現在、局員はたったふたりだが、支援開発戦略局はゆくゆく大所帯となる。多分、省内で何回か引っ越しをする事となる。とりあえずは50名分の席を用意してある。当然シモン君とエステル君の席もある。局長室と別にな」
「何から何までありがとうございます」
「ははははは、私は長官、次官の指示に従い、総務部へ指示しただけだ。どうという事はない。それより本日のギルド訪問のすり合わせをしておこう。資料には目を通してくれているな」
「はい、ひと通りは」
そう言いながら、シモンはいつもの癖で、受け取ったギルドの資料を丸暗記している。
資料には課題も記載されており、本日の打合せの際、双方で議論が交わされるだろう。
求められたり、機会があれば、シモンも意見を述べる用意をしてある。
「先日の会議で話したように、スカウト、出向、そして依頼の発注などの下請けに伴う業務提携、人事交流が本日やりとりする主要な課題となる」
「ですね」
「冒険者のスカウトは相手次第だが、基本は筋を通せば良いし、案件の発注に関しては我々が依頼主、つまりクライアントとなる。これらは問題がないと思う。問題は出向と協力だな」
「成る程」
「多分、ギルドはこちらへサブマスターレベルの名誉職を用意し、出向を求めて来るだろう。その方が双方の案件を処理しやすいからだ」
「成る程」
「基本、その名誉職には私が就任し、対応しようと思う」
「申しわけないです」
「いや、私は元々ギルドの出身だし、シモン君は、先日の研修のように、仕事柄出張が多くなる。身体がいくつあっても足りなくなるからな」
「うわ! まあ、大丈夫でしょう。出張は慣れてますから」
「ははははは、確かにそうだ。シモン君が前職で世界中を回ったのに比べたら、ウチの仕事は基本、王国内限定だ」
「です」
「うむ、ギルド案件の協力だが、人的には厳しいと思う。こちらは人手不足だからな」
「はい、ギルド案件の場所がこちらの任地の最寄りで、時間が許せば等の条件で折り合わないと、遂行は困難だと思います」
「まあ、基本はあちらで対応するだろう。もしもこちらへ助力を求めて来るとしたら、相当高難度の案件だと考えられる。たとえばドラゴンや高位の魔物討伐等の案件だ」
「俺もそう思います」
「ははははは、もしこちらが助力し、上手く完遂出来れば、ギルドへ大きな貸しを作る事が出来るから、やってみる価値は大いにあるがな」
「成る程」
「そういう案件はいくつかあるだろうから。だがあちらも誇りがあるし、依頼主に対する信用の問題もある。ま、その時の状況次第だ」
「分かりました」
「おお、そろそろ到着だな。シモン君、エステル君、訪問の手続きはセリアが行う。セリア、頼むぞ」
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やがて……
馬車は冒険者ギルド、グラン・シャリオ支部へ到着したのである。
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