59 / 160
第59話「また距離が縮まった?」
しおりを挟む
「おいしいっ! お肉もお魚もお野菜もおいしいですよ、局長!」
「そうか、エステルが気に入ってくれて良かった」
シモンと秘書のエステルは、シモンのかつてのバイト先、風車亭のランチに舌鼓をうっていた。
ちなみに、風車亭の旧知であるシモンには、通常のメニューを大幅にアレンジした特別な料理がサービスで供与されていた。
焼き、揚げ、茹で等、いろいろな調理方法で処理された肉、そして魚の皿。
数種類の野菜を使った色鮮やかなサラダ。
そしてきのこを使ったポタージュスープ。
濃い味付けで野趣あふれる冒険者料理ではあるが、エステルは大いに気に入ったようだ。
綺麗にそして気持ち良く食べるエステルは、食べ物の好き嫌いがないらしい。
当然シモンも同じ。
好き嫌いなどない。
出された料理を完食したふたり。
食後の紅茶を飲む。
一応は仕事中なので……
ふたりの話題は先ほど行った『視察絡み』となる。
「衣料のプロフェッショナルに関しては、生産、仕入れ等々に長けた優秀な人材が欲しいけど、生産コストの件も含め、商業ギルドに相談した方が良いな」
「はい、ウチは一般の取引先ではなく王国本体ですから、いろいろな面で商業ギルドに優遇して頂けると思います。商業ギルドも冒険者ギルド同様に王国の資本が入った公共企業体ですからね」
「まあ、俺達は所詮素人だし、商業ギルドにプランから納品まで考えて貰う発注方法で良いと思うよ。ただ専任の窓口たる人材は欲しいけどね」
「同意です、局長」
エステルが頷いた時。
つかつかと、ひとりの冒険者が近寄って来た。
30歳を少し過ぎたという感じのひげづらの男だ。
酒が入っているらしく、真っ赤な顔で、好色な眼差しをエステルへ向けている。
「よぉ、キレイな姉ちゃん、こんな青二才ほっといて、俺達の席に来て、おしゃくしろや。その後、どっかで楽しもうぜ」
当然、エステルはきっぱりと断る。
「仕事中ですし、お断りいたします」
「はあ、仕事中だあ? メシ食いながらかよ、ふざけんじゃねえ」
顔をしかめた冒険者はいきなり手を伸ばし、エステルの腕をつかもうとした。
ここで、シモンが稲妻のように動いた。
「がしっ!」と、冒険者の腕をつかむ。
「俺の部下に、きたね~手でさわるんじゃない」
「いててててててっ!」
冒険者の悲鳴とともに、仲間らしき冒険者達がばらばらっと詰め寄った。
剣を抜いた者も居る。
「てめぇっ!」
「コノヤロ!」
「何、しやがる!」
「仲間を放しやがれっ!」
しかし!
クラウディアを救った時同様、シモンの瞳が妖しく光った。
『威圧のスキル』が発動したのだ。
それも数倍、強い威力である。
「ぎゃ」
「あう!」
「ぐわ!」
「あう!」
瞬間!
シモンに詰め寄った4名の冒険者達は気絶し、ばたばたばたと、地へ伏したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
冒険者の気絶と同時に、店主のアルバンが厨房からすっ飛んで来た。
当事者のシモンとエステル、そして事件の一部始終を目撃していたエマの説明を受け、事件の内容を全て知った。
今後の事もある。
アルバンの通報により、衛兵が5名駆け付けた。
シモンに腕をつかまれた冒険者は「エステルへ声をかけただけだ」とすっとぼけたが……
被害者であるエステル、エマを始め風車亭のスタッフ女子の証言により、嘘がすぐにばれてしまった。
何より、仲間が「剣を抜いた」行為がはっきりとした暴行、殺人未遂と告げられ、気絶した仲間と共に連行されていったのである。
衛兵が去り……
アルバンは平謝りである。
「申しわけない! シモン、エステルさん、せっかく来てくれたのに、迷惑をかけた! この通りだ。食事代はサービスだ」
しかし、シモンは首を横に振る。
「何言ってるんすか、アルバンさん。あいつらが絡んで来ただけで、アルバンさんの責任じゃありませんって。メシのお金はちゃんと払いますよ」
「え? でも」
「良いですって、また来ますよ、俺」
笑顔のシモンにエステルも追随する。
「あ、私もぜひ来ます。また局長に守って貰いますからっ!」
「そ、そうか! エステルさん、申しわけない!」
「いえいえ、お料理本当においしかったですっ! ごちそうさまでしたっ!」
エステルはアルバンへ礼を告げると、シモンへ向き直る。
「局長! これでクラウディア様と私は、ほぼ対等ですねっ! 悪漢から救って頂きましたからっ!」
「え? ほぼ対等って?」
「うふふっ、また距離が縮まりましたねっ。私……凄く嬉しいですっ!」
満面の笑みを浮かべるエステルは、小さくガッツポーズをしたのである。
「そうか、エステルが気に入ってくれて良かった」
シモンと秘書のエステルは、シモンのかつてのバイト先、風車亭のランチに舌鼓をうっていた。
ちなみに、風車亭の旧知であるシモンには、通常のメニューを大幅にアレンジした特別な料理がサービスで供与されていた。
焼き、揚げ、茹で等、いろいろな調理方法で処理された肉、そして魚の皿。
数種類の野菜を使った色鮮やかなサラダ。
そしてきのこを使ったポタージュスープ。
濃い味付けで野趣あふれる冒険者料理ではあるが、エステルは大いに気に入ったようだ。
綺麗にそして気持ち良く食べるエステルは、食べ物の好き嫌いがないらしい。
当然シモンも同じ。
好き嫌いなどない。
出された料理を完食したふたり。
食後の紅茶を飲む。
一応は仕事中なので……
ふたりの話題は先ほど行った『視察絡み』となる。
「衣料のプロフェッショナルに関しては、生産、仕入れ等々に長けた優秀な人材が欲しいけど、生産コストの件も含め、商業ギルドに相談した方が良いな」
「はい、ウチは一般の取引先ではなく王国本体ですから、いろいろな面で商業ギルドに優遇して頂けると思います。商業ギルドも冒険者ギルド同様に王国の資本が入った公共企業体ですからね」
「まあ、俺達は所詮素人だし、商業ギルドにプランから納品まで考えて貰う発注方法で良いと思うよ。ただ専任の窓口たる人材は欲しいけどね」
「同意です、局長」
エステルが頷いた時。
つかつかと、ひとりの冒険者が近寄って来た。
30歳を少し過ぎたという感じのひげづらの男だ。
酒が入っているらしく、真っ赤な顔で、好色な眼差しをエステルへ向けている。
「よぉ、キレイな姉ちゃん、こんな青二才ほっといて、俺達の席に来て、おしゃくしろや。その後、どっかで楽しもうぜ」
当然、エステルはきっぱりと断る。
「仕事中ですし、お断りいたします」
「はあ、仕事中だあ? メシ食いながらかよ、ふざけんじゃねえ」
顔をしかめた冒険者はいきなり手を伸ばし、エステルの腕をつかもうとした。
ここで、シモンが稲妻のように動いた。
「がしっ!」と、冒険者の腕をつかむ。
「俺の部下に、きたね~手でさわるんじゃない」
「いててててててっ!」
冒険者の悲鳴とともに、仲間らしき冒険者達がばらばらっと詰め寄った。
剣を抜いた者も居る。
「てめぇっ!」
「コノヤロ!」
「何、しやがる!」
「仲間を放しやがれっ!」
しかし!
クラウディアを救った時同様、シモンの瞳が妖しく光った。
『威圧のスキル』が発動したのだ。
それも数倍、強い威力である。
「ぎゃ」
「あう!」
「ぐわ!」
「あう!」
瞬間!
シモンに詰め寄った4名の冒険者達は気絶し、ばたばたばたと、地へ伏したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
冒険者の気絶と同時に、店主のアルバンが厨房からすっ飛んで来た。
当事者のシモンとエステル、そして事件の一部始終を目撃していたエマの説明を受け、事件の内容を全て知った。
今後の事もある。
アルバンの通報により、衛兵が5名駆け付けた。
シモンに腕をつかまれた冒険者は「エステルへ声をかけただけだ」とすっとぼけたが……
被害者であるエステル、エマを始め風車亭のスタッフ女子の証言により、嘘がすぐにばれてしまった。
何より、仲間が「剣を抜いた」行為がはっきりとした暴行、殺人未遂と告げられ、気絶した仲間と共に連行されていったのである。
衛兵が去り……
アルバンは平謝りである。
「申しわけない! シモン、エステルさん、せっかく来てくれたのに、迷惑をかけた! この通りだ。食事代はサービスだ」
しかし、シモンは首を横に振る。
「何言ってるんすか、アルバンさん。あいつらが絡んで来ただけで、アルバンさんの責任じゃありませんって。メシのお金はちゃんと払いますよ」
「え? でも」
「良いですって、また来ますよ、俺」
笑顔のシモンにエステルも追随する。
「あ、私もぜひ来ます。また局長に守って貰いますからっ!」
「そ、そうか! エステルさん、申しわけない!」
「いえいえ、お料理本当においしかったですっ! ごちそうさまでしたっ!」
エステルはアルバンへ礼を告げると、シモンへ向き直る。
「局長! これでクラウディア様と私は、ほぼ対等ですねっ! 悪漢から救って頂きましたからっ!」
「え? ほぼ対等って?」
「うふふっ、また距離が縮まりましたねっ。私……凄く嬉しいですっ!」
満面の笑みを浮かべるエステルは、小さくガッツポーズをしたのである。
0
お気に入りに追加
470
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる