頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

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第56話「探しに行こう②」

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 翌日朝8時15分……
 エステルは晴れやかな表情で局長室に姿を見せた。
 数枚の書類をシモンへ提出する。

「おはようございます! 局長、局員候補としてピックアップしたふたりの推薦書です。昨日のうちに仕上げておきました。人事部から回って来た資料に、局長と私の意見を反映させ、加筆修正した内容です。ご確認いただけますか?」

「早速ありがとう。すぐ確認させて貰うよ」

 まさに有言実行。
 エステルは朝一番で王国労働局へ提出する求人票のひな型をシモンへ提出して来た。
 『宣言』通り凄く前向きで、やる気満々である。

 エステルより書類を受け取ったシモンはじっくりと内容を確認した。
 何度か、読み返す。

 やはりエステルは有能である。
 推薦書の記載内容は万全であり、漏れている部分は皆無であった。
 シモンは大きく頷いてOKを出し、次官補以降へ回覧する事を命する。

「完璧だよ、エステル、ありがとう! 上の了解が取れたら、本人から異動OKの意思確認を行った上で、すぐに面接を行おう」

「はい、その旨も次官補にお伝えし、書類を回して頂きます。それと昨日中に申請しておきましたので、商業ギルドへの紹介状も届いております。こちらから訪問スケジュール候補付きで申し入れをし、先方と折り合えば面会が可能です。面会相手はギルドマスターです」

「了解! さすがだ! こちらも仕事が早い。出来れば商業ギルドの訪問は、冒険者ギルド訪問の後が望ましい。本日1日待ってスケジュール調整を行おう」

「かしこまりました。本日1日次官補からの連絡を待ちましょう」

「OK! じゃあ、午前中は事務作業をさくっと終わらせ、午後は局員スカウトの視察を兼ね、外でランチをしようか?」

「わあ! 嬉しいです」

「エステルは何が食べたい?」

「私、特に好き嫌いとかないので、局長いきつけの素敵なお店に」

「お、俺のいきつけかぁ……」

 シモンは口ごもってしまった。

 残念ながら、ないんだよなぁ、そんな店……
 という言葉を呑み込み、シモンは苦笑した。
 
 良く知っている店といえば、皿洗いのバイトをしていた居酒屋ビストロしかない。
 その居酒屋はランチタイムを実施しているが、客の殆どが男であり、がらが悪い。
 エステルのようなお嬢様女子をエスコートする店ではない。

 と思っていたら、何と!
 エステルから先手を打たれた。

「局長は学生時代、居酒屋ビストロでバイトしていたんですよね?」

「……していたけど」

「ランチタイムがあるのなら、私はぜひ、そのお店に行きたいです」

「いや、その店、女子が行くような店じゃないから」

「実は私、居酒屋って行った事がないんです……それに局長が働いていたお店でしょう?」

「あ、ああ。そうだよ」

「私、局長の事、もっともっと知りたいし、ご一緒なら安心ですから」

「で、でもねぇ」

 しかし散々押し問答した挙句、エステルに押し切られ……
 シモンは彼女をかつてのバイト先へ連れて行く約束をしてしまったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 エステルの手際の良さもあり……
 午前行う事務仕事は1時間弱で終了した。

 シモンはとっておきの法衣ローブに着替える。
 エステルもデザインの違う清楚なスーツだ。

 身支度みじたくをしたふたりは、王国復興開拓省の庁舎を出ると、王都の街中へ繰り出す。
 はたから見れば、完全にデートに見えてしまう。

 しかしあくまでも仕事。
 ふたりが街中へ出たのは、新たな局員確保の為の『視察』なのである。

 『食』と『住』の局員候補は、とりあえず省内の職員に当てが出来た。
 後は『衣』と『武』である。
 武の方は、冒険者ギルドとの人材交流で獲得出来るやもしれない。
 問題は衣の方である。

 先述したが、この世界の衣服は殆どがオーダーメイドで極めて高価である。
 シモン達王国復興開拓省が救い、援助するような場所は基本豊かではない。
  衣服を支給するにしても、オーダー品などは用意出来ない。

 何軒かの衣料品店や仕立て屋を訪問し、話を聞いたが、シモン達の考えている単価とは折り合わない。
 いくら王国からの発注だといっても、利益が薄いから乗り気ではない。
 また大量の衣服を縫製する職人の数も確保が難しいというのだ。

「う~ん、中々折り合わないなぁ。やっぱりOKが出た予算が低い。発注料金が安過ぎるんだ」

「ですね、困りました」

「仕方ない。省内で予算の再交渉を行うとともに、商業ギルド訪問の際、ギルドマスターと相談しよう」

「はい、現状を知っただけでも大きいです。他にも何か良い方法がないか、じっくり考えましょう」

「だな!」

 シモンとエステルはそれからも様々な商店をじっくりと見て行った。
 鍛冶屋、石工、染物屋、靴屋等々……

「普段の生活で、何気なく見ている店ばっかりだけど、目的を持って観察するといろいろ勉強になるなぁ」

「本当にそうですね」

 そんなこんなで午前11時となった。
 少し早いが、シモンはランチにする事にした。
 ランチタイム真っ只中は避けたい。
 ランチ難民になる恐れもあるし、空腹状態のエステルを連れまわすのも宜しくないだろう。
 
 かつてのバイト先にはとてもお世話になった。
 久々に顔を出して、お礼を伝えがてらランチしても良いだろう。
 早めに行って、店主に挨拶し、さくっと食べて引き揚げよう。
 
「よし! ちょっと時間は早いけど、ランチに行こうか」

「はい!」

 という事で、ふたりはシモンがバイトをしていた居酒屋ビストロへと向かったのである。
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