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第38話「思いがけぬ再会①」

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 シモンの記念すべき人生のリスタート。
 新設された王国復興開拓省の職員としての初出勤日。

 あまりにも前向きな為に、やる気を出し過ぎた早すぎる出勤から始まり……
 麗しき美人秘書、大学の同級生エステル・ソワイエと二度目の出会い。

 初会議において、遅刻しそうになって焦ったアレクサンドラ以下上司とのコミュニケ
ーション。
 緊張する中、朝礼で全職員へ紹介された後、リュシーとレナと仕事の再確認。

 王国から与えられる予算以外に資金調達の為のビジネススキーム、優秀な人材確保、ワールドワイドで詳細な情報の収集、それらの模索と実施、それらに付随するもろもろ。
 
 結果、仕事への方向性が見え、やる気も大幅ア~ップ!!
 
 そしてエステルと気持ちが通じ合った?楽しい業務処理。
 雑談。
 彼女にせがまれて、夢ごこちのおふたりランチ。
 
 再びエステルとの楽しいひと時……
 今までの不幸な人生が一変。
 リア充な?勤務。
 
 まるで大爆発しろと、抗議が殺到しそうな状況。
 シモンは幸せを満喫していた。

 その後、エステルの素晴らしいフォローもあり、事務作業を手早く終えたシモンは残業ナッシング。
 出勤初日は何と! 午後5時30分の定時退勤となった。

 定時で帰れる!
 大事な事だからもう一度、否、二度でも三度でも言おう。

 定時で帰れる!
 定時で帰れる!

 そう、シモンは社会人になってから、生まれて初めて、定時で帰る事が出来るのだ!!

 一生懸命、頑張って来た甲斐かいがあった。
 遂に遂に!
 むくわれた!
 散々こきつかわれ、やってらんね~よ!と思いながら、諦めず本当に良かった!

 素敵な上司達と前向きな会議を行い、美人秘書と楽しくランチをした上で業務処理!
 最高にライトサイド! な気分を実感したシモン。
 名残惜しそうな表情のエステルに『退勤』の挨拶をし、庁舎を出たのである。

 庁舎を出たシモンは警備の騎士の敬礼に応え、万歳するように両腕を挙げた。
 思い切り伸びをする。
 
「ふうう、いろいろあったけど、ようやく初日が終わったぁ! 仕事はこれから大変そうだけど、凄く面白かったなぁ!」

 とりあえず、無事に初出勤を終える事が出来た。

 安堵したシモンが西の空を見れば、綺麗な夕焼け。
 解放感にみちあふれ、足取りも軽くなって来る。

 自宅へ帰って、ゆっくり風呂へ入ろう。
 そして今夜はぐっすり眠ろう。

 そういえば、とシモンは思い出す。
 『夕飯』をどうしようかと。
 
 ……魔導冷蔵庫には何も入っておらず空っぽ。
 途中で何か、露店でテイクアウトの弁当を買い、魔導書を見ながらゆっくり食べるか……

 ええっと、弁当は何にしようか……
 何を食べたいかとシモンは自問自答する。

 串焼き肉? 揚げ肉? 茹で肉? ミートパイ?
 それとも魚が良いかな?
 川魚? 海の魚?
 
 パンはライムギパン?
 サンドイッチでも良いか!

 スープはポタージュ? それともコンソメ?

 露店をやめて、記念日だから、ぜいたくする?
 有名店でテイクアウトするか?

 酒は弱いけど、今日くらいはワインで乾杯する?
 
 「つらつら」考えるシモンが王宮の正門へ向かうと、一台の立派な馬車が、ちょうど駐機場へ滑り込んだところである。

 馬車からは、まず若い女子騎士が降りた。
 更に、ひとりの使用人らしき少女が降りる。
 そして最後にどこかの生徒らしき、『制服姿の貴族少女』が続いて降りた。
 先に降りた使用人の少女に手を取って貰い、サポートされていた。

 常人の数倍あるシモンの聴力により、ふたりの会話が聞こえて来た。
 ひとりは、どこかで聞いた事のある声である。
 
「お嬢様、大丈夫ですか?」

「ええ、リゼット。全然平気よ! それどころか凄く元気! 絶好調よっ! さあ! 早くお父様をお迎えに行きましょう!」

 シモンが何気なく、3人のかたわらを通り過ぎた。

 その瞬間!

「あ~~~!!?? あ、あ、貴方はっ!?」

 いきなり、大声が上がった。
 
 さすがにシモンは、はっきりと思い出した。

 3人のうちふたりは、金髪の少女に栗毛の少女のコンビ。
 先日中央広場で助けた、貴族令嬢&付き従っていた若い侍女であると。

 シモンは振り向いた。

 侍女らしき栗毛の少女に見覚えがある。
 さすがに忘れてはいない。

 再び見直して、念の為に記憶をたぐった。
 
 ……やはり『あの侍女』である。
 さっきの会話で判明した。
 
 侍女はリゼットという名前らしい。
 彼女は「びしっ!」と思い切り、シモンを指さしていた。

 一方、学生らしき貴族令嬢は、侍女の反応を見て「ポカン」としている。
 あの時は、気を失ったままだったから、シモンの事を知らないのだ。

 このまま、ふたりを無視するわけにもいかないので、

「あ、ども!」

 シモンは柔らかく微笑み、軽く手を挙げたのである。
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