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第26話「正式決定! ダークサイドからライトサイドへ!」

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 王都郊外の村において、ほぼひとりでオークどもに圧勝。
 入省前なのに無事案件を完遂するかなめとなったシモン・アーシュ。
 
 少し休めと言われ……
 指定された数日後に、シモンは王国復興開拓省へ赴いていた。
 早速長官室で、アレクサンドラと話し込む。

 果たして本採用か?
 期待と不安に満ちたシモンへ……

「シモン君! リュシーとレナからは、大推薦の言葉を記載した報告書が上がっているわ。オーク約100体をひとりで倒すなんて! 私の予想以上に業務遂行の手助けをしてくれたわ!」

 アレクサンドラからは、満面の笑みで改めて『大合格』との言葉が告げられた。
 「ぜひぜひ! ウチの王国復興開拓省へ来て欲しい」と熱く誘われた。

 シモンの心が歓喜し、乱舞したのは言うまでもない。
 
 返事は更に数日後でも構わないと、上機嫌のアレクサンドラには言われたが……
 シモンは再度契約書を、じっくりと、且つていねいに読み込んだ上で、しっかりと自分の名をサインしたのである。

 これで!
 シモン・アーシュの運命は完全に変わった。
 
 超ダークサイドなコルボー商会所属のトレジャーハンターから、超ライトサイドな王国復興開拓省職員へ、華麗な転身となったのだ。

 契約書へ、シモンがサインをした瞬間。
 アレクサンドラは、自分の事のように大喜びしてくれた。

 シモンはふと、遠き田舎に残して来た、いつも優しく穏やかな母を思い出す……
 
 稼いだ売り上げはほとんどコルボー商会に搾取さくしゅされていた為、
 与えられたわずかな給金から、少ないながら、毎月母に仕送りを続けてもいた。
 
 余計な心配をさせると身体にさわるから、コルボー商会における辛い日々の事は一切伝えていない。
 
 しかし、ようやくこれで母に安心して貰える。
 堂々と、職業を名乗る事が出来る。
 母は故郷に執着しているから、無理に王都で一緒には住もうと思わない。
 だが、仕送りの金は一気に増やせるだろう。

 段取りが整っていたらしく、早速、身分証明書が作成された。
 
 シモン・アーシュと名前が記載された王国復興開拓省職員である事を証明する
 ミスリル製の金属カードである。
 ちなみに、ティーグル王立魔法銀行のカード機能も備えられていた。
 
 そして驚いた事に……
 何と!!
 『肩書き』がついていた。
 
 リュシーとレナの次の地位……
 『局長』だという。
 
 シモンは大いに恐縮し、固辞したが……
 「頑張って、君ならば大丈夫よ」とアレクサンドラから励まされてしまう。
 
 こうなると『局長任命』を断る事は出来ない。
 思い切り、仕事に邁進まいしんするだけだ。

 そしてアレクサンドラは、シモンの銀行口座とカードをリンクさせ、早速、金貨10,000枚を振り込んだ。

「シモン君、いえシモン局長」

「はい、長官」

「今日はこれで終わりよ。初出勤及び職員への正式な紹介は今日から、1週間後ね」

「了解です」

「定時出勤は午前8時30分。初出勤日の午前9時から長官執務室において、私、リュシー、レナと4名で幹部会議を行います」

「はい、了解しました。1週間後の午前8時30分に出勤で、午前9時から長官執務室で幹部会議ですね」

「その後、9時30分から2階の総合大会議室において朝礼を行い、全職員へ紹介するわ。宜しくね。但し仕事の状況次第で、もっと出勤時間が早くなる場合も、その逆もあるわよ」

「了解です。午前9時30分から、2階の総合大会議室において朝礼と」

「ええ、シモン君は社会人になって以来、いろいろあったから……少しゆっくりと休んだ方が良いわ」

「お気遣いいただきありがとうございます」

「1週間の休暇後に出勤し、もろもろの研修を受け、ウチに改めて慣れて行って貰うから。今回の『見学』で、業務は何となく理解しているでしょうけど」

「はあ、何とか行けると思います」

「今回の研修結果で安心したわ。ガンガン実務をこなして貰うから。いずれ良き秘書と部下もつけてあげる」

「成る程、俺にもいきなり秘書と部下が出来るのですね」

「ええ、秘書は私が決めておくわ。部下にする職員はスカウトしても構わない。但し試験を行った上、採用の最終可否は、私が決定するけどね」

「成る程、スカウトですか」

「ええ、その上で、シモン君には1か月間、1年間の流れにも慣れて貰うわ」

「はい、了解しました」

「それと住所だけど、出来れば引っ越して欲しいわ。シモン君の、今の住所は治安が悪いから」

「ええっと、もろもろ分かりました。とりあえず引っ越します。確か住宅手当は月額金貨100枚も頂けるんですよね。凄いっす」

「ええ、そうよ。どこか素敵なマンションか貸家を探してね」

「了解です」

「もし不動産屋のあてがないのなら、ブランジェ伯爵家御用達、バイヤール商会を紹介するわ。不動産部があるから、スタッフに案内して貰えば良い。支配人のラウル・フィヨンへ私の名を出せば悪いようにはならないはずよ」 

「ありがとうございます」

「何か、他に買い物があるのなら、それもラウルへ言って。そうそう、通勤及びパーティ用の服も買ってくれる?」

「服ですか?」

「ええ、今、シモン君が着てる冒険者っぽい革鎧かわよろいとかじゃ、あまり宜しくないから。そうね……派手じゃない渋めのスーツか、法衣ローブみたいなものがいいわ」 

「了解しました。結構、物入りですね。まあ契約金が10,000枚とたっぷりあるから、大丈夫ですけど」

 シモンの言葉を聞いたアレクサンドラは考え込む。

「……物入りか、う~ん。……そうね」

「???」

「よっし! 決めた!」

「はあ? 何をですか?」

 首を傾げるシモンへ、アレクサンドラから告げられたのは、大盤振る舞いともいえる朗報である。

「思い切って、シモン君へは支度金したくきんもあげちゃう! プラス金貨1,000枚ノータックスでどうかしら!」

「ええええええっ!?」

「金貨1,000枚あれば、思いっきり買い物が出来るわよ。好きなものをいっぱい買って! 気分転換&ストレス発散にもなるでしょ?」

 まさに至れり尽くせり……
 怖ろしい地獄から、一年中、温かな春のように天国となった。
 
 搾取され続け、赤字の月もあった、ろくに給金が支払われないダークサイドなトレジャーハンター生活から……
 素晴らしい環境でバリバリ仕事が出来るライトサイドな王国幹部職員へ……
 
 金貨10,000枚の莫大な契約金に加え、支度金の金貨1,000枚。
 毎月支払われる結構な給料金貨300枚&確実に支払われる残業代。
 住宅手当100枚を始め、もろもろの厚い手当て、そして明るく素敵な職場と……
 シモンは改めて、大きな幸せを得た実感を噛み締めていたのである。
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