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第22話「驚きのライトサイドな見学③」

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 シモンはサーシャこと王国復興開拓省長官アレクサンドラ・ブランジェ伯爵と、
リュシーこと、同次官リュシエンヌ・ボードレールから改めて、庁舎内の説明を受けた。

 アレクサンドラから3階までの説明は受けたので2階から地下まで。
 
 2階が総合大会議室、個室形式の打合せ室、図書室を兼ねた職員用の大サロン。
 1階が、総合受付、一般来客用の打合せブース、ロビー。
 地下はといえば、資料を収めた巨大な倉庫だという。
 これでリュシーとの顔見世&打ち合わせは終わり。

 笑顔のリュシーに見送られ、次にアレクサンドラと共に訪問したのは同じ4階の個室。

 次に紹介する幹部職員もリュシー同様『転職組』だと、事前にアレクサンドラから聞いていた。
 もしも入省したら上席ふたりが転職組。
 シモンは安堵したと同時に、協調性を大事にしようと決意する。

 『次官補』という看板が掲示された扉の前に立ったアレクサンドラは、再びリズミカルにノックした。
 これまた大きく砕けた口調で声をかける。

「は~い、レナ、居るぅ?」

 次官の部屋同様、すぐに中からは返事があった。
 低く、落ち着いた声である。

「居ります。……長官、ご用件は?」

「貴女の部下になる男子を連れて来たわ。紹介するから」

「部下の男子? ああ、長官が有望な新人職員の候補だと仰っていた、トレジャーハンターの子ですか?」

「そうだよ~ん」

「……分かりました。お入りください」

 アレクサンドラが扉を開けると、室内は先ほど訪れた次官と同じくらいの広さである。
 
 しかしこの部屋の主は、リュシーとは全くタイプが違っていた。
 背はリュシーと同じくらいだが、髪はややブラウンに近い美しい金髪。
 年齢はやはり30代前半だろうか……
 静かに鋭い視線を投げかける瞳は美しいグリーンである。

「紹介するわ、シモン君」

「はい」

「彼女は次官補のエレン・デュノア女史。私は愛称のレナで呼んでるけど」

「シ、シモン・アーシュです。よ、宜しくお願い致します」

「王国復興開拓省次官補、エレン・デュノアです。……宜しく」

 エレンからはひどく冷たい印象を受ける。
 
 リュシー先輩と違って、ちょっと苦手なタイプかも……
 こちらからは積極的に話しかけられない。

 シモンはアレクサンドラのフォローを待つ事にした。

「エレンもシモン君の先輩。魔法大学の卒業生。一応、苦学生だっけ?」

「いえ、長官。自身で大学の学費を払っていましたが、私は苦学生ではありません」

「うふふ、だよね! 腕利きの冒険者だったものね。すっごくい~っぱい稼いでいたでしょ?」

「ノーコメント。昔の話です……いきなり冒険者ギルドから呼び出しがあり、長官がノーアポで、私をスカウトに来るとは思いませんでしたけど」

 ここで、アレクサンドラからエレンが王国復興開拓省へ来る事になったエピソードを話してくれた。
 エレンが『ルー』と呼ばれたランクAの冒険者だった事。
 シモンと同じく、アレクサンドラが自ら足を運び、冒険者ギルドでスカウトした事等々。

 次にアレクサンドラは、シモンについて簡単にプロフを話してくれた。

「レナ。シモン君もね、新進気鋭。凄い評判のトレジャーハンターなのよ」

「ええ確かに……知り合いの上級冒険者ランカーから、シモンさんの名前は聞いた事があります」

 エレン……レナは、シモンに向き直る。

「……ちょっと良いかしら、シモンさん、ひとつだけアドバイス」

「は、はい」

「邪悪な勤務先から解放されたら、そのままフリーでやるか、冒険者になっても良かったのに……その方がウチで職員やるより稼げるわ」

「は、はあ……」

「まあ、シモンさんの人生だし、私には関係ない。後悔しない選択をする事だわ」

 エレンは、表情を全く変えず、淡々と言い放った。

 シモンをスカウトしたいアレクサンドラの意向に、真っ向から反するようなエレンの発言。
 アレクサンドラは、仕方ないなという顔付きで苦笑している。

 こんな時、質問を返してはいけない気がしたが、シモンは聞かずにはいられなかった。

「じゃあ、先輩はどうして、王国復興開拓省の職員を選んだのですか?」

 思い切ってシモンが質問すると……何? この子?という表情をエレンはした。
 シモンの顔を見て、冷たく微笑む。

「ノーコメント。貴方が職員になれば、分かるかもね」

 結局、エレンは明確な答えをくれなかった。

 ここでアレクサンドラが、改めて用件を告げた。

「レナ、リュシーと組んだ案件に、シモン君も見学の為、同行させて。リュシーのOKは貰ってる」

「……分かりました」

 という事で、シモンは王宮、庁舎へ入る為に『仮職員証』を渡された上……
 改めて明日朝、6時に庁舎のロビーへ来るようにと指示を受けたのである。
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