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第18話「超ライトサイドなビッグスカウト来た~!!②」

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 シモンの晴れやかな気持ちが伝わったのか、アレクサンドラも嬉しそうである。

「おお、ウチのコンセプトを分かってくれる? うん! 私もね、陛下と殿下のお考えに大いに賛同したの。だからぜひ新たな省のリーダーにしてくださいって、思い切って立候補したのよ」

「へぇ! 安定した補佐官の職を捨て、新規の省の責任者へと、陛下と殿下へ売り込んだんですか! 凄いっすね、先輩は」

「うふふ、ちょっと冒険だったかな? でも信じられないくらい過酷な経験をしたシモン君ほどじゃないわ」

「そんな……」

「だからね、私は大学で学んだシモン君の持てる知識、そして、積んだ善行、前職のトレジャーハンターのキャリアに凄く期待してる!」

「ええっと、俺の知識、魔物退治、トレジャーハンターの経験にですか?」

「ええ! それと君が先日取得したばかりの魔法鑑定士ランクAのライセンスにね! 未開の遺跡や洞窟を探索し、観光地化したり、発見されたお宝も、その土地の大きな収入になるもの」

「成る程! 先輩が俺を引っ張った意味を理解しました! もしもお世話になるのなら、頑張ります」

 アレクサンドラは大学の先輩というだけでなく、しっかりした考え方を持ている。
 とても素敵な女子で尊敬出来る相手だ。
 上司としても、行動力があり、凄く頼もしいと思う。
 
 シモンは更に、アレクサンドラの話を聞く事にした。

「宜しい! ちなみに、王国復興開拓省は他の一般的な省とは全く異なる。役所というよりも、自主的な権限が認めらる公共企業体に近いわ。その分、仕事がだいぶハードだから」

「はあ、ハードっすか。怖いっすね」

「うふふ、ハードといっても、あんな搾取さくしゅオンリーの極悪パワハラ商会とは違うから安心して! 頑張った分はしっかり報いてあげるから! トレジャーハンターとして王都に名を馳せたシモン君なら楽勝だって!」

「楽勝? そんな事はないと思いますが」

「王国宰相の名において各地で堂々と人助けをするのよ。名も無き仮面の賢者だったシモン君には、とてもやりがいがある仕事だと思うわ」

「確かに……マクシミリアン殿下の善政は王国内外に鳴り響いています。だから、殿下の指示で任地へ赴けば人々も協力的でしょうね」

「でしょ! そして、王国復興開拓省の給与体系は他省とはまるで違うの」

「ど、どう違うのですか?」

「うふふ。シモン君のお給料は、他の復興開拓省新人職員と同じ条件よ。固定給で月額金貨300枚」

「へ!? き、金貨300枚!? 俺が受験した魔法省の職員と全く違う! 桁違いっす!」

「それに残業代はちゃんと払うし、毎年10%の昇給。それと前職の実績も考慮して、高額のインセンティブも考えてる。各種手当もばっちりよ!」

 金貨300枚……
 とんでもなく高額の初任給である。
 一般の初任給より「ゼロがひとつ」違う。
 王都において、市民が家族4名を1年間養えるくらいの金額である。
 
 よっし!
 契約出来たら、病弱な母への仕送りは大幅に増やせる。
 王都では高級3LDKのアパートメントが金貨10枚で借りる事が可能だし、
 今住んでいる銀貨5枚のボロ長屋よりも、超が付く段違いで良い場所に住めるに違いない。
 もしかしたら、素敵な官舎に住めるかもしれない。
 
 残業代の確実な支払いは、全く不払いだったコルボー商会に比べ、涙が出るほど嬉しい。
 
 それに毎年10%の昇給は魅力的……
 
 高額のインセンティブは、どういう内容だろう?
 公務員なのに、不思議だ!
 先輩が仰る通り、頑張れば、頑張った分報いてくれるって事か!
 
 各種手当って、どんな手当があるのだろう!

 明るい未来への夢がふくらみ、いろいろ思いをめぐらすシモン。
 
 だが、アレクサンドラへ戻すコメントは、たかぶる気持ちを何とか押さえていた。

「な、成る程! し、新人職員で月額金貨300枚っすか。わ、悪くないですね。というか非常に好待遇です」

「うん! そしてね、異例の決定だけど、マクシミリアン殿下のご命令で、シモン君の契約金は金貨10,000枚をノータックスの現金で別途払うから」

 ブグロー部長の支度金で懲りている。
 だから、契約金の話など華麗にスルーしようと思ったシモンであったが……
 アレクサンドラから提示された『金額』を聞き、耳を疑った。

 えええええっ!?
 い、い、今なんて!!
 この人、今何言ったぁ!?

 い、い、い、一万!?
 一万枚!?
 き、き、き、金貨!!
 10,000枚ぃぃぃ!!!

 補足しよう。
 金貨1万枚は、王都貴族街区にそこそこ広い屋敷が購入可能。
 または、王都市民一家4名が約20年間、遊んで暮らせるくらいの莫大な金額なのである。

 シモンはコルボー商会在籍時、毎月平均金貨1万枚を売り上げてはいた。
 だが、実際に手にする金額とは、全く別物……なのは充分にご理解頂けるだろう。

「は!? せ、せ、せ、先輩! な、な、何か、とんでもない事言ってません?」

「言ってないわ。金貨10,000枚って、はっきり言ったわ」

「ななな、なっ!? い、い、い、10,000枚ってぇ!? ば、ば、ば、馬鹿なっ!! 国家公務員で!! あ、あ、ありえないでしょぉぉ!! りりり、立派なぁぁ!! や、や、や屋敷が買えますよぉぉっっっ!! せ、せ、せ、先輩っっ!!」

「いいええ! マクシミリアン殿下のご命令できっちり金貨10,000枚! 間違いなくシモン君の契約金! これが契約書よ!」

 アレクサンドラは、にっこり笑い……
 契約書らしき数枚の紙片を取り出し、「ひらひら」させたのであった。
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