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第17話「超ライトサイドなビッグスカウト来た~!!①」
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消滅したコルボー商会を出て、馬車に乗り……
王宮敷地内の、王国復興開拓省庁舎内へ入った、長官の麗しき魔女アレクサンドラとスカウトされたシモン。
アレクサンドラが執務を取り仕切る長官室は、庁舎の5階だという。
受け付けとロビーがある広々とした1階ホール。
この奥に職員専用の出入り口があり、更に奥が別のホールとなっていて、魔導昇降機の乗り場がある。
魔力で動く箱型の昇降機が魔導昇降機。
原理が不明の古代魔法を使用した自動昇降機である。
この昇降機で、アレクサンドラとシモンは一気に5階へ……
何と!
長官室は5階の一画、5部屋からなる広大なフロアを使っていた。
秘書らしき女子がひとり居て、深々とお辞儀をする中……
アレクサンドラの後を、おっかなびっくりという感じでシモンはついて歩き……
豪奢だが、洗練されたデザインの調度品が置かれた長官専用の応接室の中へ……
遠慮なく、長椅子《ソファ》へ座るよう言われた。
「ふかふか」で身体が沈む……こんな長椅子生まれて初めて、座った事など一度だってない。
シモンの緊張はまだ解けない。
全く落ち着かないのだ。
何故なら、コルボー商会における悪夢のような経験が、身体にトラウマとして染み付いていたからである。
「うふふ、シモン君。楽にしてよ、そんなに緊張しないで。取って食うってわけじゃないんだから。言葉遣いも、いつもの通りざっくばらん、俺とかで構わないわ」
笑顔のアレクサンドラはフレンドリーにそう言うが、シモンは全く信じなかった。
いやいやいや!
世の中は弱肉強食。
ちょっとでも、油断すれば取って食われるだろ?
この麗しき先輩はブグロー部長みたいに凶悪じゃないだろうが……
絶対に超が付く『肉食系』
確信出来る。
もう絶対に絶対にっ!
前回みたいには騙されないぞっ!
それにこんな豪華な部屋は、落ち着かね~!
おぞましい魔物が「うじゃうじゃ」出る迷宮や遺跡に潜っている方がまだ緊張しないぜっ!
「つらつら」考えるシモンを他所に、アレクサンドラは話を続けて行く。
「言った通り、シモン君には私の部下に、つまりぜひうちの職員になって欲しいのよ。元々君の第一志望は国家公務員だったでしょ?」
「はあ……全部俺の素性、内情は調べが付いているんすね」
「うふふ、さっきからそう言ってるわ」
「……国家公務員が第一志望なのは、確かにそうですし、ありがたいお話ですけど……そもそも王国復興開拓省って、何をする省なんですか?」
「ズバリ! シモン君が行ってた善行そのものよ」
「え、ええっと……それは」
シモンは口ごもった。
そんなシモンを、アレクサンドラはジト目で見る。
「さっきから、たびたび言ったけど……貴方の出自、就職の経緯、最近の素行はウチの調査でバッチリ裏が取れてるって。これ以上隠すと、怒るわよっ!」
「し~、し~ません。告白します、確かに仮面つけて、人助けしてました」
「宜しい! 我が王国復興開拓省はね、国王デュドネ陛下と陛下の弟君、宰相マクシミリアン殿下がご相談された富国強兵策の構想から生まれたの。殿下直属の部署として去年新設された特別な省なのよ」
「はあ~、王国復興開拓省って……去年新たに生まれた殿下直属の特別な省っすか。なら俺が知らなかったわけっすね。就職活動していた時はなかったすから」
「ええ、殿下から課せられたウチの任務はね、王国内で難儀する人々をケアし、フォローする事」
「人々のケアとフォローっすか?」
「ええ、ウチの仕事は、その土地に発生する危険を解消し、暮らしを豊かにする手助けをする事なの。それが人々の生活レベルを向上させる。その結果、ティーグル王国が豊かになり、国力も上がる事となるから」
「な、成る程」
「本来、魔物や山賊の討伐、治安の維持はその土地の領主が行うもの。でも、いろいろな事情があって、滞ったり、放置される場合もある」
「ですね……」
「もしもお金があれば冒険者ギルド等に討伐を依頼出来るけど、貧しい地ではそれも、ままならない。シモン君は、害為す魔物を退治して、辺境の恵まれない人達の助けとなっていたでしょ?」
「はあ、やれる事をやっただけです」
「謙遜ね、素敵な行いだと思うわ。でも王国復興開拓省の業務は、それだけじゃない。多岐に渡るの」
「多岐に渡る?」
「ええ、シモン君が行った魔物退治だけではなく、未開の土地開拓、宅地化、農地化を始めとして、産業、観光の開発、振興等々、その土地に適応した細やかな施策を実施するのよ」
「おお、素晴らしいっす」
「ええ、その為にシモン君みたいな魔法、探索スキルに優れたプロフェッショナルだけじゃなく、あらゆる分野のプロの力を集結させ、最大限に発揮させるの。それが我が王国復興開拓省創設の意義なのよ」
アレクサンドラが語る王国復興開拓省の任務は広範で、とても興味深かった……
そして、理念も素晴らしい。
……シモンは辺境の小村でゴブリン退治をした事等々。
名も無き仮面の賢者として、魔物を倒しまくり、多くの人々を助けた事を思い出した。
皆、外敵の脅威が去り、心の底からとても喜んでいた。
あの時は……
働いても働いても報われない、味気ない仕事を続ける為に、モチベーションアップをはかる為であった。
それが……今度は『本業』となる。
否、魔物退治だけではない。
シモンが習得した数多の魔法、スキルが世の人々の役に立つ。
自分が一生懸命に働き、多くの人々が喜ぶ。
豊かになり、幸せとなる。
人々は支え合い生きて行くと、誰もが言う……
やっと!
やっと報われる。
そんな日が遂に来たのだ。
そう思えば、怒鳴られ、脅され、死ぬ気で頑張った地獄のパワハラ特訓でさえ……懐かしい。
俺が生まれて来て、死ぬまでの……
生きた証が残せるかもしれない。
「先輩! 王国復興開拓省の仕事って素敵だし、すっごく面白そうですね! 人生賭ける価値があるっすよ!」
シモンは心がとても晴れやかになり、うきうきするのを感じたのである。
王宮敷地内の、王国復興開拓省庁舎内へ入った、長官の麗しき魔女アレクサンドラとスカウトされたシモン。
アレクサンドラが執務を取り仕切る長官室は、庁舎の5階だという。
受け付けとロビーがある広々とした1階ホール。
この奥に職員専用の出入り口があり、更に奥が別のホールとなっていて、魔導昇降機の乗り場がある。
魔力で動く箱型の昇降機が魔導昇降機。
原理が不明の古代魔法を使用した自動昇降機である。
この昇降機で、アレクサンドラとシモンは一気に5階へ……
何と!
長官室は5階の一画、5部屋からなる広大なフロアを使っていた。
秘書らしき女子がひとり居て、深々とお辞儀をする中……
アレクサンドラの後を、おっかなびっくりという感じでシモンはついて歩き……
豪奢だが、洗練されたデザインの調度品が置かれた長官専用の応接室の中へ……
遠慮なく、長椅子《ソファ》へ座るよう言われた。
「ふかふか」で身体が沈む……こんな長椅子生まれて初めて、座った事など一度だってない。
シモンの緊張はまだ解けない。
全く落ち着かないのだ。
何故なら、コルボー商会における悪夢のような経験が、身体にトラウマとして染み付いていたからである。
「うふふ、シモン君。楽にしてよ、そんなに緊張しないで。取って食うってわけじゃないんだから。言葉遣いも、いつもの通りざっくばらん、俺とかで構わないわ」
笑顔のアレクサンドラはフレンドリーにそう言うが、シモンは全く信じなかった。
いやいやいや!
世の中は弱肉強食。
ちょっとでも、油断すれば取って食われるだろ?
この麗しき先輩はブグロー部長みたいに凶悪じゃないだろうが……
絶対に超が付く『肉食系』
確信出来る。
もう絶対に絶対にっ!
前回みたいには騙されないぞっ!
それにこんな豪華な部屋は、落ち着かね~!
おぞましい魔物が「うじゃうじゃ」出る迷宮や遺跡に潜っている方がまだ緊張しないぜっ!
「つらつら」考えるシモンを他所に、アレクサンドラは話を続けて行く。
「言った通り、シモン君には私の部下に、つまりぜひうちの職員になって欲しいのよ。元々君の第一志望は国家公務員だったでしょ?」
「はあ……全部俺の素性、内情は調べが付いているんすね」
「うふふ、さっきからそう言ってるわ」
「……国家公務員が第一志望なのは、確かにそうですし、ありがたいお話ですけど……そもそも王国復興開拓省って、何をする省なんですか?」
「ズバリ! シモン君が行ってた善行そのものよ」
「え、ええっと……それは」
シモンは口ごもった。
そんなシモンを、アレクサンドラはジト目で見る。
「さっきから、たびたび言ったけど……貴方の出自、就職の経緯、最近の素行はウチの調査でバッチリ裏が取れてるって。これ以上隠すと、怒るわよっ!」
「し~、し~ません。告白します、確かに仮面つけて、人助けしてました」
「宜しい! 我が王国復興開拓省はね、国王デュドネ陛下と陛下の弟君、宰相マクシミリアン殿下がご相談された富国強兵策の構想から生まれたの。殿下直属の部署として去年新設された特別な省なのよ」
「はあ~、王国復興開拓省って……去年新たに生まれた殿下直属の特別な省っすか。なら俺が知らなかったわけっすね。就職活動していた時はなかったすから」
「ええ、殿下から課せられたウチの任務はね、王国内で難儀する人々をケアし、フォローする事」
「人々のケアとフォローっすか?」
「ええ、ウチの仕事は、その土地に発生する危険を解消し、暮らしを豊かにする手助けをする事なの。それが人々の生活レベルを向上させる。その結果、ティーグル王国が豊かになり、国力も上がる事となるから」
「な、成る程」
「本来、魔物や山賊の討伐、治安の維持はその土地の領主が行うもの。でも、いろいろな事情があって、滞ったり、放置される場合もある」
「ですね……」
「もしもお金があれば冒険者ギルド等に討伐を依頼出来るけど、貧しい地ではそれも、ままならない。シモン君は、害為す魔物を退治して、辺境の恵まれない人達の助けとなっていたでしょ?」
「はあ、やれる事をやっただけです」
「謙遜ね、素敵な行いだと思うわ。でも王国復興開拓省の業務は、それだけじゃない。多岐に渡るの」
「多岐に渡る?」
「ええ、シモン君が行った魔物退治だけではなく、未開の土地開拓、宅地化、農地化を始めとして、産業、観光の開発、振興等々、その土地に適応した細やかな施策を実施するのよ」
「おお、素晴らしいっす」
「ええ、その為にシモン君みたいな魔法、探索スキルに優れたプロフェッショナルだけじゃなく、あらゆる分野のプロの力を集結させ、最大限に発揮させるの。それが我が王国復興開拓省創設の意義なのよ」
アレクサンドラが語る王国復興開拓省の任務は広範で、とても興味深かった……
そして、理念も素晴らしい。
……シモンは辺境の小村でゴブリン退治をした事等々。
名も無き仮面の賢者として、魔物を倒しまくり、多くの人々を助けた事を思い出した。
皆、外敵の脅威が去り、心の底からとても喜んでいた。
あの時は……
働いても働いても報われない、味気ない仕事を続ける為に、モチベーションアップをはかる為であった。
それが……今度は『本業』となる。
否、魔物退治だけではない。
シモンが習得した数多の魔法、スキルが世の人々の役に立つ。
自分が一生懸命に働き、多くの人々が喜ぶ。
豊かになり、幸せとなる。
人々は支え合い生きて行くと、誰もが言う……
やっと!
やっと報われる。
そんな日が遂に来たのだ。
そう思えば、怒鳴られ、脅され、死ぬ気で頑張った地獄のパワハラ特訓でさえ……懐かしい。
俺が生まれて来て、死ぬまでの……
生きた証が残せるかもしれない。
「先輩! 王国復興開拓省の仕事って素敵だし、すっごく面白そうですね! 人生賭ける価値があるっすよ!」
シモンは心がとても晴れやかになり、うきうきするのを感じたのである。
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