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第34話「いきなり勇者タウン出現!?」

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 ダンの転移魔法で、ラッセ以下ドヴェルグ族の職人100名余は、魔境へ隣接する自宅へやって来た。

 驚異ともいえる大自然に囲まれたオンボロ城を見て、ラッセ達はびっくりした。
 だが、周囲の土地は広げ放題、自由に使えると聞き、歓声をあげる。
 どうやら闘志に、つまり職人魂に火が点いたようである。

 「魔境の魔物が作業中に襲って来るのでは?」という懸念も払拭された。
 ダンの張り巡らした強力な魔法障壁があると知ったからだ。
 魔法障壁は肉眼での確認は不可能である。
 しかしスオメタルの投げた小石が音を立てて跳ね返された事を見て、
 『見えない守りの壁』があると充分認識し、大いに安堵したようだ。

 そしてドヴェルグ達は、いよいよ不死者アンデッド達とのごたいめ~ん。
 スパルトイが50体余、そして亡霊少女が一体である。

 ラッセ達に一瞬、緊張は走った。
 だが、スパルトイリーダーは怖ろしい見た目に反し、礼儀正しく、まじめ。
 更にはとんでもない働き者。

 勤勉で愚直なドヴェルグ族とは相性が良いらしく、すぐに打ち解けてしまった。
 また、タバサの『不思議ちゃんキャラ』も、貴重なムードメーカーとして大いに歓迎されたのだ。

 ここからはラッセ達、プロの領域へ入る。
 ダンとスオメタルは、リフォームのおおまかな希望を事前に伝えている。
 だから、確認をしつつ、基本はお任せとなる。

 ラッセ達は現場の下見をじっくりした後、職人達を班分けした。
 城のリフォーム組と上物設置組にである。

 傍らで話を聞いていたスパルトイ達は雑用の手伝いを申し出た。
 彼等の出自が半農半士だと知り、ラッセは快諾した。
 そしてスパルトイに対抗心を燃やしたタバサも亡霊のメリット、瞬時の移動を活かした連絡係を買って出て、受け入れられたのである。

 すぐに工事はスタートし、何の支障もなく順調に進んだ。
 スパルトイ達は畑仕事だけではなく、大工仕事にも長けており……
 ドヴェルグの職人達も勝るとも劣らない働きを見せたのだ。

 そして何と!
 夕方前に、工事は全て終了してしまった。

 完成後、念入りに最終確認をしてくれたラッセ達を……
 ダンは再び、転移魔法を使い、ドヴェルグの都ザガズまで送って行った。 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ザガズから戻ったダンとスオメタルは『新居』を散策している。
 スパルトイ達とタバサは今日の任務は完了という事で、既に休んで貰っていた。
 
 何か褒美をと思い、ダンは住居の提供を申し入れたが、スパルトイ達は住み慣れた地中がベストと固辞した。
 一方、タバサは洒落たデザインのアパートを見てひと目で気に入り、自分の部屋を所望。
 ぜひ住みたいと言い出した。
 結果、リクエストした3階の角部屋をゲットし、ひどく上機嫌であった。

 閑話休題。
 
 新居の散策を終え、ダンは満足そうに頷いた。

「よっし! OK!」

「マスター、大満足でございますね。リフォームのデザインとか、上物の配置とか、いろいろ悩みましたでございますが、素晴らしい仕上がりでございます。すっごく気持ち良いでございます」

「全くだ! 気持ち良いな! さすがラッセ、そしてスパルトイ達もタバサも頑張ってくれた」

 城のリフォームは完璧以上。
 単に修理しただけでなく、大広間、寝室、客室、書斎、厨房等、新築に限りなく近い状態となった。
 素敵なマイホームで新婚生活?を開始するスオメタルの機嫌は最高レベルである。

 そして既成の上物を配置した増築分も素晴らしい趣きとなった。
 
 まずは増築の為、城内の敷地を今迄の5倍に広げた。
 城の周囲の石壁も修復、強固にし、10mの高さに改良した。
 そして数多の上物を建てる為、その5倍の広さを開拓したのだ。
 
 更に敷地全体をガードする為、魔法障壁の範囲も拡大、各所へ別途細かく設定、その上でより一層強固に。
 ついでにパスワード対応の小出入り口、警報装置や魔法水晶の監視装置も付けた。

 その敷地内へ新たに建てたのは……
 オーダーした厨房設備付きの店舗、宿舎、倉庫、家畜小屋に馬用の厩舎、 宿泊&応接付きの会議棟、そして牢獄。
 ちなみに牢獄には地下牢も付いていた。
 
 ラッセから追加でサービスして貰ったのは、タバサが移り住んだ3階建てのアパートが2棟。
 そして、宿屋、住居付きの店舗、男女別の共同浴場である。
 
 これらの上物は全て展示用のサンプル品。
 しかしラッセの好意で全てが大型で新品同様。
 それらがトータル金貨3,000枚の超格安特価であった。
 
 しかし格安と言っても、安かろう悪かろうではない。
 ドヴェルグ族により丁寧に造られた堅牢且つ渋いデザインの逸品ぞろいである。
 また土台さえ造れば、その上に収納の腕輪から出した完成済みの建物を載せるだけ、
 位置の微調整も魔法で行った。
 
 ダンとスオメタルは再び完成した『我が家』の全景を眺めた。

「う~む。こうしてみると何か……」

「はい! 城のみだったのが大変貌! 全然広くなり、まるで小さな町のようでもございますよ、マスター。でも……だいぶ現金使いましたでございますよね」

「ああ、からっぽとは言わないが、ウチの金庫の中身はわずかだ。食い物は備蓄してるし、無ければ魔境で調達すれば良い。生活必需品もたっぷり買ってあるから困らないが」

「仰る通りでございます」

「うん、でもそろそろ仕事というか、片付けが済んで落ち着いたら、王都で短期のバイトをするか」

「御意でございます。大賛成でございます」

「うん、王都の冒険者ギルド支部には、ダンとスオメタルではなく、別名義で登録してあるしな。だからセザール王との約束には引っかからない」

「はい! 擬態して別人での依頼遂行は、約束の不履行とはなりませぬ。さすが、マスターでございます」

「まあ、想定内だな」

「はい! 別人名義でクラン登録も合わせてしたでございますゆえ、ふたりで適当な依頼をこなすでございますね。そしていっぱい稼いでまたも王都うきうきデート&買い物発動! でございますねっ! ワクワクして来たでございますっ!!」

「だな! 先日話した情報屋の下へも行ってみようぜ。何か新情報が入ってるかもしれない」

「大いに期待致しましょう」

「うん! それにラッセにも引き続き、ガルドルド遺跡の件も頼んであるし、いずれ何らかの情報が入るはずだ。現にいくつか調査中と言っていたしな」

「わぁお! そっちもですか! 大いに期待出来るやもしれませぬ! 早くスオメタルの真の身体を見つけ、マスターの妻となり、可愛い子供をいっぱい生みたいでございます!」

「そうか! でもネガティブな言い方して申しわけないが、万が一、身体が見つからなくとも、子供が出来なくても、お前と暮らせるだけで、俺は嬉しい」

「わぁお!! いつも優しいっ! マスター、大好きでございますっ!!」

「俺もスオメタルが大好きだ! ……じゃあ夕食にしようか」

「わお! 賛成でございます! がっつり食べるでございます!」

 ダンとスオメタルは、設置お疲れ様のキス。
 夕食の支度を一緒にするべく、城へ向かい歩き出したのである。
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