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第26話「土いじり②」

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 ダンは魔王を倒した元勇者……
 スオメタルは単身、悪魔の大群と渡り合った最強の自動人形オートマタ
 そして農業のプロといえる50体余のスパルトイ軍団……

 いくら3倍に目標を課しても、畑仕事は……楽勝だった。
 全員で普通の農機具を使って作業したが、ものの30分もかからなかったのだ。
 ちなみに、スパルトイ達のアドバイスも受けながら、用意した腐葉土ふようどをたっぷり、更に石灰も入れてある。

 スオメタルは何度も頷きながら、作業を続けている。
 成る程! とか、勉強になる!
 と、繰り返し口にしていた。
 気合が相当入っているらしく、目が輝いている。
 
『成る程……腐葉土とは、植物や作物を育てる土を改善する為の堆肥たいひなのですね』

『ああ、そうだ。今回使用したのは地の魔法で精製したものだが、天然の腐葉土も欲しいな。石灰は王都で購入したものだし』

『ふむふむ、腐葉土とは、枯れて落ちた樹木の葉や枝が長い年月をかけて、土状になったものと……』

『その通り!』

『そして石灰とは消石灰なのですね。石灰岩などの主成分を1,100℃ほどに加熱する、と……OKです。昨夜ご説明頂いた、ろ過装置地やシャツの網同様、私の魔導回路に記憶させました!』

 ここでダン、スオメタルとスパルトイリーダー始め、スパルトイ軍団との間で、熱く話が交わされた。

 次は種まきなのだが……
 結局、数日後までに、何を植えるのか検討する事となった。
 
 ダンとスオメタルの希望を聞いたスパルトイ達が、いろいろとアドバイスする形になる。
 春に植える野菜という事で考えて欲しいという話が告げられた。

『よし! という事で畑仕事は本日のノルマ完了! っておい、大丈夫か、スオメタル』

 と、良く見れば……
 疲れていないはずのスオメタルの表情が少しだけ暗い。

『はい、マスター。私の苦手なミミズが……たくさん出現しましたので、気分がちょっと……でも! マスターに排除して頂いたから、大丈夫! 無事任務完了……でございますね』

 ここで、「なあんだ。ミミズ?」などと言えば、スオメタルの乙女心を傷つける。
 当然ダンはそのように愚かな行為はしない。
 こういった恋愛知識も、ダンはアンジェリーヌの命令で散々読み聞かせさせられた、恋愛ロマンス小説から得ていた。
 当然、スオメタルには内緒の黒歴史である。

 余計な事は一切言わず、優しくフォローだけするのが吉だ。

『まあ、ミミズは土を良くしてくれるから、殺せない。スオメタルの見えない場所に移すだけ、まあ俺に任せろ』

『助かります!』

『それに俺もゴキブリが苦手だからなぁ。気持ちは分かる』

『うふふ、私もゴキブリは苦手でございます。私とマスターは似た者夫婦でございますゆえ』

 と、ここでまたまた、スパルトイリーダーが進み出た。
 まだまだ働き足りないという波動を放っていた。
 
『ダン様、まだまだ時間がありますので、我々だけでもう少し畑を広げたいのですが』

『良いのか?』

『はい! その後に種まきの打合せも行っておきます。ベストな提案をさせて頂きます』

『悪いな、何から何まで』

『いいえ、戦うのも好きですが、我々スパルトイはやはり根っからの農民。先ほども申しましたように農作業は大好きですから』

『じゃあ、任せる。ありがとう! 終わったら、武道訓練でもしておいてくれ』
『スオメタルからも、お礼を言わせて頂くでございます。ありがとうでございます』

 ダンがOKすると、スパルトイリーダーは早速、仲間の下へ行き、何やら相談を始めた。

『うふふ、マスター。彼等に大が付く感謝を致します! では! いよいよでございますね!』

『ははは、だな! と、なれば』

『いよいよデートタイムに、とつ、にゅうでございます』

『よっし、早速出かけよう!』

『ラジャーでございます』

 ダンは、二振りの鞘入りスクラマサクスを腕輪から出し、
 ひとつをスオメタルへ渡し、もうひとつを自分の腰から提げた。

『頑丈で、切れ味抜群。魔力伝導率の高いミスリル合金製のスクラマサクスだ。俺が作った』

『ありがとうございます。お揃いの探索用の剣でございますね、さすがです、マスター。素晴らしい出来栄えでございます』

『サンキュ! このスクラマサクスも、通常使ってるオリハルコンの魔法剣同様、属性魔法が付呪エンチャント出来る。じゃあ行こう』

『はいっ!』

 ダンの差し出した手を、スオメタルはしっかり握った。
 
 手をつなぐのは、ダンからスオメタルへの単なる魔力の補給ではない。
 確かな魂の絆が、ふたりにはしっかりと結ばれつつあったのである。  
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