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第23話「抱き枕の拝命」
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ここはダンの寝室。
収納の腕輪から出したベッドで、彼はぐっすり眠っていた。
しかし、ダンはいつもの癖で「ぱっ」と目を覚ました。
潔く飛び起きる。
セントヘレナの王宮に滞在していた時、勇者になる訓練の為、いつも起きていた時間である。
改めて見やれば、部屋に置いた魔導時計はまだ午前3時過ぎ……
日付けは変わっていたが、朝とはいえない。
窓から見える外は、当然の事ながらまだ暗かった。
この時間では、夜はまだ明けていないのだ。
ダンは苦笑し、手足を思い切り伸ばした。
解放感が満ちあふれる。
「魔王討伐からは、すっぱりお役御免になった。さすがに訓練のさぼりはNGだが、これからは、もう少し寝ていようか……な」
と、ダンが独り言ちたと同時に。
やや低いが元気の良い、挨拶の声がかけられる。
「うふ、おはようございます! まだ眠っていて構いませぬよ、でも相変わらず早いでございますね、マスター」
自然に反応したダンではあったが……
「ああ、おは……よう、って……」
「うふふっ」
「ええっ!? 何で? スオメタルが、そんなカッコで俺のベッドに居るのぉ?」
何と!
ダンの傍らにスオメタルが居た。
白い肌が透けて見える艶っぽいレースの下着姿である。
驚くダンに対し、スオメタルは微笑みながら淡々と告げる。
「何で? と仰られても困るでございますが……仕方ありません。私がここに居る正当な理由を、マスターにちゃんとご説明するでございます」
話し方はいつものスオメタルである。
ダンはいろいろな原因と状況を思い浮かべたが……
まずは彼女から話を聞くしかない。
「あ、ああ……頼む」
「はい! 私とマスターは夫婦……いえ、まだ夫婦になる予定の婚約者同士ではございますが、愛し愛される者同士、同衾するのは当然でございますゆえ」
夫婦?
婚約者同士?
違うと思う。
スオメタルの事は愛おしいが、ダンの気持ちはそこまで到達していない。
「いや、婚約者同士とか、愛し愛される者同士、同衾するのは当然とか違うし……第一、お前の個室兼寝室とベッドは、ちゃんと用意していたじゃないか?」
「昨夜、ふと気が変わりましたゆえ、元の私の部屋は急きょ客室に変更致しました。この城の寝室は、愛と効率を考え、私とマスターの共用に致しました。何か問題でも?」
「ぐいっ」と身を乗り出し、迫るスオメタル。
真摯で気合のこもった眼差しに、ダンは気圧されたようになる。
「何か問題でもって……ま、まあ、良いか」
「ノープロブレムという事で……OKでございますね」
「ああ、わ、分かった」
「では! 私スオメタルは! マスターより抱き枕としての任務も拝命致しましたので、粛々と務めさせて頂きます」
「分かった、分かったって、え? 抱き枕ぁ!? そんなの! め、め、命じてね~って!」
「華麗にスル~。はい、スオメタルは今後、マスター言いなりの抱き枕となり、より一層、甘えさせて頂きます。とりあえず今朝の分と致しまして、マスターが私の名を優しく呼び、ぎゅっとして頂ければ、任務完了でございます」
「…………」
ダンがすぐ返事をしなかったので、スオメタルは不安を感じたようだ。
「もしかして……お嫌でございますか? 私を抱き枕にするのは……却下でございますか? マスター」
スオメタルは切なそうにダンを見つめ……
寂しそうに俯いてしまった。
ダンは……もう、今迄の認識を捨てた。
やはりスオメタルは『妹』ではないのだ。
真摯に熱く自分を慕ってくれる素敵な可愛い恋人なのだ。
そんなスオメタルを愛しいと感じる。
「……分かった! スオメタル、おいでっ!」
「は~いっ! マスター、大好きっ! でございますっ!!」
『お許し』が出たスオメタルは元気に返事をし、嬉々として、
ダンに抱き着き、ぎゅっとして貰った。
やはり……
スオメタルは、ツンデレ。
ダンに対してだけは、超が付く甘えん坊だったのである。
収納の腕輪から出したベッドで、彼はぐっすり眠っていた。
しかし、ダンはいつもの癖で「ぱっ」と目を覚ました。
潔く飛び起きる。
セントヘレナの王宮に滞在していた時、勇者になる訓練の為、いつも起きていた時間である。
改めて見やれば、部屋に置いた魔導時計はまだ午前3時過ぎ……
日付けは変わっていたが、朝とはいえない。
窓から見える外は、当然の事ながらまだ暗かった。
この時間では、夜はまだ明けていないのだ。
ダンは苦笑し、手足を思い切り伸ばした。
解放感が満ちあふれる。
「魔王討伐からは、すっぱりお役御免になった。さすがに訓練のさぼりはNGだが、これからは、もう少し寝ていようか……な」
と、ダンが独り言ちたと同時に。
やや低いが元気の良い、挨拶の声がかけられる。
「うふ、おはようございます! まだ眠っていて構いませぬよ、でも相変わらず早いでございますね、マスター」
自然に反応したダンではあったが……
「ああ、おは……よう、って……」
「うふふっ」
「ええっ!? 何で? スオメタルが、そんなカッコで俺のベッドに居るのぉ?」
何と!
ダンの傍らにスオメタルが居た。
白い肌が透けて見える艶っぽいレースの下着姿である。
驚くダンに対し、スオメタルは微笑みながら淡々と告げる。
「何で? と仰られても困るでございますが……仕方ありません。私がここに居る正当な理由を、マスターにちゃんとご説明するでございます」
話し方はいつものスオメタルである。
ダンはいろいろな原因と状況を思い浮かべたが……
まずは彼女から話を聞くしかない。
「あ、ああ……頼む」
「はい! 私とマスターは夫婦……いえ、まだ夫婦になる予定の婚約者同士ではございますが、愛し愛される者同士、同衾するのは当然でございますゆえ」
夫婦?
婚約者同士?
違うと思う。
スオメタルの事は愛おしいが、ダンの気持ちはそこまで到達していない。
「いや、婚約者同士とか、愛し愛される者同士、同衾するのは当然とか違うし……第一、お前の個室兼寝室とベッドは、ちゃんと用意していたじゃないか?」
「昨夜、ふと気が変わりましたゆえ、元の私の部屋は急きょ客室に変更致しました。この城の寝室は、愛と効率を考え、私とマスターの共用に致しました。何か問題でも?」
「ぐいっ」と身を乗り出し、迫るスオメタル。
真摯で気合のこもった眼差しに、ダンは気圧されたようになる。
「何か問題でもって……ま、まあ、良いか」
「ノープロブレムという事で……OKでございますね」
「ああ、わ、分かった」
「では! 私スオメタルは! マスターより抱き枕としての任務も拝命致しましたので、粛々と務めさせて頂きます」
「分かった、分かったって、え? 抱き枕ぁ!? そんなの! め、め、命じてね~って!」
「華麗にスル~。はい、スオメタルは今後、マスター言いなりの抱き枕となり、より一層、甘えさせて頂きます。とりあえず今朝の分と致しまして、マスターが私の名を優しく呼び、ぎゅっとして頂ければ、任務完了でございます」
「…………」
ダンがすぐ返事をしなかったので、スオメタルは不安を感じたようだ。
「もしかして……お嫌でございますか? 私を抱き枕にするのは……却下でございますか? マスター」
スオメタルは切なそうにダンを見つめ……
寂しそうに俯いてしまった。
ダンは……もう、今迄の認識を捨てた。
やはりスオメタルは『妹』ではないのだ。
真摯に熱く自分を慕ってくれる素敵な可愛い恋人なのだ。
そんなスオメタルを愛しいと感じる。
「……分かった! スオメタル、おいでっ!」
「は~いっ! マスター、大好きっ! でございますっ!!」
『お許し』が出たスオメタルは元気に返事をし、嬉々として、
ダンに抱き着き、ぎゅっとして貰った。
やはり……
スオメタルは、ツンデレ。
ダンに対してだけは、超が付く甘えん坊だったのである。
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