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第20話「ガラクタ?問答」
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ドヴェルグ族の地下国家、イングズの王都ザガズへ赴き、職人ラッセ・ムルサへ、自宅のリフォームと増築を依頼したダンとスオメタルは……
行った時と同様に、転移魔法を使い、「さくっ」と帰って来た。
見るからにラッセは多忙であった。
ダンとスオメタルと話している間も、配下の職人達からひっきりなしに報告が入って来て、指示を仰ぐ者も多く居たからだ。
しかし……「お前達は何者にも代えがたい恩人なのだ」と無理を聞いてくれた。
スケジュール等を確認の結果、1週間後に配下の職人達を連れ、ダンの自宅へ来てくれるという。
とはいっても、ダンの自宅とザガズは100㎞以上離れていた。
馬車は勿論、徒歩でも相当な時間がかかってしまう。
ダンとスオメタルが再び転移魔法でザガズまで迎えに行き……
ラッセ達をピックアップ、空間魔性で上物と資材を収納。
再び転移魔法で、自宅の城まで一気に運ぶという段取りとなっている。
ザガズでの段取りが済み、ダンとスオメタルが戻ると……
スパルトイリーダー以下、留守番部隊は整列して、ふたりを出迎えた。
亡霊少女のタバサも珍しく「寂しかった」と殊勝に甘えて来る。
ダンが行使する魔法障壁の威力は絶大であり、自宅への侵入者は皆無であった。
「留守中は何も異常なし」とスパルトイリーダーから報告を受けたダンは、全員へ本日の業務終了を言い渡した。
その後、ダンとスオメタルは、ふたりで軽く夕食を摂った。
やがて夜も更けて来て……
スパルトイ達は休息の為に地中へ戻り、タバサも、あてがわれた部屋に引っ込んでいた。
しかしダンとスオメタルは、まだまだ休まず話し込んでいた。
今後の打合せをしていたのである。
共同生活を始めるにあたり、いろいろと決めなければならない事が数多あったからだ。
衣食住を中心に何が必要なのか、何をやるべきなのか、徹底的に。
腕輪へ備蓄した食料、資財の在庫確認、新規追加の相談のやりとりは勿論、
ダンがまめに作った『用途不明な小道具』がずらりと並べられ……
スオメタルからダンへ、ガンガン問い合わせの質問が飛ぶ。
訝し気な表情のスオメタルが、並んだうちのひとつ、古びた壺を指す。
「マスター、一体これは何でしょう? 汚く古い大きな壺に布やら、木炭やら、砂利が入ってございますが、下部には蛇口もついております。廃品寄せ集めのゴミか、ガラクタではないのでございますか?」
「失礼な! 上から水を入れると下から綺麗な水が出て来る……城の内部にも設置してあるが、水のろ過装置だよ」
「ええっ? 水のろ過って……この壺の上から水を注ぐと、下から綺麗な水が出るのでございますか」
驚くスオメタルを見て、ダンは得意げに胸を張った。
「ああ、綺麗な水になる。ゴミなどを取り除き……綺麗な水を飲む為に使うんだ。更に、ろ過した水を煮沸すればリスクは軽減される。念の為、俺は必ず煮沸するし、毒物が含まれた水には無効だな……」
「成る程! それは面白いでございます。見かけによらない便利グッズでございます」
「ははは、分かったかい? ジャンク品もこうして有効活用すれば、見事に復活する。作るのは楽しいし、役に立つんだぞ」
「ではマスター、この、ふたまた棒の先にシャツを取り付けたものは? これは確実にゴミでございましょう?」
拾って来たふたまたの枝に散々着倒したシャツを結び付けた……
スオメタルから見たら、『完全な廃棄物』がそこにはあった。
「いやいや違う! それは散々着古したシャツを有効的に2次利用した魚をすくう網の代用品だ」
「ふ~ん、見た目は黄ばんで汚いシャツが付いたゴミなのに面白いでございます! ……このように意外なものが網の代わりになるとは」
「だろ! 俺は無駄なモノは拾って……いや、回収して来ないって!」
「駄目です、大好きなマスターでも、その件だけは信用出来ないし、容認出来ません。私はきちんと! びしっと! 整理整頓されていないと、気持ち悪くなるのでございます」
「気持ち悪くなるのでございますって……スオメタルの身体は……」
思わずダンが口を滑らせると、スオメタルはキッと睨む。
言いかけとはいえ、失言だったようだ。
「マスター。肉体的にではなく! 精神的にでございます! それより! 以前、マスターの収納の腕輪の棚卸しをした際、半分以上捨てたじゃないですか? 99%ゴミばっかりでございましたよっ!」
速射砲のように繰り出されるスオメタルの言葉。
ダンは……防戦一方である。
「い、いや、あれは、まだ使えるし。スオメタルが強引というか、だから無理やり捨てたというか……」
「私が何か?」
「い、いや! 何でもない!」
これ以上口答えすれば、スオメタルの怒りが沸騰してしまいそうだ。
ダンは一旦、矛を収める事にした。
こんなふたりのやりとりは……
母親と子供。
もしくは、しっかり者の姉とだらしない弟のようだ。
例えば子供が、とても大事にしている宝物。
対して母親には、全く不要で廃棄すべきガラクタに見える。
そんな攻防戦かもしれない。
そんなこんなで……
とりあえず、ざっくり説明したが、ダンの作った数が多すぎてとても全部は無理。
随時、実践にて教えるという事に相成ったのである。
行った時と同様に、転移魔法を使い、「さくっ」と帰って来た。
見るからにラッセは多忙であった。
ダンとスオメタルと話している間も、配下の職人達からひっきりなしに報告が入って来て、指示を仰ぐ者も多く居たからだ。
しかし……「お前達は何者にも代えがたい恩人なのだ」と無理を聞いてくれた。
スケジュール等を確認の結果、1週間後に配下の職人達を連れ、ダンの自宅へ来てくれるという。
とはいっても、ダンの自宅とザガズは100㎞以上離れていた。
馬車は勿論、徒歩でも相当な時間がかかってしまう。
ダンとスオメタルが再び転移魔法でザガズまで迎えに行き……
ラッセ達をピックアップ、空間魔性で上物と資材を収納。
再び転移魔法で、自宅の城まで一気に運ぶという段取りとなっている。
ザガズでの段取りが済み、ダンとスオメタルが戻ると……
スパルトイリーダー以下、留守番部隊は整列して、ふたりを出迎えた。
亡霊少女のタバサも珍しく「寂しかった」と殊勝に甘えて来る。
ダンが行使する魔法障壁の威力は絶大であり、自宅への侵入者は皆無であった。
「留守中は何も異常なし」とスパルトイリーダーから報告を受けたダンは、全員へ本日の業務終了を言い渡した。
その後、ダンとスオメタルは、ふたりで軽く夕食を摂った。
やがて夜も更けて来て……
スパルトイ達は休息の為に地中へ戻り、タバサも、あてがわれた部屋に引っ込んでいた。
しかしダンとスオメタルは、まだまだ休まず話し込んでいた。
今後の打合せをしていたのである。
共同生活を始めるにあたり、いろいろと決めなければならない事が数多あったからだ。
衣食住を中心に何が必要なのか、何をやるべきなのか、徹底的に。
腕輪へ備蓄した食料、資財の在庫確認、新規追加の相談のやりとりは勿論、
ダンがまめに作った『用途不明な小道具』がずらりと並べられ……
スオメタルからダンへ、ガンガン問い合わせの質問が飛ぶ。
訝し気な表情のスオメタルが、並んだうちのひとつ、古びた壺を指す。
「マスター、一体これは何でしょう? 汚く古い大きな壺に布やら、木炭やら、砂利が入ってございますが、下部には蛇口もついております。廃品寄せ集めのゴミか、ガラクタではないのでございますか?」
「失礼な! 上から水を入れると下から綺麗な水が出て来る……城の内部にも設置してあるが、水のろ過装置だよ」
「ええっ? 水のろ過って……この壺の上から水を注ぐと、下から綺麗な水が出るのでございますか」
驚くスオメタルを見て、ダンは得意げに胸を張った。
「ああ、綺麗な水になる。ゴミなどを取り除き……綺麗な水を飲む為に使うんだ。更に、ろ過した水を煮沸すればリスクは軽減される。念の為、俺は必ず煮沸するし、毒物が含まれた水には無効だな……」
「成る程! それは面白いでございます。見かけによらない便利グッズでございます」
「ははは、分かったかい? ジャンク品もこうして有効活用すれば、見事に復活する。作るのは楽しいし、役に立つんだぞ」
「ではマスター、この、ふたまた棒の先にシャツを取り付けたものは? これは確実にゴミでございましょう?」
拾って来たふたまたの枝に散々着倒したシャツを結び付けた……
スオメタルから見たら、『完全な廃棄物』がそこにはあった。
「いやいや違う! それは散々着古したシャツを有効的に2次利用した魚をすくう網の代用品だ」
「ふ~ん、見た目は黄ばんで汚いシャツが付いたゴミなのに面白いでございます! ……このように意外なものが網の代わりになるとは」
「だろ! 俺は無駄なモノは拾って……いや、回収して来ないって!」
「駄目です、大好きなマスターでも、その件だけは信用出来ないし、容認出来ません。私はきちんと! びしっと! 整理整頓されていないと、気持ち悪くなるのでございます」
「気持ち悪くなるのでございますって……スオメタルの身体は……」
思わずダンが口を滑らせると、スオメタルはキッと睨む。
言いかけとはいえ、失言だったようだ。
「マスター。肉体的にではなく! 精神的にでございます! それより! 以前、マスターの収納の腕輪の棚卸しをした際、半分以上捨てたじゃないですか? 99%ゴミばっかりでございましたよっ!」
速射砲のように繰り出されるスオメタルの言葉。
ダンは……防戦一方である。
「い、いや、あれは、まだ使えるし。スオメタルが強引というか、だから無理やり捨てたというか……」
「私が何か?」
「い、いや! 何でもない!」
これ以上口答えすれば、スオメタルの怒りが沸騰してしまいそうだ。
ダンは一旦、矛を収める事にした。
こんなふたりのやりとりは……
母親と子供。
もしくは、しっかり者の姉とだらしない弟のようだ。
例えば子供が、とても大事にしている宝物。
対して母親には、全く不要で廃棄すべきガラクタに見える。
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