婚約破棄され、辺境へ追放された最強勇者は無双全開!銀髪戦姫と新たな国を創る!気が付いたら魔王と呼ばれていた?

東導 号

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第19話「リフォーム依頼」

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 ダンとスオメタルはタバサとスパルトイ達へ留守を頼むと……
 更に城の周囲に魔法障壁もセットして、転移魔法で一気に跳んだ。
 
 しかし、行き先はリオン王国王都アンペラール……ではない。
 
 全く違う場所である。

 ふたりの行き先は、魔境と国境を接する、
 ドワーフことドヴェルグ族の巨大な地下国家、イングズの王都ザガズである。
 
 このザガズに、城のリフォーム工事を依頼するドヴェルグの職人ラッセ・ムルサを訪ねるのだ。
 無論、ザガズの正門近くまで、跳んだのはいうまでもない。

 何故、ダンはドヴェルグ族と親しいのか?
 
 実は以前、ひょんな事から、ダンとスオメタルは……
 デスヘルガイザー麾下の魔王軍と交戦中であったラッセ達、ドヴェルグの絶体絶命の窮地を救ったのである。

 一族滅亡の危機を防いでくれた勇者ダンを、ドヴェルグ達は称え、敬った。
 それ以来、何度か遊びに行き、とても懇意となたのである。 
 
 通常なら厳重なチェックのある入国も、馴染みであるダンの顔を見た門番がすぐに通してくれた。
 
 あるじのラッセは自身の店で、部下である他の大勢の職人達と共に仕事をしていた。
 店といっても人間が営む商会に近い規模の超大型店である。
 
 ラッセは職人ギルドの長も兼任していて、年齢は200歳と少し。
 背は約160cmで体重は100㎏を超えており、筋骨隆々。
 硬い茶色の短髪で、顔の半分が同色の髭。
 豪放磊落ごうほうらいらくな性格で大の酒好きでもある。
 ここでは念話で話をする必要がない。
 肉声での会話である。
 
「いよ~っ、ダン、スオメタルちゃん、久しぶりだな! 元気か!」

「こんちわ! ああ、元気だよ」
「万全且つ完璧でございます!」

「おお、それは良かった! で、わざわざこのザガズまで来るとは、今日は何の用だ?」

 ラッセに聞かれ、スオメタルは目くばせをした。
 ダンから先に伝えて貰いたいらしい。

「オルヴォ、実は俺、この子と、スオメタルと一緒に住むんだ」
「はいっ! スオメタルは大好きなマスターと一緒に住み、ゆくゆくは結婚するでございます!」

「おお、そうか……頑張れよ!」

 オルヴォは……『スオメタルの秘密』を知っていた。
 彼女の真の身体がこの世界のどこかに隠されている事も。

 もしもスオメタルの真の身体が発見された時、自分の命が尽きていたら、
 どうか力になってあげて欲しい。
 
 スオメタルには内緒で……
 ダンは頭を下げて頼み込み、オルヴォへ多額の現金を渡してあったのだ。

 そんな経緯を知っているから……
 ダンがスオメタルと結婚すると聞き、オルヴォはついまぶたの奥が熱くなる。

 先述したが、ドヴェルグ族は豪放磊落、酒好き、そして涙もろく情に厚いという。
 このラッセは『典型的なドヴェルグ』なのである。

「そ、それで、ダンよ! 具体的な頼みを言ってみな! 俺が超特大サービスしてやらあ!」

「おお、それは助かる! じゃあラッセのお言葉に甘えよう」

「わははは! どんと来~い!」

「ラッセ、実は褒美に貰った古い城がオンボロなんだ。リフォームを考えているんだよ」

「成る程! お安い御用だ。お前の転移魔法で俺と配下の職人全員、現場へ連れて行ってくれや!」

 現場へ……
 と気安く言うラッセの笑顔を見て、ダンは歯切れが悪くなる。

「え、ええっと、悪いが……場所は、ほぼ魔境なんだ」

「ほう! ほぼ魔境ねぇ」

「ああ、人間やドヴェルグを喰らう魔物が、うじゃうじゃわんさか居る」

 ダンは、はっきりと事実を告げた。
 現在住んでいる土地は危険な場所なのだと。

 しかしラッセの笑顔は全く変わらなかった。

「いやいや、ダン! 現場が危険でも、お前とスオメタルちゃんが守ってくれるんだろ? 格安で受けてやるぜ」

「りょ、了解! ありがとう! ラッセ達を守るくらいお安い御用だ。あと、ついでに増築もやっておきたい。この店では建売仕様のいろいろな上物うわものを売りだしていたよな?」

 ダンの言う上物うわものとは、土地の上にある建物等を指す。
 ラッセは笑顔で答える。

「おお、バンバン売ってるぞ!」

「それらをぜひ買いたい! 高品質のオーダー品じゃなく、既製品、いや展示用のサンプル品で良いんだ。まとめて買うから安くしてくれないか?」

「了解だ! お前は転移魔法や収納魔法を使えるから、本日速攻お持ち帰りだよな?」

「速攻お持ち帰りって……時と場合によっては、ちょっと誤解を招くコメントだと思うぞ」

「ははははは、考え過ぎだって! サンプル品の現物お持ち帰りは運送や解体、組み立て費用諸々が不要だ。その分、安くなるぜ! で、予算は?」

「ああ、ひっくるめて金貨3,000枚だ!」

 金貨3,000枚……
 普通に考えれば結構な金額だが、ドヴェルグの作る建物の価値を考えれば、
 充分とはいえない。
 
 しかしラッセは分厚い胸を「どん!」と叩いた。

「おっと! 魔王を倒した勇者なのに、景気が悪いのか? 思ったより持ち合わせが少ないじゃね~か! でも任せろ、ダン! 悪いようにはしない!」

「いやあ、低予算で申しわけない! 助かる! 欲しいのは厨房設備付きの店舗、大型の宿舎、同じく倉庫、家畜小屋、中型の馬用厩舎、宿泊室&応接室付きの会議棟、そして牢獄だ」 

「おお、そんなに要るのか? それと店舗って! お前、何か売るのか?」

「まあ、……いろいろ将来を考えて」

 ダンはそう言うと、ちらとスオメタルを見た。
 彼女は無言で優しく微笑んでいる。

 大丈夫……突っ込みはない。
 ダンはホッとした。
 実は、いずれジャンク屋を再開しようと考えていたのである。
 厨房設備付きにしたのはその方が使い勝手が良いと考えたからだ。

 一方、ラッセは「うんうん」と頷いている。

「ふむ! 会議棟とか、牢獄とか、えらく渋いのも入れてるじゃねぇか! よっし、トータルぴったし金貨3,000枚でオッケーだ。リフォームは高品質の材料を使う」

「あ、ありがとう!」

「それと増築だがよ。大は少を兼ねるっていうから上物を全部大型にしといてやる! 但し、全部展示用のサンプル品だぞ!」

「大丈夫! 俺も自分で手直しする! 本当に助かるよ! ありがとう!!」

「良いって事よ! 我等ドヴェルグはお前に一族存亡の大ピンチを救って貰った! その恩は一生忘れねぇ! そうだ! 例のみやげもたっぷり用意してある! 来たら渡そうと思ってた! 持ってってくれや! がっははははは!」 

 豪快に笑いながら……
 見えないように涙をぬぐったラッセは、
 口の中で「頑張れよ」と呟いていたのである。
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