姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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43. 王子と姫は幸せになりましたとさ

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 人が賑わう空港で一際うるさい団体が…。

「光~!いつでも帰ってきて良いからな。お兄ちゃん達はいつでも大歓迎だからな~!!」

 双子の兄達は号泣しながら見送ってくれている。ここに来るまでも大変だったけど…お兄ちゃん達って人目とか気にならないのかな?

 本当に見た目が良いだけに目立ってるよ。

「そうはなりませんから安心してください」

 姫野が真面目にお兄ちゃん達に返答した。

「お前には言ってない」

「そうだ!光を泣かせたらどうなるかわかってるだろうな」

 さっきまで号泣していたのが嘘のようにお兄ちゃん達は姫野にからんでいる。

「ほら、あんた達いい加減にしなさいよ!」

 一緒に見送りに来てくれている私の母がお兄ちゃん達を叱り飛ばした。

「もう、ごめんなさいね~。うちのバカ双子が妹離れ出来てなくて~」

 兄達も母には何も言えず大人しくなりました。さすがだね。母強し!

「いえいえ、私の息子も無口で何を考えているのかわからないところがありますからね。心配になるのわかりますよ」

 …姫野母も言いますね。

「か、母さん!?」

「光ちゃん、うちの優を見捨てないでやってね。無口で意気地無しで鈍感な男だけど、光ちゃんに一途なのは確かなのよ」

「散々な言い方だな…」

 姫野はお母さんの言葉を聞いて落ち込んでいる様子です。

「お母さん私、優さんを見捨てたりしませんから安心してください」

「光…」

 姫野が私に触れようと手を伸ばしたら、その手を兄達が払いのけて私と姫野の間に入り込んできました。

「「俺達の目の前では光に触れさせないからな」」

 結婚してもダメなんだね。もし私に子供が出来たらどうなるんだろうかと考えてしまう。

「光!?どうした?顔が赤いじゃないか!熱がでたのか?帰ろう!今すぐ帰ろう!」

 兄達が赤くなった私の顔を見てまた騒ぎ始めた。これは熱ではなくて、色々と想像して赤くなっただけなんですけど…そんなに騒がないで!

「おっ、光そろそろ時間じゃないか」

 そう話ながらお父さんがお兄ちゃん達を捕まえてくれた。

「親父離せ!」

「そうだ、離せよ!」

 お父さんはお兄ちゃん達よりも体格が良くて力が強いから逃げ出そうとしても逃げ出せないみたい。

「お父さん、ありがとう。行ってきます」

「元気でな!」

「光!お兄ちゃん達を置いていくな~!」

「そうだぞ!待ってくれ~!」

 まだ、諦めずにじたばたとしている兄達を呆れ顔で見ていた綾姉が私の耳元で囁いた。

「鞄の中にお薦めの新婚さんセットを入れておいたから使ってね」

 新婚さんセット?…それは何でしょうか?

「元気でね!」

 綾姉に肩をバシバシと叩かれて気合いを入れられた。

「みんな…行ってきます!」

 手だけふって先に搭乗口の方に歩いていた姫野を追いかける。

「姫野はみんなに挨拶をしなくて良かったの?」

 姫野が私の事をチラリと見てため息をついた。

「お前も姫野だからな…」

「あっ、そうだった」

 出発前に入籍を済ませたから私も姫野光だった!

 不服そうな姫野はもしかして名前で呼んで欲しいのかな?

「え…と、光は挨拶済んだの?」

「そんなのしなくてもどうせすぐに電話かけてくるか、ネット回線使うかしてくるからいらないだろ…」

 そっか…そう言えばそうかも。

「まあ…邪魔されない環境に行けるのに暫くは連絡しないけどな…」

「ん?何か言った」

「別に何も言ってない」

 姫野が一人で何かを言っているけど声が小さすぎて何を言っているのか聞こえない。ニヤニヤとしている顔が気になるんだよね。何を言ってるんだろう。

「さっ、行くぞ」

 姫野と共に飛行機に乗り込む。

 一年前の私は姫野と結婚して海外に行くことになるなんて考えたこともなかった。

 大好きなバレーを辞めて苦しんで…やっと新しい夢を見つけることが出来て幸せだな~と思っていたら、幼馴染みだと思っていた姫野と偽物の婚約することになって…それが本当の婚約者になったと思ったら結婚して海外に行くことになるなんて…うん、想像できなくて当たり前だよ。
 
 これからもきっと想像できない事が沢山起きるんだろうな…。

「さっきからボーとしてるけど、どうした?」

 ボーとしてるって…言い方考えようよ。考え事してるの?とか聞き方ね。でも、姫野だから仕方ないかな…。

 長い付き合いで姫野が話すのが得意ではないことを知っている。最近の姫野は少し違うけど…。

 私と二人の時は甘い言葉も口にするようになってきている。別人じゃないのかな?と思うくらい。

「ほら、またボーとしてる」

 姫野が私の頬を指でつついてくる。

「ボーとしてるのは考え事をしているからだよ」

「誰の事を考えてたんだよ…」

 ムッとした表情になる姫野。最近わかったことのもう一つはこれ。意外と嫉妬深いということ。

「誰って…姫…じゃなくて、優…とのこれまでのことを考えてた」

 ここでまた姫野って口にしたら拗ねそうだから慌てて言い直した。

「そうなんだ…」

 ムッとしていた顔が笑顔に変化する。子供みたいにわかりやすいなと最近思っていることは本人には内緒です。

「昔は…光のこと好きだったのに素っ気ない態度をしてたんだよな。反省してる。だから今からはその頃から溜めていた愛情を出していくことに決めたんだ!」

 え!?溜めていた愛情とは!?

 今でも赤面ものなんですが…まだあれ以上ですか…。

「あっ、ほらなんだった?アイツが出した本のタイトルにあった…」

「アイツって…柚菜ちゃんのこと?」

「そう、え~と…思い出した!溺愛だ!溺れるほどの愛情って良いよな~と思たんだ。だからこれから実行しようと思っているんだ」

 目を輝かせて言うことなのかな?

「…そうなんだ」

 そう言えば柚菜ちゃんが出した本の中に"姫は王子を溺愛したい"ってタイトルの本があったのを思い出した。たしかあの本は私と姫野をモデルに書いた本だって言っていたやつだ…。

「ヘタレの姫野に変わり、私が王子を本の中で幸せにする!悔しがれ姫野!!」って高笑いしながら書いてたのを見たんだよね…。

 まさかその本を姫野が見てたとは…。

「フフッ…」

「何を笑ってる?」

「いや、本当に何がどうなるかわからないんだな~って思って」

 クスクスと笑っている私をジーと見ていると思ったら姫野の顔が急に近づいてきた。

 チュッ!

「へ?」

 姫野が私の頬にキスをした。驚いて姫野を見ると悪びれた様子もない。

「あんまりにも可愛く笑うから我慢できなかった。これからもよろしくね奥さん」

 満面の笑みを見せている。私はまた真っ赤に染まった。

 こんな調子で姫野に振り回されながら過ごすのも悪くないかもね。

「よろしくね旦那様」

 お返しに呼び返すと今度は姫野が真っ赤になった。

「…覚悟しといて」

 そう言うと私の手を恋人繋ぎにして自分の方に引き寄せた。

 たぶん、溺愛をするから覚悟しとけってことかな?

「…覚悟しとくね」

 二人で見つめあって笑ってしまった。

 ずっとこんな幸せが続きます様にと願いながら…優と繋いだ手に優しく力を込めた。




 本編はこの話で最終回です。

 最後まで読んでくださった皆様ありがとうございました。

 お気に入り登録してくださった皆様、感謝しています。

 またお気に入り登録数が100を越えたら続編か柚菜夫婦の話でも書こうかなと思っていますので、宜しければ登録をお願いします。

 本当にありがとうございました😊

 




 
 

 





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