姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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41. 王子は大人になりました

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 週末、姫野の自宅に行くことになった。

 姫野が独り暮らしをしてから始めて行くので緊張しています。話をしないといけないから緊張してるというのもあるし、初彼の自宅訪問ということでも緊張してます。

「お邪魔します」

「どうぞ…」

 玄関の扉を開けると長い廊下があってトイレと浴室、それから寝室の扉がありました。そこを通り抜けるとリビングダイニングキッチンという作りになっています。

 広い…一人には広すぎない?

「凄い広い…よね」

 たぶん20畳以上ありそうなんだけど…。家賃が気になり始めました。

「そうかな?オートロックの安全対策がキチンとした家を探したら近くではここしかなかったんだ」

 なるほど…。確かにセキュリティーはしっかりしてたなとここに入る時を思い出しました。

「そこ座ってて…。お茶いれるけど、何が良い?」

 リビングに置かれている黒いレザーのソファーに座る。

「姫野と同じので良いよ」

「…じゃあ、コーヒーだけど良い?」

「うん」

 何気ないやり取りをしながらも部屋の中をキョロキョロと見回してしまうのは仕方ないよね。

 ソファーの前には大きなテレビが置いてあって、その横にはこれまた大きな観葉植物が置いてあります。インテリア雑誌とかでみるような部屋なんですけど~。ちょっとお洒落すぎませんか?と心のなかで呟き中です。

 私の部屋とは大違いすぎる!

「そんなキョロキョロしてもたいして変わった物を置いて無いぞ」

 コーヒーを両手に持ってきた姫野が少し笑いながらソファーに座る私のところまでやってきました。

「はい、コーヒー。ミルクと砂糖はそこにあるからいるならどうぞ」

 ソファーの前にあるお洒落なテーブルの上に木製の入れ物があってその蓋を開けると砂糖とミルクがありました。

 もう一度言います…お洒落すぎない?

「なんか…凄いお洒落なお部屋だね」

「そうか?ほとんど姉貴の趣味だけどな…。俺も気に入ってる」

 なるほど!あや姉が選んだならわかる!

 どうりで昔の姫野の印象と違うよねって思うはずだよ。私はてっきり昔の彼女の影響かと…。

「あっ、ところでさ母さんから聞いたんだけど俺の実家にイタリア語を習いに行くのか?」

 不思議そうに言う姫野。今から理由を話そうと思っていたんですよ。

「そうなんだよ。あのね…よく考えたんだけどね…やっぱり私も姫野と一緒にイタリアに行こうかなと思ってるんだ」

 コーヒーを飲んでいた姫野がそのカップをテーブルに置いて私の方に身体を向けた。

「無理して俺に合わせなくて良いんだぞ」

「ううん、無理してないよ。あのね、イタリアで靴の勉強をし直そうと思ったんだよ」

「前はそんなこと言ってなかったよな?」

 そうだよね。会社を辞めたくないって言ってたのに急にこんなことを言い出したらおかしいと思うよね。

「あのね、この前柚菜ちゃんと話をしていて気がついたの。これが一番良いんじゃないかと思って…。こうすれば遠距離恋愛せずに結婚して近くで姫野を支えられるでしょ?」

 姫野を見てちゃんと最後まで言うことができた。

 言い終わると姫野が嬉しそうな顔をして私を抱きしめた。

「ありがとう…。離れなくて良いんだな…嬉しい」

「私も離れたくなかったし…」

 姫野の嬉しそうな瞳が近づいてくる。

 フワリとコーヒーの薫りがして、唇が重なった。いつものように重なるだけではない大人にキスに恥ずかしさが込み上げる。

 鼻で息をするタイミングが難しい。

 鼻息荒くなってないよね!?

 姫野がゆっくりと離れていく。私は恥ずかしくて目線が合わせられなかったけど姫野の手は私の顔にあてられたまま、耳、髪の毛と触りながら移動している。

 少しくすぐったい…。

 この静かで甘い空気にドキドキが加速しています。心臓のためには何か話題を変えないと…。

「そういえば…柚菜ちゃんも結婚するんだよ。しかも授かり婚なんだって」

 私の髪を触っていた姫野の手がピクリと動いたのがわかった。

「授かり婚…。アイツに負けたのか…」

 負けた?何に?たまに姫野はわからないことを口走るよね。

「そうなんだな…。光も子供は早くほしいか?」

 髪の毛を触っていた姫野の手が耳から首の辺りに移動した。

「う~ん、子供は多い方が楽しそうだけど今はまだいいかな。もう少し、仕事が落ち着いたら欲しいかもしれない」

 子育てしながら勉強は少しキツいよね。

「そうか…。俺も子供は沢山ほしいな…」

 姫野の手が私の唇を触り始めた。さっきキスしたことを思い出してまた黙ってしまった。

「光は何人欲しい?」

 唇を触りながら聞くのを止めて欲しい。

「…3人くらいかな」

 私が3人だから、それくらいは欲しいな。

「僕はね…もっと欲しいな。光に似た女の子を沢山。でもそうなったら虫を寄せつかないようにするのが大変かも…」

 まだできてもいない子供の事を想像している姫野に驚く。

「プッ…できてもないのに早すぎだよ」

「それなら今から作る…」

「へ?」

 姫野が急に私をお姫様抱っこして立ち上がり、今きた廊下に向かって歩きだした。

 寝室のドアを開けてベッドの上に優しく下ろされた。

「良いよね…?」

 有無を言わさない姫野の微笑み。

「え…?」

 結局、私が姫野の家から出たのは次の日の夜でした。

 
 










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