姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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38. 王子の心拍数がマックスらしい

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 唇から温かさが無くなり姫野の顔が遠ざかって行きます。なぜ、寂しく感じるのかな…。

 ふと、唇に手をあてて先ほどの事を思い出してしまい顔が赤面してしまいます。

 姫野はまた私の額にキスをすると自分の座っていた方に戻りました。

 コーヒーを飲み終えた後、カフェを出て予定通りに買い物に行ったのですがその間、姫野が私と手を繋いだまま離そうとしなかったのには驚きました。

 しかも俗に言う恋人繋ぎをしてたんです!

 恋愛初心者の私には刺激が強すぎるし、恥ずかしいし…という感じでしたが姫野は嬉しそうに笑顔を見せるばかりで、手を離してほしいと言っても聞こえないふりをされて離してくれませんでした。

 何だか姫野の意外な一面を見た気がします。

 昔の姫野は簡単には笑顔を見せなかったという記憶しかないんですけど…。

 こんな甘々な雰囲気には慣れそうにない。

 約束していた場所まで車で来ていたらしく、買い物も終わり私の家まで送ってくれている姫野。

「もしかして…婚約を後悔してる?」

 信号待ちの車の中で私の手に触れてきます。

「それはないよ…。ただこういうの慣れてないから…恥ずかしいというか…」

 誤解されたくないから素直に思っていたことを口にしました。

「それなら沢山慣らさないとね。慣れると恥ずかしいのも薄れるらしいよ」

 そう言い終わる前に姫野が私の手を持ち上げてその手に唇をあてています。

「なっ!」

 信号機が赤から青に変わり車を発信させる時に手は離してくれましたが目線はチラリとこちらを向いたりしています。

「まっすぐ前を見て安全運転だよ!」

 私は姫野の頬に手をやり顔を前に向けました。だって今の私の顔はまた真っ赤になっていて恥ずかしいから見られたくありません。

 慣れ…って、こんな感じが続くの?

 今まで知っているつもりだった姫野が別人に見えてきました。

「俺んちは母さんがハーフだから、このくらいのスキンシップは普通なんだよ。他の人にすると誤解される可能性があるからしないけど、もう家族になるんだし解禁することにした」

 解禁って…そういうものでもないと思うんだけど?

 でも、思い出したよ。今まですっかり忘れていました!

 姫野のお母さんはイタリア人と日本人のハーフの美人さんだけどスキンシップ激しめだった記憶が甦ってきましたよ。そういえば、あや姉もスキンシップ確かに多いな…。それはイタリア人の血の成せる技だったのかな。

 でも、姫野はクォーターになるから血は4分の1しかイタリアの血は流れていないはずだけど元が濃いのかな…。

「あれ…家に向かってるんじゃないの?」

 車から見える景色がいつもと違うことに今更気がついた。

「やっと気がついたか。まだ時間早いし、家に帰るのはもったいないかな~と思ったし、光と一緒にいたいし…だから勝手にドライブしてる」

 いつの間にそんなことになったのか!?しかもさらっと名前呼びしてるし…。

 姫野は何事も無かったかのように前を向いて運転している。

 照れて顔を赤くしてるのは私だけかと思うと少し悔しい。

「ダメだったか?」

 また卑怯な聞き方してるし、なんなのその待てをしている時のワンちゃん様な目は!

「ダメじゃない…けど」

「良かった!」

 ブンブンと振り切っている尻尾が見える様な気がします。クールな姫様はどこに消えたのかな。

「でも…どこに向かってるの?」

「ヒントは俺達の思い手の場所」

 思い出の場所?

 思い出と言われてもどんな思い出?

 小学生からの付き合いだから思い出ありすぎなんだよね。

 どこだろう?

 小学校?体育館?撮影スタジオ?

 考えてみてもピンとこない。

「到着したよ」

 考えている間に到着してしまった。…けど、予想していたどの場所でも無かった。

「ここって…」

 姫野が先に車から降りて助手席のドアを開けてくれた。

「懐かしいだろ」

 車から降りて景色を見つめる。

「ここって…小学生の時のバレーの合宿で来た海だよね」

 到着したのは小学生の時のバレーチームの合宿で訪れたことのある海岸だった。ちょうど夕日が沈みかけていて海がオレンジ色に染まっている。

 車を降りて二人で砂浜みで降りてきた。並んで海岸の砂浜に座る。

「俺さ…ここで王子を好きになったんだ…」

「え?」

 ここで私を好きになった?

 あの時…何かあったかな。

 あの時は…確かこの砂浜を何回も走らされてみんなが倒れてたんだよね。

 姫野も疲れて砂浜に倒れてて…。

「ここで倒れていた俺に光が寄ってきて「もう少しだよ。一緒に行こう」って汗をキラキラ光らせながら笑顔で声をかけてくれたんだ。あの笑顔を見て俺は撃ち抜かれたんだよな…」

「撃ち抜かれたって…」

 姫野がそっと手を繋ぎ、私の方を見て首を傾けた。

 あっ…ダメだ。夕日に染まる姫野の顔と仕草にキュンキュンしすぎてます。

「一途だろ…」

 ………心拍数マックスかも。

 そんな頃から私の事を思ってくれていたのに驚きなのと、今の姫野の笑顔にやられています。

 固まっている私をよそに姫野が私をフワリと私を包み込むように抱きしめた。











 



 



 

 



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