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36. 姫は無言になる
しおりを挟むモヤモヤとしているうちに週末がやって来ました。今日は姫野と会う約束じゃなくて…デートの予定です。
嬉しいはずなんですけど、姫野に今後の話をどう話すのか悩んでいるので、いまいち楽しめない自分がいるんです。
姫野は一体どう考えているんだろうな…。
今日は姫野が買いたいものがあるというのでショッピングの予定なんです。それもよく考えたら海外に行くための準備なのかもしれないですよね。
あ~、ダメです。モヤモヤ増幅中です!
悩んでいても時間は過ぎて…姫野が待ち合わせの場所にやって来ました。
さすがに会ってすぐに言うのは違うよね…。
「ごめん、待たせた?」
「ううん。私もさっき着いたとこだよ」
なんて…実は20分も前に到着していたんですけどね。家にいても落ち着かなかったから早く来てしまったんです。
姫野がジーと私を見た後、左の頬に手をあてました。
「なっ!何?」
驚いて声を出してしまいましたが、姫野は冷静です。
「嘘ついただろ。頬が冷たいぞ。買い物より先に温かいものでも飲みに行こう」
「…うん」
長い付き合いだからか嘘がすぐにバレてしまいました。でも、気がついてくれたのは嬉しいなと思ってしまうのは好きな人だから…なのかな。
でも、これって話すチャンスかもしれない!
カフェとかならゆっくり話ができるよね。
キョロキョロと回りを見ながら、おそらくカフェを探している姫野。お互いに身長が高いから何かを探すときには便利なんだよね。まあ、背が高いから目立つっていうのもついてくるけど。
「ねぇ、あれってバレーの姫野選手じゃない。隣の人も見たことあるよね?誰だったかな…」
近くにいた女性二人組が私達の事を話しているのが聞こえてきた。このままだと静かに話し合いは難しいかもしれない。
カフェでも個室があるカフェとかにしないと話が出来ないかも!と思いすぐに携帯で検索した。
「姫野、ここはどうかな?」
近くのカフェに個室があったのでそこの写真を見せた。
「おっ、良さそうだな。じゃあ…こっちか」
決定!これで少しは落ち着けそう。
検索したカフェにはすぐに到着した。
レトロな感じの落ち着いたカフェで、扉はないけど座席が区切られていて半個室みたいな感じです。座席の入り口にはカーテンがあって締めることもできるみたいなので良いかも。
席に座りすぐにホットコーヒーを2つ注文した。
「ごめんな、待たせたみたいで…」
姫野が顔の前で手を合わせて謝ってくれている。
「違うよ。私が早く来すぎていただけだから謝らないで良いよ」
「そうなのか…」
「うん」
さあ、ここからだよね。どうやって話をきりだそう。
でもいきなり、「海外に行くの?」って聞くのも違うよね。どうしようかな…。
「あっ、そういえば…この前二木が姫野の会社に行ったんだろ?」
「うん、来たよ。姫野の靴を見て来てくれたんだよ。宣伝ありがとう」
「いやいや、姫野が作った靴が良いからだよ。俺は別に宣伝なんかしてないよ」
…この話の流れで言えそうかもしれない。
「二木さんが来た時にね…言われたんだけど…。姫野と一緒に海外に行くのか?って…」
い、言えた!この言い方ならそんなに重くないよね。結婚とか遠距離恋愛とかの言葉を出すと話が重くなりそうだから慎重に言葉を選んでみたんだけど…どうかな。
「…アイツ、そんなことを言ったのか」
それだけ言うも姫野は黙って考え込んでしまった。…え~と、さっきの言い方でも重かったのかな?どうしよう!
「あのね姫野…。姫野が海外のチームに行くのは決定したの?」
まずはこれから聞くべきだったのかな。
「…そうなると思う。まだ契約書にサインはしてないんだけどな」
やっぱり決定なんだ。そうか…。
「良かったね。おめでとう…」
世界的に活躍できるバレー選手が夢だって雑誌の取材で答えていたのを覚えている。その夢が叶うのだからお祝いを言わないとダメ…だよね。たとえ二人が遠くに離れることになっても…。
「…姫野は俺と離れるのは寂しくないのか?」
姫野が前のめりの姿勢で顔を近づけて聞いてくる。その聞き方は卑怯だと思う。寂しいけど寂しいから行かないで欲しいなんて言う権利は私にはないでしょ?
「その聞き方は…ズルいと思う。姫野はどうなのかを先に聞きたい…です」
「そうか…そうだよな、ごめん。俺はせっかく付き合えるようになれて嬉しいのに、離れてしまうのは正直言って…寂しい」
良かった…姫野も私と同じ気持ちだった。
「だから…」
あれ…続きがあるの?と思ったけどそこから先がなかなか出てこない。
暫く待ってみるがまだ出てこない。急かしても良いのかな。
「…だからどうしたいの?」
「だから…」
また姫野が無言になった。あまりせかすのも悪いし…一体何が言いたいのかな?
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