姫は王子を溺愛したい

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28. 王子は、ミステリーデートに苦悩する

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 いよいよ姫野とのデート当日になりました。

 いつもより2時間も早起きして慣れないメイクや髪の毛をセットするということをやってみました。

 これができるのも綾姉のおかげなんだけどね。実は指導動画が送られてきていて、私はその通りに真似するだけなんです。

 動画まで作成してくれた綾姉には感謝。

 ただ、動画の中の綾姉と同じようにはできないので時間がかかります。これも今までにこんな事をやってきてないせいなんだけど…。

 昔は髪の毛をセットしている同級生とか後輩を見つけると「今日はいつもと違うね。可愛い!」なんて簡単に言っていたけど、こんな努力が必要だったなんて知らなかったよ。もっと褒めるべきだったと反省してます。

「う~ん、何とかできた…かな?」

 全身が見れる鏡の前でくるりと回転して自分をチェックしてみた。

 たぶん…言われた通りにはできたと思う。

 姫野はどんな反応をするんだろうか…。不安な様な早く見たいような…このドキドキは何のドキドキなんだろう。

 最近、自分の事なのに自分の気持ちがよくわからない事が多い事に気がつきました。

 年齢的には大人なはずの自分の中身は全然大人になりきれていないと痛感してるんです。

 特に恋愛関係…。

 学生時代はバレーに夢中で他に興味がなかったし、社会人になったら覚える事が沢山ありすぎて家と会社の往復だけになっていた。

 バレー以外の趣味もないしな…。

 長い人生このままで良いのかな?とこの前、柚菜ちゃんに言ったら「年寄り臭いよ」と言われてしまいました。

 柚菜ちゃんは好きなことが仕事になっていて、それを今でも続けているし、他にも推し活?とかもやっているらしい。何だかんだで毎日忙しいのだと本人は言っていた。

 しかも柚菜ちゃんには実はラブラブな彼氏がいたりするんです。まあ、彼氏というか、彼女というか…。性別は男性なんだけど話し方や見た目は女性という人なんです。もう付き合って5年くらいになるのかな?

 羨ましいよね。

 おっと、いろいろと考えている間に姫野から連絡が来ました。もうすぐ到着するそうです。

 急いで準備していた飲み物とかをカバンに詰めて家を出ました。

 待ち合わせは近くの空き地です。到着すると、もう姫野が車で待ってくれていました。

 新車かな?真新しい感じのする黒色の車です。

「お待たせ。車買ったの?」

 車の窓から顔を出していた姫野に声をかける。

「ああ。使うかなと思って買ったんだ」

「へえ~。カッコいい車だね」

「まあな…」

 照れながらも車から降りてきた姫野が助手席のドアを開けてくれた。これって…ドラマとかで見るやつ!?外国の人がレディーファーストとか言ってドアを開けて入れてくれる、あれ!?

 驚いて姫野を見たら「何?」と言われてしまった。姫野にとっては当たり前ということなのかな?

「ありがとう」

 姫野はこうやって女の子達を乗せていたのか…。そりゃそうだよね…姫野はモテるもんね。

 楽しかった気持ちが少し落ち込む。

 何で落ち込んでるんだろ私…。

 助手席のドアを閉めて運転席に乗り込んできた姫野がチラチラと私を見ている事に気がついた。

 何だろうか?

「どうしたの?」

 姫野が鼻の頭を指でさすりながら言いにくそうに話し出した。

「…いや、いつもと雰囲気が違うな…と思って。…その…似合ってて可愛いな」

 一気に私の顔が真っ赤になったのが自分でもわかった。

 こんなにストレートに褒められて嬉しいけど照れるよ!

「ありがとう…」

 褒めてくれた姫野も照れているのか顔を私から背けていて見れない。

「…出発しようか」

 何とも言えない雰囲気のまま車は出発した。

「…そうだ!今日はどこに行くのか聞いて良い?」

 静かな車内の雰囲気にたえられず会話を探そうとして気がつきました。今日、どこに行くのか聞きたいと思っていたことを。

「まあ…楽しみにしといてくれ」

「え?内緒なの」

 ニヤリと笑う姫野。気になるけど教えてもらえないなら仕方ない。

「わかった。じゃあ、楽しみにしてる」

 自信ありげな姫野。本当にどこに連れていってくれるつもりなんだろう?

 最近話をした時にどこかに行きたいとか話をしたかな?

 思いつかないな。

「ねえ、ヒントとかもなし?」

 気になって仕方がないので聞いてみた。

「そんなに気になるのか?…じゃあヒントをやるよ」

「お願いします」

 少し考えてから姫野がヒントを出してくれた。

「学生時代に行ってみたいと言っていた所」

 学生時代に?姫野とそんな話をしたかな?

 私がわからず悩んでいると姫野が二つ目のヒントを出してくれた。

「たぶん、まだ行った事がない所…だと思う」

 行きたいと思っていたけど行けていない所?

 どこだ?

「…全然ピンときてないみたいだな」

「うん。全く思いつかない」

 私が速攻答えると姫野が声をあげて笑った。

「そうか。じゃあ、やっぱり楽しみにしとけ」

 え?結局は謎のままなの?

 その後はいくら聞いても教えてくれませんでした。

 ミステリーデート?

 



 

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