姫は王子を溺愛したい

縁 遊

文字の大きさ
上 下
27 / 43

27. 王子は女性らしくなりたい?

しおりを挟む

「もう、持てない…。休憩しようよ…」

 私の両手には沢山の紙袋がある。中身は服、カバン、靴等…。

「そう?仕方ないわね。じゃあ、休憩しましょうか」

 綾姉のお許しが出てホッとする。連絡をしたあの夜に電話がかかってきて金曜日の夜に買い物に行く事に急遽決まったのだ。

 仕事終わりにこのお店巡りはきつい。

 だけど忙しい中、私に付き合ってくれている綾姉にはお願いしたのもあってもう終わりにしない?の一言が言い出せないでいる。

 綾姉が決めたお店に入り、注文を済ませたら質問狭めが始まった。

「ねえ、デートってどこに行くの?」

「行き先は聞いてないんですけど…たぶん、決まっていないと思います」

「ふ~ん、まあアイツだからね。気がきかないか~。私がレクチャーしてるのに何故あんなのになったのか不思議なのよね」

「……」

 原因は綾姉達だと思うんだけど…。

 昔から女は怖いと姫野が口にしていたのを聞いていた。実は姫野には綾音さんだけではなくお姉さんが他に2人いる。3人のお姉さんの下に生まれた姫野はお姉さん達のおもちゃになっていた所があるみたいで…。

 雑誌の写真を撮影する時に着替えを人に手伝ってもらうとかしなくてはいけない時があったんです。

 だけど私はどうしても恥ずかしくてもじもじしていたら、あまり姫野が嫌がる素振りをしていなかったから不思議に思って聞いたんだよ、そしたら「姉さん達のきせかえ人形にされているので慣れてる。姉さん達には逆らえない」とだけ言われたんだよね。

 あの時はまだ綾姉さん達には会ったことがなかったから、そんなに怖いお姉さん達がいるんだなと思ってたんだったな。

 今は知っているからそう思わないけど。

「後は化粧品ぐらいかな?それは私がプレゼントするわ」

「え!?悪いです。私が自分で払いますよ」

「遠慮しないで。こんな時はありがとうって言ってくれれば良いのよ」

 綾姉…助かります。今日はなるべく予算内ですむように安いお店を回って探してくれたけど、それでもやはり出費は予算内にすまなかったんだよね。

「ありがとう綾姉」

「良いのよ、可愛い義理妹よ」

 綾姉が私の頭を撫でてきた。

 本当にそうなれたら嬉しいのに…。

 私には兄はいても姉はいないから羨ましいんだよね。無い物ねだりってやつなのかな。

「しかし、明日のアイツの顔を見てみたいから朝イチ覗きに行こうかな…」

「え?」

 どうして姫野の顔が気になるんだろう?

「どうして?って顔をしてるけど、今日買った服を明日着てデートするんでしょ」

 私は綾姉の質問を不思議に思いながらも頷いた。

「アイツに婚約発表の時以外でワンピースを着た姿見せたことある?」

「…無いです」

 そう言えば無いかも。制服かジャージが多かったからな。

「そうでしょ。自分のために女性らしいワンピースを着て着飾ってきてくれた彼女を見たらアイツの頬は緩むはず…。あの仏頂面の緩んだ顔を拝みたいのよ」

 自分の弟の事なのに何だか凄い言い様だけど姫野って家族にどう思われてるんだろう。

 でも、姫野は私がワンピースを着たからといって頬を緩ます?みたいなことはないと思うんだけどな。

「私がワンピースを着たくらいでは何とも思わないと思いますけど…」

 注文していたメロンソーダのアイスを美味しそうに口に入れていた綾姉が冷たかったのか目を見開いた。

「ん~、冷たい!旨い!って、そうじゃなくて王子ちゃんの認識はまだそこなんだね」

「へ?」

 メロンソーダにつけられていた長い柄のついたスプーンを私に向けて上下に動かしている。

「アイツって昔から感情が分かりにくいから仕方がないとは思うんだけど…でも王子ちゃんにだけは違うんだよ」

 私にだけは違う?

「アイツの目線の先にはいつも王子ちゃんがいて、あの面倒くさがりが王子ちゃんに負けたくないからバレーも努力してたんだし…」

「え…」

 知らなかった。姫野ってそんなに私を見てたの?

「王子ちゃんがバレーを辞めた時なんか、こいつストーカーになるんじゃないかと心配したぐらいだった…」

 そこまで言って何を思い出したのか綾姉は口を片手で塞いだ。私がバレーを辞めた時に何があったんだろう。

 でも、あの頃に姫野から連絡があったかな?記憶に無いんだけど…。忘れてるだけなのかな。

「え…と、この話しは私から聞いたと言わないでね。また本人の口から話すと思うから…本人から詳しく聞いて」

 私が詳しく聞こうとしたら綾姉に先に言われてしまった。本当は今すぐに知りたいところです。

「やだ、もうこんな時間。お店が閉まっちゃうと困るからそろそろ行こう」

 時計を見ると19時をまわっている。目指していたお店は21時で閉店だ。

「わかりました。今日は付き合っていただいたのでここは私が払いますね」

「良いの?ありがとう。じゃあ、遠慮なくごちそうになります」

 こんなやり取りをしながらお店を出て化粧品を見に行った。

 この後、閉店ギリギリまで粘って買い物をすることになるとは予想していなかったよ。

 来月からは節約しないと…。

 女性らしくするってお金がかかるんですね。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

処理中です...