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26. 王子は姫にデートに誘われた
しおりを挟む「昨日はすまなかったな。変なとこ見せた…」
会社に出社するとすぐに杉ノ原先輩が恥ずかしそうに頭を掻きながら私に話しかけてきた。
昨夜居酒屋を去った後、どうなったのか気になるが自分から聞いて良いものなのかと考えてしまった。
どうやらそれが顔に出ていたらしく…。
「あれから…やり直す事になったんだ。…というか結婚する事になった」
「え!?おめでとうございます」
よりを戻すことは想像していたけど…まさか結婚することになったなんて驚きです。昨日の夜に一体何が話し合われたんだろう。
男女の仲は本当に私には理解が難しすぎる!
「まあ、薫にお前にはきちんと謝ってほしいと言われたからな…。朝からすまんな…それだけだ」
先輩の顔が幸せそうに緩んでいる。昨日の悲惨な顔とは大違いです。
先輩、良かったですね。
「あっ、それから結婚式には来てくれと薫が言ってるんだ。招待状を送るから頼むな」
「はい」
先輩は安心した様に笑顔を見せながら片手をあげながら自分のデスクに帰っていった。
しかし、結婚式か…。親戚以外では初めてかもしれない。服って何を着ていけば良いんだろうか。親戚の時は高校生だったから制服でよかったけど、社会人になってから制服なんてないしな…。
そう言えばあの時出席していた女性は皆ドレスの様な綺麗な服を着て髪も綺麗にセットしていたな~。
…あれは、私には似合いそうにもない。
だけど綾姉なら何とかしてくれるかな?
婚約発表の時には魔法みたいに別人にしてくれたし、あの腕があるなら整形級の仕上がりになれる…はず。頼んでみようかな。
迷うな…。
結局、結婚式の日にちはまだわからないけど、頼んでおいた方が良いかもしれないと思い連絡することにしました。
前に合った時に、仕事が忙しそうだったから早めに伝えておいた方が良いと思ったのもあるんだけどね。
昼休みに連絡をしてみたものの仕事が終わるまでは返信が無かった。
やはり仕事が忙しいみたいだね。
代わりにと言ったら怒られるかもしれないけど、姫野から連絡がきていた。
"週末に予定がないなら一緒に出かけないか?"
これって…デートのお誘いになるのかな。
何だか意識し始めたら何かもが恥ずかしい様な気がする。なんて返信しよう…。
"わかった" だけだとそっけないのかな?
"嬉しい!楽しみにしてる💕" これだと姫野が驚きそうだよね。今までのメールと違いすぎる。
どう書けばちょうど良いのだろうか、悩む~!
"週末だね。予定がないから一緒に出かけられるよ。どこに行く?"
この辺りが私らしいのかな…。
こんな短い文を考えるのにいったい何分かかっているんだか…。
急いで返信ボタンを押した。
そのすぐ後に姫野から返信が来たのには驚いてしまった。
"ドライブしないか?もちろん俺が運転する"
姫野が運転するのか、珍しいな。いつもは運転手さんつきの車で送迎してもらってたよね。っていうか免許をもってたんだ。
一抹の不安を感じながらもまた待たせる訳にはいかないと思い、すぐに返信した。
"了解。安全運転でお願いします"
"当たり前だ"
フフッ…。何気ないいつものやり取りに安心する。
でも、私と姫野は偽物の婚約者なんだよね。いつかは姫野と別れないといけない。
それは姫野に好きな人が出来た時…だよね。
なんか胸の辺りがモヤモヤする。
姫野の隣にはいつも綺麗な女性が立っていた。
それは昔から見慣れていた光景だったはずなのに…。
雑誌の写真撮影をしていても、綺麗なお姉さん達が休憩の度に姫野の周りに集まっていたし、地合いの時も会場を出ると囲まれていた。
あの頃はモテる人は大変だなって思うだけだった。今みたいに胸の辺りがモヤモヤするなんて無かった…よね?
それに、姫野と寄り添って写真を撮ることもあったけど今のようにドキドキはしてなかったよね?
いろんなことが疑問符つきになってしまう。
なんで今は考えるだけでもこんなにドキドキしたりするんだろうか?
友達以上、恋人未満って言葉があると知っていたけど…それかな?
親友の上?
でも異性だとそれは成り立つのかな?
頭の中がスッキリ整理ができない。
…っていうか、一つだけ気がついた事があるよ!
週末のドライブに着ていけそうな服が無いよ!
デートらしい服なんて、今までデートをしたことが無い私が持っているはずもなかった。
スカートなんか制服でしか履いてなかったんだけど!?
デートにパンツスーツはさすがにダメだよね。
これって…またまた綾姉に助けてもらわないといけないのでは?
急いで綾姉にまたメールを打つ。
まだ返信は無いが今週末までにアドバイスだけでももらえるようには手を打った。
これで何とかなるよね…。
みんな、デートの度にこんな感じなのかな?
行くまでに疲れそうなんだけど…。
「でも、週末が楽しみだな…」
私は月を見上げながら家路についた。
どうか週末が晴れます様にと願いながら…。
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