姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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22. 王子は姫に心配されていた

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「やっと理解ができた様子ね」

 ホテルの部屋に帰ってきた私を見て柚菜ちゃんが最初に言った言葉です。

 時々、柚菜ちゃんはエスパーなのかな?と思ってしまうことがあるくらい私の気持ちを読まれているんです。

「…柚菜ちゃ~ん」

 ベッドの上に座っていた柚菜ちゃんに駆け寄り抱きつきます。

「何があったかだいたい予測はついてるけど、話してみな」

 私は柚菜ちゃんに夕食の時の出来事を全て話しました。

「ふ~ん、あの腹黒人がそんなにハッキリ言うなんて…焦ってるのかな」

 お兄さんの事を今何て言いました?

 腹黒人?

「何をキョトンとした顔をしてるのよ。あっ、さっきの腹黒人ってとこが気になってるの?」

 私は軽く頷きました。

「あの人って小さい頃からお祖父様とかに会社のトップになるべく育てられてきたから、自分の感情を表に出さないように教育されてたんだよね。その影響で何を考えているかわからない人になったんだけど…考えていることと口に出していることが合わないというか…いわゆる、典型的な腹黒な人なのよ。だから腹黒人」

 あ~、柚菜ちゃん特有の短縮単語な訳か!

 悠人さんって小さい頃から大変だったんだな。

「だから王子の事が好きになったのかもね」

「え!?どこにそんな要素があったの?」

 さっきの会話の中にはヒントは無かったよね。

「王子って裏表無い天然無知じゃない?だから…自分とは正反対の所に惹かれたのかなと思うんだよね」

 柚菜ちゃん…それ褒めてる?天然無知…ディスられてない?私ってそんな感じに思われていたんだとショックを受けたよ。

「人ってさ、自分には無いものを持っている人に憧れるとこがあるでしょ、それがいつの間にか愛に変わった…ってとこじゃないの」

 私の頭をポンポンと軽く叩いてなだめてくれているのか…。

 理由に喜んでいいのか…微妙な心境です。

「で、王子は告白されてどう感じたの?」

 …どうと言われても。

「驚いたとしか…」

「ん~、それだけか。やっぱり見込みはないね。あの人と王子が結婚してくれてら私の義姉になると思ってたんだけどね…。こればっかりは上手くいかないね」

「義姉妹!そうか、そうなるんだね!」

 柚菜ちゃんと姉妹になるのは嬉しいけど、悠人さんと結婚している自分は想像できない。

「まあ、今すぐにどうこうということは無いみたいだから、ゆっくり考えれば」

「…うん。そうする」

 その後、お部屋で女子会を楽しみました。

 次の日、自宅に帰るまで柚菜ちゃんが私と悠人さんの間に座って、ひたすら私と話をしてくれていました。

 きっと柚菜ちゃんなりに私に気遣ってくれての事だと思います。

 驚いたのはその後でした。

 自宅の近くで車から下ろしてもらい歩いてあたらいるはずのない人物を見つけたのだ。

「え?姫野…」

 姫野も私に気がついた様子で私の方に駆け寄って来て、私の両方の肩を掴んだ。

「大丈夫なのか!?何もされなかったか!?」

 鬼気迫る表情と心配そうな声の姫野…。もしかして、電話を切られた時からずっと心配してくれていたのかな?

「姫野…わざわざ心配して来てくれたんだ。電話でも良かったのに…」

「はあ~、電話切ったままのお前にそんな事を言われるなんて…」

 姫野がガックリと肩を落としたのがわかった。

「え!嘘、電源切ったままだった!?ごめん」

 すっかり忘れてた。

 姫野がくっくっと笑い始めた。

「お前らしいんだけど、今回は勘弁してほしい…」

 私の真ん前でまっすぐ私を見つめている。

 …そんなに見つめられると恥ずかしい。

「おい!その汚い手を妹から離せ!」

「人ん家の近くで何をしてるんだ?」

 姫野の向こう側にお兄ちゃん達が腕組みして仁王立ちしているのが見えた。

「光、早くこっちに来い!」

 姫野がゆっくりと私の肩から手を離した。苦笑いしている。

 でも、お兄ちゃん達が過保護すぎるんだよ。だって偽物だけど姫野は私の婚約者なんだよ。将来家族になるかもしれない人に対してその態度はどうなのか。

 なぜか少し腹が立ったのでお兄ちゃん達の所には行かず、姫野の片腕に自分の腕を絡めた。

「「え!?」」

「え!?」

 お兄ちゃん達が驚くのは予想外してたけど、なぜ姫野まで驚くのよ。

「お兄ちゃん達、私の婚約者に対して失礼な言い方しないで!謝って!!」

 お兄ちゃん達を睨み付けながら、見せつけるように姫野に体を寄せた。

「え…光…離れろ。ほら、お兄ちゃん達謝るから。なっ、早く離れるんだ」

 海兄さん、全然反省してないよね。

 今度は自分の顔を姫野の肩にすり寄せ見せつけた。

「俺達の光が…。謝る…謝るから光…こっちに来てくれ」

 空兄さんも反省してないみたいだね。

 さらに密着して見せつけてやる!

 今度は姫野に抱きついてみた。

「うっ…」

 姫野から変な声が聞こえたけど、顔をみたら固まっていた。どうしたのかな?力をいれすぎて苦しかった?

 その様子を見ていたお兄ちゃん達がその場に崩れ落ちた。

 何だろうこのカオス状態…。

 私の母が家から出てきてこのカオスは終了となるのはこのすぐ後の事でした。

 姫野…大丈夫だったのかな?

 







 

 
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