姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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20. 王子は王子らしくない叫び声をあげる

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 やはり柚菜ちゃんを引きずってでも連れてくるんだった…。

 後悔先にたたず?だったかな…今はそれを実感してます。

 ロビーで待っていたら悠人さんが時間通りにやって来たので柚菜ちゃんの事を話したんです。もしかしたら一緒に柚菜ちゃんを起こしに部屋に行ってくれるかもしれないと期待して…。

 ですが返ってきた言葉は「そう、じゃあ二人で行こう。僕はその方が嬉しいし」でした。全然予想してない!

 結果、私は悠人さんと向かい合って高級フレンチを食べることに…。

 こんな高そうなお店なんて来たことがないから緊張して美味しいはずの料理の味もまともにわかりません。

「どうしたの?口に合わないかな…」

 綺麗な所作でお食事されている悠人さんと、フォークとナイフの扱いに苦戦している私…。

「いえ…。こんなに素敵なお店に来るのは初めてで緊張しているだけなんです。気を遣わせてしまい申し訳ありません」

 口調まで丁寧になってしまう。

「緊張なんてしなくても大丈夫だよ。僕の行きつけのお店だしね」

 …北海道に行きつけのお店があるんですね。流石…次元が違います。

「それより、聞きたいことがあったんだけど…聞いていいかな?」

 手にしていたナイフとフォークをテーブルに置き、口元をナフキンで拭った後で話す悠人さん…。お育ちが違いますね。

 所作に感心しながらも話を続けた。

「何ですか?」

「姫野くんといつから付き合ってたの?少なくとも、僕が海外に行く時はまだ付き合っていなかったよね」

 …それを聞くんだ。何て言えば良いのかな。

「そうですね…。悠人さんが海外に行かれた時はまだ付き合っていませんでした」

 なぜか緊張感が増してきました。いつからって言えば信じてもらえるのかな。

「それがなぜいきなり婚約なのかな?」

 なぜと言われても…偽装婚約なので理由は言えないんですが…。とぼけるしかない?

「なぜ…と言われても説明のしようが無いのですが…付き合う時に結婚を前提にということで婚約するということになったんですよ。私もビックリでした。まさか姫野と婚約なんて…」

 いつも笑顔の悠人さんが笑顔無く真顔で私を見つめている。

 なぜ?

「ふ~ん、今まで姫野くんと頻繁に会ってなかったよね?それなのに付き合うタイミングがあったんだ…。おかしいよね?」

 あれ…もしかして…刑事ドラマのように追い詰められている?

 なぜ?

 
 さっきからずっとなぜ?が連続してる。

 いつもの悠人さんじゃない悠人さんに戸惑っている。私を追い詰めて何がしたいのかな?

「おかしいですか?なぜですか?」

「だって、友人でもなかった様に見える二人が恋人を通り越していきなり婚約だなんて…おかしいでしょ?そんなの普通はあり得ないと思うけど…それとも僕が知らないうちに二人はずっと連絡を取り合っていたのかな?」

 刑事悠人さんはまだ追い詰めてくるんですね。

「連絡は取り合っていませんでしたけど仕事で再会したのがきっかけで連絡をとるようになって、お互い幼い頃から知っている仲だったので…」

 ここから先は何て言えば良いかわからない。

「それなら僕も王子ちゃんが幼い頃からしってるよね?」

 ん?悠人さんと知り合ったのは柚菜ちゃんと友人になってからだから、高校生だったよね。


「知り合った時幼くはなかったかと…」

「僕にとっては高校生も幼いよ。それにあの頃は姫野くんと接触してなかっただろ?」

 接触?言い方まで刑事さんみたいになってますけど。

「確かに…あの頃は話したりはしてなかったかもしれませんけど」

「だよね?じゃあ、僕と姫野くんとの王子ちゃんと知り合ってからの接触時間の差はそんなにないんじゃないかな?」

 …それは強引すぎじゃないですか。

 だって姫野とは小学生からの付き合いですよ。言われたように話をしていなかった期間もありませたけど、姫野は無口だったから気にもならなかったんだよね。

 話さなくても良かったというか…。

 そこに悠人さんと私の関係がどうして関わっているのかな?

 ん~、悠人さんは私に何を言わせたいのかわからないよ。

「悠人さんは結局…何が言いたいんですか?」

 真顔だった悠人さんの顔がふわりと笑顔になった。

「結局…姫野くんとの婚約を解消して僕と付き合ってほしいんだよ」


 はあああぁぁ!?







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