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18. 王子は親友に怒られる
しおりを挟む悠人さんが姫野からの電話を切った後、そのまま電源を落として私に返された。
「うるさい電話がかかってきたら楽しめないから電源を切っておくね」
笑顔で言う悠人さんが少し怖い様に感じるんだけど…私だけなのかな。横にいる柚菜ちゃんは呆れた顔で悠人さんを見ていますが、何も言いません。
悠人さんの目の前で電源を入れるのも感じが悪いから悠人さん達と離れた後で電源を入れて姫野にメールでもしたら良いかなと考えてそのまま電源を切ったままの電話を鞄に入れた。
姫野から鬼のように電話がかかってきているとは知らず…。
北海道の空港に到着後また車に乗り込みどこかに向かっています。
到着したのは有名な一流ホテルでした。
「さあ、到着したよ。ここのレストランで食事をして、温泉に入ってゆっくりしようね」
元気な様子の悠人さん。それに比べて疲れた様子でぐったりした柚菜ちゃんが気になります。
「柚菜ちゃん大丈夫?」
「うん。いつもの事とは言え…北海道に来るなんて…さすがに疲れたわ」
いつもは体力自慢の柚菜ちゃんがここまで疲れた様子を見せるのも珍しいなと思いながらも、前を見れば悠人さんが先に歩いてチェックインをしているのが見えています。
とりあえずはあそこまで行かないといけないみたいね…。柚菜ちゃんを支えながらホテルのカウンターまで向かいます。
「やって来たね。はい、これ部屋の鍵だよ。残念だけど今日は柚菜と一緒の部屋を取ったからね」
残念だけど?何で?私は柚菜ちゃんと一緒の部屋で嬉しいんですが。
不思議に思いながらも柚菜ちゃんを休ませる方が先かなと思い鍵を受け取った。
「じゃあ、19時にロビーで待ち合わせしよう」
優しいんだかそうではないのかいまいち掴みどころのない悠人さんは颯爽と去っていってしまった。
「はあ~、やっと離れたわ。早く部屋に行こう」
柚菜ちゃんはまた溜め息をつきながらトボトボと歩きだした。
「お部屋まで案内させていただきます」とホテルの人が案内してくれたのだが…。
「こちらのお部屋になります」
到着したのは最上階のスイートルームだった。
「間違いじゃないんですか?」
私が慌ててホテルの人に尋ねたら
「合ってるよ。あの人ならこの部屋をとるよ」
横にいた柚菜ちゃんが落ち着いた様子で先に部屋に入ってしまった。ホテルの人も笑顔で頷いている。これは合ってるということだよね。
柚菜ちゃんが会社の社長令嬢なのを今、再認識できたよ!
いきなり来て、こんな高い部屋に泊まるんだ…。
私の家族なら絶対に泊まらないだろうな。言ったら驚くこと間違いなしだよ。帰って話すのが楽しみになってきた。
…そうだ、それどころじゃなかった!
柚菜ちゃんが弱ってたんだ。
急いで部屋に入って柚菜ちゃんを探すとソファーに座り、ホテルの人と話をしていた。
「ありがとう。わかりました」
「それでは失礼します」
ホテルの人は私達に軽く頭を下げて部屋を出た。
「柚菜ちゃん、体調大丈夫?」
ソファーに座っている柚菜ちゃんの隣に座り顔を覗き込む。
「大丈夫…。あの人に振り回されるのには慣れているんだけど2徹夜明けなんだよね…」
「2日も寝てないの!?時間まで横になりなよ」
柚菜ちゃんは難しい顔をして私を見た。
「寝たらたぶん…いや絶対に夕食の時間には起きることができないよ。そうなるとあの人と二人で夕食になるけど…良いの?」
あっ、そうか…そうなるんだ。
「前から言うかどうか迷っていたけど、やっぱり言うわ!あの人…王子の事をかなり気に入ってるからね」
ソファーでクッションを抱きながら眠気と戦っている様子の柚菜ちゃんが半目を開けて私を見ている。
「そうなんだ。ありがたい」
「おバカ!王子の認識は妹の友人として気に入られていると思っているでしょう。違うよ、異性として気に入っているってことだからね。今回も私をだしにして王子を連れ出したんだからね!危機感を持ちな!」
半目だった柚菜ちゃんの目が全開に開き、凄い迫力を醸し出しています。でも、言われたことには納得がいきません。
「またまた~。そんなはずないよ、私だよ。そりゃ~、よく学生時代も奢ってもらったりしてたけどそんな雰囲気は全然なかったよ」
柚菜ちゃんの勘違いだと思うんだけどな。私の話した後、柚菜ちゃんは呆れた顔をしていた。
「何その顔~。きっと柚菜ちゃんの勘違いだって」
「…よくわかった。私は寝ることにする。そして王子はあの人と二人きりになったらどうなるか体験してこい!以上!!」
え?嘘みたいに言い終わると同時に寝たよ!!
しかもイビキをかいてる。
嘘でしょ!?
結局、時間に起こしたけどやはり柚菜ちゃんは起きることはなく、私だけでロビーに向かった。
柚菜ちゃんの言っていたことを信じている訳ではないけど、聞いたら意識をしてしまうのも仕方ないというか…。
なんかドキドキしてきました。
二人きりにで食事…どうなるのかな。
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