姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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14. 姫からの贈り物

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 なぜ今私は姫野に抱きしめられているのでしょうか…。

 会社の打ち合わせ室で身動きがとれないくらいに強く抱きしめられている理由がまったく思い当たらなくて戸惑ってしまう。

 だけど…姫野って良い香りがするな。柑橘系?シャンプーの香りなのかな…。さすが爽やかイケメンだな~。ん?そう言えばさっき私…汗かいたかもヤバい。私って姫野と違って汗の臭いがしてるかも!

 これは早く離してもらわないと!

「あの…姫野…このハグは何のハグ?今は誰もいないし、婚約者らしくしなくて大丈夫だと思うんだけど…。それに私…汗臭いかもしれないから…」

 わからないことは聞いてみるのが早いので姫野に問いかけてみた。するとすぐに姫野が私から離れてくれた。

 あまりの速さにやっぱり私…汗臭かったのかなと思ってしまう。

 少しショックだよ。

「あっ、いや…感謝のハグだよ。忙しいのに俺の為に頑張ってくれると言ってくれたからね。うん、感謝のハグ。それに全然汗臭くなんかないし、むしろ良い香りが…」

 慌てた様子で顔を赤くしながら話している姫野が可愛く見える。感謝のハグか…。

「そっかそっかそれならわかるよ」

 それに汗臭く無かったらしいからひと安心だよ。

「あのさ、もうひとつ良いかな。今日って退社後予定ある?なければ感謝の気持ちを込めてご飯を奢りたいんだけど…どうかな?」

 そんなに感謝してくれるの?私の仕事なんだから別にそこまでしてくれなくても良いのに。

「予定は無いけど…。奢ってもらうのは悪いからワリカンでご飯に行かない?」

「王子がそれで良いならオッケーだよ。じゃあ、仕事が終わったら連絡くれるか?」

「わかった。終わったら連絡するね」

 姫野は嬉しそうに会社を出ていった。

 今日から残業して姫野の靴を仕上げようと思っていたけど、今日は無理そうだな。明日からとりかかろうと決意する。

 仕事を片付けようと机に戻ると柚菜ちゃんのお兄さんの悠人さんからのメモが貼り付けられていた。

 "今度、柚菜も一緒に食事に行こう。僕の帰国を一緒にお祝いしてくれるかな?"と書いてある。

 これは断れないやつだよね。悠人さんの電話番号知らないから柚菜ちゃんに連絡すれば良いかな。それにしても今日はご飯に誘われる日なんだね。後で姫野にも話してみよう。


 集中して仕事をしていたせいかあっという間に仕事の終了時間になった。

 急いで姫野に連絡して会社の近くの行きつけのお店で待ち合わせをすることになった。

 店には私の方が先に到着した。ここは学生の頃から利用しているイタリアンのお店で今でもお世話になっているんです。何でも美味しいし、量があるから満足感がハンパないんです。

「いらっしゃい。今日は一人?」

 顔見知りのマスターが気軽に声をかけてきてくれた。

 イタリアンで修行してきたマスターは話しやすくて、マスターに会いに来ている人も多いんですよ。

「今日は姫野と待ち合わせなんですけど、奥の個室空いてますか?」

 このお店には奥に2つ個室があって、手前はカウンターと4人席が2つあるという比較的にこじんまりとした店作りなんです。私は大丈夫だけど、たぶん姫野がゆっくりと食事をするのなら個室の方が良いよね。

「おっ、そうだ。婚約発表したんだったよね。おめでとう。今日はワインを1本お祝いにプレゼントするよ。個室は一番奥が空いてるから使って良いよ」

 情報に疎いマスターまで知っているなんて、どれだけ婚約発表会見は放送されたんだろう。考えるのが怖いな…。

 奥の個室に行こうとしていた時、私の後ろにあったお店の扉が開いた。

「噂をすればだな。いらっしゃい姫様。お祝いに好きな赤ワインをプレゼントするから2人で飲んでくれ」

「ありがとうございます。マスターワイン一本と言わず何本でももらうよ」

 姫野がマスターの近くに行って手を出している。こんなお茶目な姫野を見たこと無かったから驚いてしまった。

「何言ってるんだ。この店の売り上げにもっと貢献してから言ってくれ」

 ハハハッと二人で笑いあっている。

 姫野って男同士だとこんなやり取りしてるんだ…。知らなかった。無口な姫野ではないんだ。

 知らない一面を見ることができて少し口角が上がってしまう。

「早く奥の個室に行けよ。好きな料理を用意して、ワインと一緒に持っていくよ」

 マスターが忙しそうに料理をしながら目線で私に奥に行けと合図をしてくる。

 確かにカウンターのお客様がチラチラと姫野と私を見て話しているのがわかる。確かに早く奥に行った方が良いみたい。

「姫野、奥に行こう」

 姫野の服の袖を引っ張り声をかけた。

「わかった」

 姫野はマスターに手を上げて私を追い越して先に奥の個室に行ってしまった。

 個室に入ると小さな箱がテーブルの上においてあった。今までこんなのお店で見たことがない。

「これ、何だろうね」

 姫野は見たことがあるかもしれないと思って聞いてみたら、黙って箱を私の方に押し出してきた。

「これは俺から…」

「え…?」

 姫野から私にプレゼント?








 

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