姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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10. 王子の兄達登場

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 姫野を出迎えに行ったはずのあや姉が帰ってこない。それに扉の所で何か揉めているような声がする。

 どうしたんだろうか?

「ちょっ、ツインズは呼んでないのよ。帰りなさいよ」

 あや姉の声だ。

「何言ってるんだ。俺達の可愛い光を返してもらうだけだから部屋に入れろ!」

「光~!大好きな兄達が迎えに来たよ~!婚約破棄して帰ろ~!」

 この声は…。

 扉に到着するまでもなく誰が来たのかすぐにわかった。

「お兄ちゃん達、何騒いでるの」

 部屋に来ていたのは過保護すぎる私の双子の兄達だ。

「え!?光?どうしたのその格好。可愛い!!いや、美人!」

「いつも可愛いけど雰囲気がまた違って良い!」

 お兄ちゃん達はこの格好が気に入ったみたいでべた褒めだ。

「それより、何しにここに来たの?」

「だってさ~、お兄ちゃんは何も聞いてなかったんだよ」

 今はなしているのが長男の王子 海(おうじ うみ)。

「そうだよ~、ドッキリにしても質が悪いよ。婚約会見なんて~最悪だよ」

 不敵な笑みを浮かべながら話しているのが次兄の王子 空(おうじ そら)だ。

 一卵性の双子なので見分け方が難しいのですが、右目の下に泣きぼくろがあるのが海で左目の下にあるのが空です。

 面倒な事になりそうだからこの二人には何も言わないでいたのだが、バレるのが早すぎる。せめて、会見が終わった後なら事後説明だけで終われたものを…。

「あれ?今日って撮影でイタリアに行くって言ってなかった?」

 兄達は高い身長(190センチ)を活かしてモデルの仕事をしているんです。ちょうど海外に撮影に行くって言っていたから安心してたのにー!なぜいるの?

「「キャンセルしたよ。可愛い妹の一大事に仕事なんか出来ないよ」」

 二人で声を揃えて言ってるけど、仕事をキャンセル…って何を考えているんだろう。

「何考えてんの?さっさと仕事にしてきなさいよ!ほら、イタリアが待ってるわよ」

 あや姉が兄達を部屋から出そうと体を扉を押しているが兄達は諦めそうにない。

「すいません。兄達と話をしないとおさまりそうにないので部屋に入れても良いですか?」

 あや姉にお願いをした。

「わかったわ。私は優ちゃんの部屋に言ってるから何かあったら連絡してね」

 仕方ないなという顔をして、あや姉が了承してくれ、部屋から出ていった。

 変わりにお兄ちゃん達が部屋に入ってきた。

「光、何で姫野と婚約?いつからアイツと付き合ってたの?もう結婚とか決まってたりするのか?はっ、それとも授かり婚なのか!?」

 次兄の空が興奮しながら捲し立てて話している。それを隣で腕くみしながら頷いて聞いている長男の海。

「さ、授かり婚!?そんなわけないでしょ!」

 私は顔を真っ赤にしながら答えた。何を言ってるんだこの兄達は!

「だって、こんな急に婚約発表なんて可笑しいから…」

「それは二人で会う時に写真を撮られるのを気にしながらだと疲れるから、いっそのこと婚約をした方が自由に会えるんじゃないかと話し合ったからだよ」

 …って言えって姫野に教えられたんだけどね。覚えてて良かった。本当はストーカーにわからせる為に一番効果的だと思われるからなんだけど…。お兄ちゃん達は信じてくれるかな。

「「そんな…。じゃあ、本当にアイツと付き合っていたのか…」」

 二人の兄が一斉に床に崩れ落ちた。二人とも声を出さずに泣いているみたい。涙が床に落ちている。

 え…そんなにショックなのかな?

「お兄ちゃん…」

 何だか申し訳ない気持ちになって兄達にてを伸ばそうとしたら急に顔を上げて笑い出した。

「ハハハハハッ…やるじゃないか姫野。俺達をここまで騙していたとは…敵ながらアッパレだ」

 敵ながら?あれ…海兄ちゃんが壊れた?

「それならそれで、こちらにもやり方というものがあるからな…フフフ…楽しみじゃないか…」

 空兄ちゃんも様子がおかしい。

「あの、お兄ちゃん達…大丈夫?」

 私が声をかけるとお兄ちゃん達が目にもとまらぬ速さで私の前までやってきて私の手を二人でガッチリと握りしめた。

「「安心しろ光。お兄ちゃん達はお前を守る為に生きているんだ。何も心配はいらない。だが…少し敵と話をしないといけないから少しこの部屋を離れるが寂しくないか?」」

 敵って、たぶん姫野のことだよね。今から姫野に会って何を話すつもりなんだろう。心配しかないんですけど。それに久しぶりにお兄ちゃん達に会えたのにな…。


「お兄ちゃん達と久しぶりに会えたのに、もういなくなるなんて寂しい。それに姫野はお兄ちゃん達にとって敵になるの?それも悲しい…」

 思っていることを正直にお兄ちゃん達に伝えると、またその場に崩れ落ちた。

「「妹が…可愛すぎる…。それなのに…アイツに取られるなんて…」」

 二人ともが床に倒れたまま何かをブツブツと言っている。声が小さすぎて何を言っているのかは聞こえない。

「お兄ちゃん達はお祝いしてくれないの?私はお兄ちゃん達が婚約発表するとしたら喜んでお祝いするよ」

 お兄ちゃん達は私のお願いや頼みごとに弱い。騙しているのは心が痛むけど、妹離れする良い機会だよね。

「「………」」

 お兄ちゃん達は何も言わなかった。これは気にくわないけど認めたということだと今までのつきあいでわかっている。

 何とか難関のお兄ちゃん達を止めることができたみたい。

 やれやれ…。







 
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