姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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4. 王子驚く

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 気になったので姫野に連絡をしたら日にちと時間、場所を指定された。

 指定されていた場所は有名な高級レストランだったので驚いたが話を聞いてもらうので姫野が奢ってくれると聞いて安心してレストランへ向かった。

 どんな服装が良いかと迷ったけどいつも通りの黒のパンツスーツスタイルで行くことにした。

 当日は仕事が休みだったので少し時間より早めに行ったのだが到着するとすでに姫野がレストランの前に居たので時間を間違えたかとビックリした。

「ごめん。もしかして時間を間違えた?」

 私は早足で姫野の元に向かった。

「いや、俺が早く着いただけだから…」

 姫野の視線が私の右足をとらえている。

 さすがに気がつかれたかな…。

「あ、この足は気にしないで昨日今日のケガじゃないから。普通に歩くのは大丈夫なんだけど走るとかになると上手く動かせないだけなの」

 そう、私は昔のケガが原因で右足に少し障がいが残っているのだ。

 普通に生活をするのには問題無いんだけどね。

 私の話を聞いて姫野が何ともいえない複雑な表情を見せている。

 私…姫野に同情されているのかな…嫌だな。

「ねえ、お腹空いてるから早く中に入らない?」

 私は話題を変えて姫野に笑いかけた。

 姫野は私の右足から目を離してやっと私の顔を見てくれた。

「…そうだな」

 苦笑いというのか目が笑っていない姫野にエスコートをされてレストランの店内に入った。店内は白を基調にした内装の落ち着いた大人のお店という感じです。私達が案内された席は4人分の席がある個室だった。

「素敵なお店だね」

 私は店内を見回しながら席に着いた。

「ああ、ここのお店のオーナーが俺の支援者の一人なんだ」

「へぇ~」

 本当に昔の無口な姫野からは考えられないなと改めて実感してしまう。

 確かに昔から人気はあったけどファンクラブとかは嫌がってたのにな。今ではきちんとコミュニケーションをとっているだね。

 席に着くと飲み物を聞かれたが私はアルコールに弱いのでノンアルコールをお願いした。どうやらメニューは本日のコースという一択しかないらしい。メインの料理を肉か魚か選ぶことはできるみたいだ。二人ともお肉でお願いした。

 すぐに頼んだ飲み物がきたので二人で乾杯をする。

「久しぶりの再会に乾杯」

 姫野がそういって赤ワインの入ったワイングラスを高く上げた。

 本当に姫野は大人になったのだと実感してしまう。思春期の無口な姫野はどこにいったのか。こんなドラマのセリフの様な言葉を恥ずかしげもなく言えてしまうようになるなんて…年月とは恐ろしいものなのね。

「何をそんなに驚いてる?」

 どうやら私は目を見開いて驚いた表情をして固まっていたらしい…反省します。

「え…と、姫野が大人になったなと思って驚いてました」

「なんだそれ?」

 不意に見せた姫野の笑顔に胸の奥がざわついた。

 あれ?なんだ今のは?

「王子は昔と変わらないな…そう言う正直なところとか…服装とか」

 少しバカにされた様な笑いかたが気になる。

 見た目も中身もあまり変化がないのは本人も自覚しているのでどう反応して良いかわからない。しかも服装も確かに昔から何かあれば黒のパンツスタイルスーツを着ていたから反論できないし…う~、悔しい。

「そう…かな。所で話って何なの?」

 反論できなくて悔しいので、私はまた話題を変えた。

 すると姫野の顔つきが真剣な表情に変化した。

「実はお願いがあるんだ。幼馴染みの王子にしか頼めないんだけど聞いてくれるか?」

 姫野が体を前のめりにして私に近づいている。

「内容によるかな…」

 何も確認しないで返事をするほどお人好しではないからね。だけど困っているなら力になりたいとは思う。

「実は…俺の恋人になってほしいんだ」

 姫野が私の正面で真剣な顔をして私を見つめている。

「はあ!?こ、恋人!?私が姫野の?」

 驚きすぎて変な声がでたよ。個室で良かった。

 …っていうか姫野って私の事が好きだったの?

 まさか!そんな感じはなかったよ!!

 私が驚きすぎて固まっていると姫野が慌てた様子で話し出した。

「あっ、いや…恋人と言っても偽物で恋人のふりをしてくれれば良いんだ。実はストーカーがいて困ってるんだけど恋人がいれば諦めてくれるのかなと思ってだな…」

 なんだそうだったのか。

 あれ?私…何にガッカリしてるんだろう。

「そうだよね…驚かさないでよ。それなら最初から恋人のふりをしてほしいと言ってよ。驚いたじゃない。それにしてもストーカーか…。相変わらずモテ過ぎるのも困るね」

 昔から姫野の回りには沢山の女の子達がいた。ファンクラブも小学生の時からすでにあったし、今やアイドルなみの人気にまでなっている。

 週刊誌で有名美人女優さん達との熱愛スクープとかも撮られたりして、すっかり別世界の人だなと思ってたけど…。

 あれ?

「ねえ、それなら彼女に頼めば良いんじゃないの?」

 確か、つい最近美人女優さんとの熱愛報道があったよね?

 その人に頼めばストーカーも美人女優には敵わないと思って諦めくれそうだと思うんだけどな。


 …なぜ私なんだろう?

 

 





 
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