姫は王子を溺愛したい

縁 遊

文字の大きさ
上 下
1 / 43

1. 王子様は女の子!?

しおりを挟む


「はぁ~、やっと見つけた…」

 会社の先輩の杉ノ原(すぎのはら)さんが息をきらして話している。

 薄暗い地下倉庫まで先輩が私を探しに来るなんて珍しいことだ。

 私…王子 光(おうじ ひかる)26歳は現在スポーツメーカーの社員として働いている。

 いつもは企画、制作担当として部屋に籠っていることが多いのだが、今日は探し物があり地下倉庫に来ていた。

 因みに倉庫は会社の地下の奥の奥にあるので滅多に人は来ないのだ。

「何かありましたか?」

 余程の事で来たのだろうと思い聞いてみたが…。

「予定が変更になって明日、姫野選手が採寸に来るから頼むぞ」

「え!?明日!?わ、私がするんですか?」

「姫野選手の御指名だそうだ。学生時代からの顔見知りなんだろ?頼んだぞ~。あ~、やっと帰れる」

 手をヒラヒラとさせながら杉ノ原さんが私の肩をポンポンと叩いて去って行った。

「何で…アイツが私を指名…?」

 私は訳が分からなくて悩む。

 先輩のいつもの冗談?

 それにしては姫野の名前が出てたし…。

 姫野 優(ひめの ゆう)26歳、現在プロリーグで活躍中の人気バレーボール選手だ。

 身長188センチの爽やか系王子様と言われているらしい。高身長でパッチリ二重の肌も艶やかで顔も綺麗だからね。

 昔は女の子みたいだったのにな。

 私と姫野は小学生の時からの知り合い…腐れ縁と言うやつかもしれない。

 出会いは小学生の時のバレーボールクラブからかな。

 お互いに同じバレーの強豪高校に進んだんだけど、私が女子高に行って、姫野は違う高校に行ったのでそれからはバレーの試合以外に会うことは無かったのにな…。

 自分で言うのも何だが、私達は学生バレーの中で有名な二人だった。

 なぜ有名だったか…それは小学生の時にバレーチームで練習していたのだが、それがバレーボール雑誌の人の目にとまり撮られた写真が雑誌に載ってしまったからだ。

 私達のいたバレーチームは男女混合で練習するのが当たり前で姫野と私はその日同じチームになり練習していた。

 夏の暑い日に汗を流しながらコートに立つ二人の姿を撮った写真だったのだが…それがなぜかバズったんだよね。

 どうやら私達の見た目が原因だったみたいなんだけど…私としては複雑な心境だったんです。

 当時の私は小学生ながら身長168センチのベリーショートで肌も日焼けしていて色黒ボーイッシュな女子で、姫野は今からは想像つかないけど身長155センチでボブヘアーの色白(日に焼けないタイプ)で可愛い系男子だったので私が王子様、姫野が姫様と呼ばれたんだよね…。

 女の子なのに王子様…これは今でも呼ばれてる。身長が175センチもあるからね。女の子にしては高いし、出るとこでてないから仕方ないんだけど…。

 その時はなぜ自分達がそんなに人気者になったのか小学生だったからよく理解できなかったけど高校生の時にできた今や親友の相羽柚菜(あいば ゆずな)ちゃんが教えてくれて理解できたんだったな~。

 「ビジュアルが美少年BL(ボーイズラブ)だからよ」

 柚菜ちゃんはキッパリと私に言いきった。

 BLって?のレベルだった私にBL大好き柚菜ちゃんはそれは熱く、熱く語ってくれましたよ。

 「女子と男子の間の様な雰囲気を醸し出している女の子の王子様と儚げな雰囲気を醸し出している姫の様な男の子の姫様…その二人が汗を流しながら切磋琢磨している…最高の写真!いや!神写真以外の何者でもないわ!」

 途中、危ない顔になりながら高校の昼休みに熱弁をふるってくれたからそれが男の人同士の恋愛の事なんだって理解できましたよ。

 その後、柚菜ちゃんは私の理想とする女の子そのものだったから私から友達になってほしいってお願いして今は親友。

 実はそんな柚菜ちゃんは今や立派なBL漫画家としてデビューして有名になってるという、できる女なんだよね。

 好きなことを仕事にできる、夢を叶えるって凄いですよね。

 あ…話がそれちゃった。

 ともかく私と姫野はその雑誌が発売された後、他のスポーツ雑誌からも取材を受けたり、テレビに出演したりすることになり、二人でひとつみたいな扱いを暫くされていたんだよね。

 小学生、中学生時代はどこで取材をされるのも姫野と一緒だったかな。

 だけど思春期の私達の距離は微妙だった…。

 まあ、それが嫌で環境を変えようと思って高校は女子高に行ったというのもあるんだけど…。

 あの頃の姫野は女の子と言ってもバレないような美少年だったから横に並んで比較されるのが辛くなってきてたんだよね。


 高校生になると姫野も身長が急激に伸びてガッチリとした体型になっていたけど、私は相変わらず身長だけが少し伸びて他の肉付きは…曲線を描ける体型にはならなかった。残念。


 それに大学生の時のケガが原因で唯一の接点であったバレーボールからも今は遠ざかっているしね。

 姫野と最後に話をしたのはいつだったのか…。


「あっ、あった」

 考え事をしながらも探していた資料がみつかったので倉庫から出て自分のデスクに戻った。

 デスクの上にはメモが張られていた。

「冗談じゃなかったんだ…」

 メモには"明日、姫野さんは10時に来られますので宜しくお願いします"と書かれていた。


 明日…何年ぶりかの姫野とのご対面だ。





 



 

 



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

そこは優しい悪魔の腕の中

真木
恋愛
極道の義兄に引き取られ、守られて育った遥花。檻のような愛情に囲まれていても、彼女は恋をしてしまった。悪いひとたちだけの、恋物語。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~

けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。 ただ… トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。 誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。 いや…もう女子と言える年齢ではない。 キラキラドキドキした恋愛はしたい… 結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。 最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。 彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して… そんな人が、 『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』 だなんて、私を指名してくれて… そして… スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、 『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』 って、誘われた… いったい私に何が起こっているの? パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子… たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。 誰かを思いっきり好きになって… 甘えてみても…いいですか? ※after story別作品で公開中(同じタイトル)

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

処理中です...