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2. かわいそうな生け贄様(御使い視点)
しおりを挟む生け贄様…それは我がハーデレン国では必要な人物。
従来のハーデレン国は作物が豊富に実り、国民の笑顔が溢れる幸せな国でした。それが…何代か前の愚王によって全てが変わってしまったのです。
愚王は事もあろうか神様の神聖なる土地を荒らし領土を広げようとしたのです。
この事にお怒りになった神様が愚王に試練を与えました。
愚王には目に入れても痛くないというほど可愛がっている姫がいたのですが、その姫を神様に生け贄として差し出すようにと言われたのです。
愚王も姫も嫌がり抵抗しましたが、その間、嵐が続き海は荒れ、畑も水浸しになり…大変な被害を受けていました。
国民は神様に祈りました。
「どうか怒りをお納めください。私達を見殺しにしないでください」
その祈りを聞いた神様は新たな試練を出しました。
「仕方ない…嵐は100年の間だけ止めよう。しかし、100年後王族に産まれた最初の姫を私に生け贄として必ず差し出しなさい。その姫が18歳になったなら迎えにこよう」
これを聞いた愚王はすぐに頷きました。可愛い姫を生け贄として差し出さなくても済むからです。
「わかりました。100年後は必ずその通りにします」
そして愚王は100年後に必ず約束が守られるようにと考えて本を作り世にだしました。国民も忘れないようにするために…。
そして…100年後、王族にそれはそれは可愛らしい姫様がお産まれになりました。
ですが…誰も喜びません。
「なぜ!なぜ王子ではないの!なぜ姫なのよ!王子なら生け贄にならなくて済んだのに…どうして…」
姫様をお産みになった王妃は狂ったように叫んで泣いていらっしゃいます。
誕生を聞いた王が部屋に入ってきましたが…すぐに王妃を抱き締めてなだめています。
今の王は賢王と呼ばれる真面目で誠実な王でした。先祖の約束を破ることはできる様な人ではありません。
「お名前はどうされますか?」
白髪の年老いた執事が思い空気の中、口を開きました。
「名前か…この姫は残念ながら城で育てる訳にはいかない。情がわいてしまうと生け贄として差し出すのは無理だろう。だから名前もつけない。強いてつけるなら…生け贄とだけ」
王は泣き止まぬ王妃を抱きしめながらポツリポツリと言葉をはきだしました。
「そうですか…。ですが姫様にはかわりありませんので我々が呼び捨てるのはどうかと思います。ですので…生け贄様と呼ばせていただきます」
「それで良い…。森の奥にある石の塔で育ててやってほしい」
「畏まりました…」
「いや!嫌よ!私の可愛い姫なのよ!連れて行かないで!!」
王妃が暴れるのを必死に王が抱きしめて押さえています。
「早く連れていけ!」
王は姫の顔を見ることもありませんでした。
部屋の扉を閉めると「いや~!!!」と泣き叫ぶ痛々しい王妃の声だけが聞こえてきました。
そうして生け贄様の石の塔での生活が始まったのです。
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