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75. 最後の晩餐の後 〈ロンデール国王視点〉
しおりを挟む「出産…子供を産んでいたのか?」
シャリルが…。
「はい。病気で療養していたのではなく妊娠していたのを隠す為にここから離れたそうです」
「何故…私にまで秘密にしていのだ…せめて私にだけでも言ってくれても良かったのではないか…」
「シャリル様は、王様に話すと嬉しさを隠すことが出来ないだろう…と心配されて話さなかった様です…」
…その通りだな。
きっと、隠しているつもりでも隠せない喜びが出てしまっていただろう。
シャリルはそこまで読んで離れていたのか…。
「…しかし、産まれた子供は…どうしたのだ?」
シャリルが亡くなった時に訪ねたが赤ん坊なんていなかったぞ。
「シャリル様が侍女のカロンに育ててくれるように頼んだそうです。王宮で育てるには命の危険があるから…と」
そこまで…キャロルがいなければ…こんなことにはならなかったという事だな…。
「…生きているんだな…シャリルと私の子供は…」
「はい。シャリル様を慕っていた者達が、力を合わせて守り育ててくれたようです」
シャリルの人徳か…。
「…そうか。名前は何というのだ」
「女の子でシャルルと名付けられたようです」
…ルルを名前につけるのは、ロンデールの王族のしきたりだ。
シャリルは分かりやすくしてくれていたんだな。
「会ってみたいな…」
「そう言うと思いましてカロンに手紙を送ってあります」
流石、エルルだな…先を読んでいたか。
「ただ、こちらに来てもらうのは危険があるかと思い、今回のお詫びも兼ねて王様があちらの国に訪問して会う手筈になっています」
「そうか…では、こちらの問題を全て片付けてからになるな」
キャロルは一応…王妃という肩書きがあるからな…国民に何と言うかだな。
シャリルは国民に好かれていたが、キャロルは嫌われていたからな…。
その発表の時に子供がもう1人いることを発表しなければいけないかもしれないし…まあ、本人がどうしたいかにもよるが…。
まずは、部屋に様子を見に行ってみるか…。
部屋の前まで来ると中からキャルルの悲鳴が聞こえた。
「キャアアーー!!!」
「どうした!」
急いで扉を開けて中に入ると…。
そこにいたのは老婆のような白髪に皺だらけの顔をしたキャロルが自分の髪をハサミで切っていた。
その横でキャルルが泣きながら止めようとしている。
「お母様…お止めください…お願い…します。お母様…」
あんなに自分の見た目を気にしていた女が…自業自得とはいえ哀れなものだ…。
「お父様…お母様を止めて下さい」
キャルルが助けを求めて私に抱きついてきた。
自分と血は繋がっていないとわかっていても、今までの情というものがあり…振り払えない…。
「助けてやっても良いが条件がある…聞けるか?」
「聞きます、お母様を助けてくださるのなら何でもききますわ」
「では、お前とキャロルは王宮から出ていかなくてはならない。避暑地の離宮にこれからは住むことになる。そして、王宮には勝手に来ることは許されない。お前達は監視され生きていくことになる…これを聞けるか?」
キャルルが呆然としている…。
「…どうして…そんな事…」
「聞けぬか?」
「…いえ…お母様の為なら…その条件を聞きますわ」
…決意したな。
「すぐに医者を呼んでこい。キャロルを診てもらえ…」
さあ、こちらは片付く目星がついたな。
後は、我が娘に会いに行くだけだ。
会えるのを楽しみにしているぞ…シャルル。
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