女神様、これからの人生に期待しています

34. 異変 〈マウル視点〉

フッ…。

「何ですか？思い出し笑いなんかして、気持ち悪いですよ、マウル様」

酷い言い様だなファド…。

だが、許してやる。
今の俺は機嫌が良いからな。

最近、始まったシャルルとの秘密の時間。
それが、思っていた以上に俺の楽しみになっている。

だが、難点もある。
近づきすぎると腕が痛くなる点だ。
解決策はあるが…。
こればかりは、無理にするわけにもいかないので、今はこのままだな。

今日も会いに行こうと思っていたが…。

朝から微妙に体調が悪い。

寝込まないといけないほどではないが、身体に重りがつけられたかのように重たいのだ。

「あれ？マウル様…右手の手の甲にそんなアザをいつ作ったんですか？」

　ん？

本当だ。いつの間に…？
しかし、大きいアザだな。
手の甲の真ん中に紫色の大きな丸いアザができている。
何処かにぶつけたかな？
…全く覚えてないな。

その時だった、突然俺の身体の全身に激痛がはしった。

「グゥ…アァァー！」

俺は声をあげながら、その場に膝から崩れ落ちた。

「大丈夫ですか、マウル様？！どうなさったのですか？」

ファドがかけよって来る。

「か…身体が…」

俺は自分を抱きしめるような格好になっている。

「誰か、医者を連れて来てくれ！早く！他の者は殿下を寝室に運ぶのを手伝ってくれ。早く！」

ファドは的確な指示をだしながら、俺を寝室まで運んでくれた。

痛みは治まる気配がなく、さらに痛みが増すようだ。

「ウワァァァーーー！！！！！」

俺は寝かされたベッドの上をのたうちまわった…。
そのうちに痛みが右手の甲に集中しはじめた。

まるで、右手が燃やされているみたいな熱さと痛さだ…。

何なんだこれは…。
今までこんな痛みを感じた事がない。

医者が来た。

俺は身体を押さえつけられ診察されている。
…が、医者は原因不明だと言っているようだ。
そして、ファドに何かを言っている。

ファドの顔色が青くなっていくのがわかった。
誰かを連れて来いと指示をしているようだ。

俺が覚えているのはここまでだった…。

あまりの激痛に、いつの間にか気を失ってしまっていたのだ。

意識を取り戻し、目を開けると妹のサリアが心配そうに俺の手を握りしめて泣いていた。

「……サリア」

「お兄様、気づかれたのですね。大丈夫ですか？」

可愛い妹を泣かせてしまった。

「もう、大丈夫だ。心配をかけたな…」

本当に嘘のように先ほどまでの激痛がなくなっている。

一体、なんだったんだ？

「良かった…」

俺は左手で妹の頭を撫でた。

「お兄様、また子供扱いですね」

サリアが涙を目にためながら笑顔をみせた。

癒される…天使だな。

「お兄様…このアザ…」

妹が握っていた右手を見て驚いた顔をしている。

そういえば、昨日アザができていたなと思い出した。

「丸い大きなあざだろ？」

サリアの目が大きく見開いている。

「…違います。花の形をした赤いアザです。これって…」

俺はすぐに自分の右手の甲を見た。

「本当だ…」

昨日は紫色の丸いアザだったのに、真っ赤な薔薇の花のようなアザになっている。

これは…。

「これは"運命の花"ではないのですか？」

サリアも同じ事を思ったみたいだ。

……俺に２つ目の"運命の花"の印ができていた。