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2-35 フルドには見せたくない…
しおりを挟むフードが取れる瞬間に咄嗟に男は顔を隠した。
そんなことをしなくても誰かわかっているのにな…。仕方ない…こちらから声をかけるとしよう。
「貴殿は…私の知り合いにそっくりなのだが…もしかしてラウリ?俺だ、同じクラスだったヴァンだ。覚えているか?」
ここにフルドがいたら笑われそうな芝居だと我ながら思うぐらい下手な演技だと思う。だがラウリは動揺しているからか反応がない。
もう少しこれを続けるしかないのか…。
「何百年ぶりだ?ラウリの一族はこんなにも長命だったとは知らなかったぞ」
長命という言葉に反応して身体がピクリと動いた。たぶん長命になったのも黒い水晶が関係しているんだろう。
「…い、いや、人違いだ。私は用事があるのでこれで失礼する」
フードを深く被り直して私の目の前から素早く立ち去ろうとする。
そんなことはさせるか。
ラウリの腕を掴む。
「なぜそんな嘘をつくんだ?魔力でお前だとわかると学生時代から言っていたのを忘れたのか…」
学生時代、私は人の魔力を感知する能力に長けていたので友人の人探しを手伝わされていた。同じ学校の者なら知らない奴はいないと言うくらいだった。
「…あっ、すまん。思い出したよ!そうだ学生時代にいたな。いやいや~すっかり忘れっぽくなってしまってな~。歳のせいかな~」
ラウリもわざとらしい演技で私に対応してくる。お互いに腹の中は真っ黒な大人になってしまったようだな。
「全く…忘れるなんて酷い奴だな。お詫びにどこかでお茶でもしながら昔の話をしないか?」
そこでラウリに何があったのかを知りたい。
「…申し訳ないが予定があるから無理だ」
暫く考える素振りを見せたが結局断られた。
「そうか…。いろいろと聞きたいことがあったのだが…仕方ないな」
ラウリはホッとしたような様子を見せる。
「だがなラウリ…お前…なぜお前が魔王に関わっているのかだけは教えてほしいんだ」
「なっ!なぜそれを知っている!?」
言った後で口を塞いでも遅い。ラウリの顔に大量の汗…たぶん冷や汗が吹き出している。
魔王というワードが心理的攻撃としては効いたということかな。
「お前は昔から魔力探知が苦手だったよな。ここ数日私はずっと側にいたんだけど気がつかなかったよな…」
「え?そんなに前から側に居たのか…」
ラウリが呆然とした表情で私を見つめる。
「ああ。教皇と呼ばれるようになったラウリの側にずっと居た」
「そんな…」
ラウリは教会での出来事から見られていたことに気がついたのだろう。膝から崩れ落ちて地面に倒れこんだ。
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