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2-34 それぞれの行方
しおりを挟む動きがあったのは意外な人だった。
「な、何をするんだ離せ!私を誰だと思っているんだ!?おい!聞いているのか!?」
沢山の兵達に囲まれて捕まえられて暴れる王子。
「私は聖女よ!貴方達が触れて良い人間ではないわ!離しなさいよ!」
王子と一緒にいた聖女も取り押さえられている。
どうやら、様子を見ていた王様が動いたみたいだ。どうしてこのタイミングだったのか…。
まあ、これは後でヴァン様から聞けるかな。
でも、これで聖女達が何かをしようとしていたのは止めることができたと言うことだから、こっちはひと安心ということになるかな。
問題はヴァン様が追いかけている教皇のほうだよね。あっちはこの二人のようにはいかないだろうな。
教皇でなければもっと簡単に済んだのだろうけど…。
ヴァン様今頃どうしているのかな。
~ヴァンサイド~
教皇を追いかけて来たのは良いがどうすることが正解なのか…と迷っている。
相手は知らない人ではない。
これ以上悪事をする前に止めた方が良いとは思うのだが…。
何が目的でこんなことをしているのかもまだわかっていないし、私がアイツの前に出ていった所で覚えているのかもわからない。そんな密な付き合いでは無かったしな…。
そう考えながらも胸の奥がモヤモヤとする感覚がある。
やはりこのままにしていてはダメだな。
私はアイツの進んでいる道の少し前に先回りをして人間に姿を戻した。
100年以上ぶりの再会だな…。
ゆっくりと顔を上げて道を進みだした。前からは深くフードを被ったアイツが歩いてくる。
「失礼、道に迷ってしまったみたいなのだが教えていただけるだろうか?」
私はアイツに声をかけた。
「…!」
アイツの肩がビクッとしたのを見逃さなかった。やはり私の思っている人物に間違いないのだろう。
「驚かせてしまったようですまない。しかし、困っているので助けてもらえると嬉しいのだが…」
私はアイツが何か言うまで話しかけることにした。
「…どちらに行かれるのだ?」
観念したのか小さな声でボソッと声をだしてきた。
「ここに行きたいのだ」
私は先程、即席で書いた教会の地図を見せた。
「…貴方は教会の信者か?」
少し顔を上げて私の方を見る様な仕草を見せた。
「信者…というか教会を見るのが好きでいろんな国の教会を見て回っているのだ。それにしても…貴方の声に聞き覚えがあるような気がするのだが…もしかして…」
私がアイツのフードの中を覗き込むようにした途端にアイツがフードの端を手で掴み深く被り直した。
「私は貴方など知らぬ。人違いだ!」
走り去ろうとしたのですぐに台風並みの風を起こして足止めをした。勿論、フードも取るために。
思わす通りにアイツは風に負けて転倒して、そのはずみでフードも外れた。
さあ、ここからどうしようかな。
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