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2-59 教祖
しおりを挟む聞き覚えのある声に間違いはないのだが…。
思い出せないな…。
「お前達これは一体どういうことなんだ!!!」
教会で怒号が聞こえる。思い出すのは後にしよう。何があったのかを確かめなくてはいけないな。
注意深く教会の内部を観察する。
大勢の教会関係者が先程の教祖と呼ばれる男の前で泣きそうな情けない顔をしている。
「水晶はどうしたのだ!?大事な物だと説明しておいたであろう!それなのに無くなっているとはどういうことなんだ!?説明しろ!!!」
教祖はヒートアップしているようだな。周りは逆にトーンダウンしているのが面白い。先程までの歓待の雰囲気はどこにいったのだ。
「…水晶はいつの間にか無くなっていたのです」
一人の男が消えかかるような声で話している。言っている事は正しい。フルドの力でその辺りの記憶は無いだろうからな。いくら聞いても無駄だろう。
「いつの間にか…だと!?何を言っているんだ!?ん?お前達…記憶も操作されているのか?」
教祖の手が先程発言した男の頭に触れた。すると男は気絶するように倒れてしまった。
何がおきたんだ?
倒れた男は起きてきそうにない。教祖は倒れた男の頭にまた手をあてている。
あれで何をしているんだ?
術を解いたのか?
記憶を探っているのか?
暫くして教祖は男から手を離してゆっくりと立ち上がった。
「どうやら私の邪魔をしようとしている輩がいるようだな…。面白いではないか」
教祖は不気味にも笑い始めた。
「水晶は新たな物を用意しよう。今度は結界を何重にもかけてやろう。私に挑戦するからには苦しみをたっぷりと与えてやらなくてはな…フフッ楽しいではないか。こんな気持ちは久しぶりだ!」
やはり水晶はまだ作ることが出来るようだ。しかも私達の存在をわかった上で罠でも仕掛けようとしているようだな。性格の悪い男だ。
教祖の発言を聞いていた教会の関係者は終始オドオドしている。
「教祖様…では新しい水晶を頂けるのですか?」
倒れた男はそのままで違う男が聞いている。倒れた男は気にならないのか?
「ああ、近いうちに持ってくる」
「ありがとうございます!」
男達は嬉しそうな声を出しながら教祖に対して頭を下げている。
教祖はあの水晶をどこで手に入れているんだろうか?
その事が気になった。
「今日はこれを置いていくから地下に仕掛けておけ」
懐から何かを出して先程の男に渡した。
私の位置からは中身までは見えなかったな。
取り敢えずはこの後あの教祖の後を追跡してみることにしよう。
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