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2-58 潜入 ヴァン視点
しおりを挟む薄暗い森の中にあるあの教会にまたやってきている。勿論人間の姿ではなくコウモリの姿でだ。木にぶら下がりながら何日間監視しているのだが…。
フルドと2人で水晶を壊してからまだ数日しか経っていないというのにあまり慌てている様子が無いのが不気味すぎるのだ。
「おい、準備できているのか!?もうすぐあの方が到着されるぞ」
「わかってます。大丈夫ですよ」
今日は朝からバタバタと忙しそうにしていたが、どうやら誰か教会にやって来るらしい。これだけ心配しているところを考えると恐らく教会の重要人物だろう。これは確認しなくてはいけないな。
「あ!あの方の馬車が到着したぞ!」
教会の人間が見ている方向を見ると金色の豪華な飾りがゴテゴテとついた豪華絢爛な馬車がやって来るのが確認できた。
…趣味の悪い馬車だな。
馬車を見た教会関係者は一斉に外に出てきてお出迎えの体制を整えている。
今日はいつもより人数が多いな。警備も増やされている。
「なんと立派な馬車なのだ!素晴らしい!!」
「あの方にピッタリですね」
…人の価値観の違いなのか?あれが素晴らしく見えるなんてあり得ないだろう。それともコイツら全員魅了されているのか?
不思議に思いながらも観察を続けた。
金ぴかの馬車が教会の入口に到着し、馬車の扉を教会関係者が開けた。
さて、中からどんな人物が出てくるのか…。
白いフード付きローブを着た人物が馬車から出てきた。フードを目深に被っているので顔が全く見えないな…。
「教祖様、お疲れさまです。どうぞ中にお入り下さい」
教祖と呼ばれた人物は頷いて教会の中に入ろうとしたのだが…。
「…一体どういうことだ?結界が壊されているではないか!」
…低く響く様な声で周りにいた関係者を見渡している。
「え?結界ですか…いつも通りのはずですが…」
教会の人間はオドオドとしながら返答している。記憶をフルドが操作しているので覚えていないから仕方ないのだが、こんなに効果があるとは思ってなかった。
「待て!お前達…術をかけられているのか!?」
教祖と呼ばれている人物はなかなかできる人物らしいな。フルドのやったことに気がついたようだ。
「へ?…術ですか」
とぼけたような返答を繰り返す関係者に教祖がイライラしているようだ。
「チッ!役に立たんな!!」
教祖とは思えない口の悪さだ。
しかし…なぜだか会話を聞いているうちに不思議な感じがしてきた。何だこれは…。
声を聞いたことがあるのか?
誰だったか…。
この声は…。
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