ブラッディーガールを探せ!

縁 遊

文字の大きさ
上 下
128 / 169

2-㊲ 作戦実行中

しおりを挟む

「ねぇ、貴方の声を聞かせて欲しいわ…。貴方は何の獣人なのかしら?」

 ヴァン様があれから一言も話していない。相変わらず聖女はヴァン様にベッタリだし…。

 僕が何か言った方が良いのかな?

「あ…」

 僕が話そうとしたのと同時にヴァン様が話し始めた。作戦の開始だ!

「申し訳ありません。聖女様の美しさに言葉が出ませんでした。お許しください…」

 ヴァン様の話を聞いていた聖女は嬉しそうに微笑んだ。

「フフッ…良いのよ。みんなそうなるの。仕方ないわ」

 うわぁ、どこまでも自惚れが強い人だな。何でこんな人がモテるんだろう。僕は絶対に嫌だな。

「それで、貴方は何の獣人なの?」

 ヴァン様はピクリとも動かず前をまっすぐに向いたまま固まっている。

「私はコウモリです」

 一瞬の間が空いて聖女が口を開いた。

「初めて聞いたわ。貴方の能力は何?」

 聖女の興味はやはり能力なのか…。ここまではヴァン様の予想通りに会話が進んでいる。

「コウモリですので飛ぶこと…後は一族の秘密です」

「そんなの…私には教えていただけるわよね?ねぇ…お願い…」

 聖女はさらにヴァン様に密着し始めた。ヴァン様、よく我慢できているな。

「そうですね…。それには条件があります」

「何?」

「あなた様に触れるのをお許しくださいますか?それも私だけではなくあの者もです」

 ヴァン様が指差したのはもちろん僕です。

「あらそんなことなの?良いわよ」

 やった!あっさりオッケーがでたよ。

 これがポイントだったんだよね。

 ヴァン様がたてた作戦の一つ目。聖女の魅力の力を奪うには触れていないと出来ないんだけど、問題は力を奪うと本人がすぐに気がついてしまう可能性が高いことだったんだ。

 そこで僕も同時に聖女に触れて魅力をかけることで気づかれずに作戦を進めるという作戦なんだよ。

 だからどうしても二人で同時に聖女に触れる必要があったんだけど…上手くいって少しホッとしたよ。

 だけど肝心なのは僕の魅力が聖女に効くのか…だよね。弱いとこの人には効きそうにないからかなり強力にかけないとダメだろうな。

 僕は心のなかで気合いを入れた。

 僕が近づくと聖女が僕とヴァン様に自分の手を差し出した。

 これは貴族女性がする仕草で、手の甲に口づけをしてもらう時にするものだ。

 僕とヴァン様は聖女の手を取り、アイコンタクトをとって頷いた。

 僕の手の中にはブラディーボールがある。

 頼むよブラディーボール!

 そしてヴァン様がゆっくりと聖女の手の甲に口づけたのを確認して僕も同じよう動作をした。

 上手くいきますように!!!
しおりを挟む
感想 149

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...