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2-⑱ 気のせいだよね?
しおりを挟む「こら!ポル頭とお尻!」
慌てた声でパルさんが注意している。驚いたせいか馬車が急に止まった。そのせいで僕もポルさんも体の体制が崩れて床に倒れてしまった。
「痛…」
頭を擦りながらパルさんとポルさんの様子を伺う。パルさんが前の御者席から僕達のいる荷台に移動してきてポルさんを抱き起こしていた。
あれ?ポルさんの耳としっぽが無くなっている。…幻じゃなかったよね?
そういえばさっきまで光っていたブラディーボールの光も収まってしまっている。
「あっ…すいません。大丈夫ですか?」
パルさんが思い出したかのように僕の方を見て心配そうに声をかけてきた。
僕は黙って笑顔で頷いた。
「もう!兄さん急に止まるなんて危ないじゃない!」
いや、ポルさんがパルさんを驚かしたからだと思うけど…。文句を言われたパルさんも同じことを思っているみたいな顔をしている。
「ポル…気を付けろとあれだけ言われたのを忘れたのか?」
パルさんの声がさっきまでとトーンが違う。
「……忘れてないわよ」
ポルさんがパルさんから目線を外して気まづそうに下を向いた。これは同じことを何回も注意されているんだろうと予測できるな。
「フルドさん、さっき見たことはどうか秘密にしてください!この通りです!お願いします!」
パルさんが僕の目の前で土下座した。
そう言えば今さら思い出したよ。この国での獣人は希少で、特に女性は誘拐されることも多いと聞いたことがあったよ。多分、それで僕に秘密にしてくださいと言われているんだろうな。
それにしても…ウル達ウルフ族は満月の日だけ変身できるとは聞いていたけど…獣人は聞いたことがない。耳やしっぽを隠すことが出きることに驚きもあるな。
もしかして…これも凄い秘密なのかな。
「あの頭を上げてください。誰にも言いませんから」
僕の言葉を聞いてパルさんがゆっくりと頭を上げて僕を見た。でもまだ心配そうな顔をしている。どうしようかな。
こうなったら後で気まずくならない為にも本当のことを言ってしまうか。
「え~と、僕の友人にもウルフ一族がいます。獣人の人達との関係を壊すようなことはしません。それに実は僕も普通の人間ではなくて…ヴァンパイア一族の者ですから…」
僕の話を聞いてパルさんとポルさんが驚いた表情を見せた。
「…ヴァン様なの?」
あれ?
ポルさんから聞き慣れた名前が聞こえた気がしたけど気のせいだよね?
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