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2-⑫ 久しぶりのヴァン様
しおりを挟むやっとフルドから便りがきた。こんなに待ち望んだ手紙は無いだろう。急いで手紙を開封したが…。
「なんだと…フルドめ…」
私の欲しい答えはその手紙には書いてなかった。今度アイツから何かを聞かれても答えてやらないことが決定したな。
「しかし、どうしたものか…」
まさか何百年と生きてきた私がこんなこと1つに迷う日が来るとは思っていなかった。
私は元来考え事が得意ではない。
だから、即決即断が多い。長く考えても結果はたいして変わらないと悟ったからなのだが…。
それなのに…愛しい人のプレゼントを決めるだけにこんなに悩むなんて自分でも信じられない。
前回はどうだったかと記憶を辿るが…ん~、思い出せん。
前世の彼女は何でも欲しいものがあると口にしていたから分かりやすかったのかもしれないな。
今の彼女は人が苦手なのか前世の時よりは口数が少ない様に思う。
それとなく欲しいものを探ってみたのだが上手くいかなかった。
「別に欲しいものは無いです」とか「欲しいものは森にあるので気にしないでください」とかと言われてしまった。
無欲すぎないか?と心配になったし、無垢すぎて悪い奴に騙される事が無いようにしっかりと見守らなければいけないと決意を新たにはしたがな。
「はぁ~」
そんな彼女…マリーアに何を贈れば喜んでもらえるんだ?
フルドをあてにしたのが間違いだったのか?
確かに…アイツはブラディーガール達に接する時もスマートとは言い難い感じではあったが、今時の女性の好みくらいは把握してるだろうとは思って聞いたのだが、それも間違いだったのだな。
「ヴァン様~!」
森の木の下で休んでいた私を見つけて駆け寄ってくるマリーアの姿が見えた。
見つけて寄ってきてくれるぐらいには嫌われていないようだ。
「どうしたんだ?」
駆け寄ってきたマリーアに優しく声をかける。
「これ、ヴァン様に食べて欲しくて…」
顔を赤くしながら私の目の前に出してきたのは、森になっている果物だった。
しかし、これが採取できる所は危険な動物が出てくるとこだったはず!
「マリーア!ケガはしていないのか?これは危険な森になっている果物だろ」
マリーアの身体をケガしていないかチェックした。マリーアは顔を更に赤くしながら頷いている。
「だ、大丈夫よ。私も人から頂いたの…だからお裾分けしたいと思って…」
「そうか…」
ホッとする自分に驚く。
こんなに些細なことでもマリーアに対しては心配で仕方がない自分がいることを昔の私は理解していなかった。
「フフッ…。ヴァン様の笑顔を見る事ができて幸せだわ」
自分でも気がつかなかったが、マリーアを見て無意識に笑顔になっていたようだ。
幸せそうに微笑むマリーアが愛しすぎる。
「私…ヴァン様がここに来てくれて嬉しいのよ。毎日が幸せなの…」
私は思わずマリーアを抱きしめた。
プレゼントは何でもいい。
こうしていられるだけで私達は幸せなのだ。
そう思えた日だった。
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