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87. 始まった儀式
しおりを挟む満月の儀式日にヴァン様が帰って来たのはホッとしたよ。
だけど怪しい袋を持って帰ってきて、しかも僕にその袋を開けろって言われてるんだけど…。
「え…これ…僕が開けるんですか?」
ヴァン様は何も言わずに頷いた。
何が入っているかわからないものを開けるのは勇気がいるよ。
そっと袋の口を開けて中を見たが暗くてよく見えない。仕方がないから袋を斜めにして中にあるものを外にゆっくり出した。
「何これ…?!」
中から出てきたのは小さな木箱、赤い液体の入った小さな瓶と白い粉のはいった小さな瓶、それと、1束の髪の毛。
小さな木箱の中身が気になるけど、開けたくない。何か不気味なんだよ!
「ヴァン様…因みにこの箱の中身が何か聞いても良いですか?」
『開ければわかる』
開けるのが怖いから聞いてるんだけどな…。教えてくれる気は無さそう。
僕は教えてもらうのを諦めて箱を開けた。
「え?何ですかこれ?」
中にあったのは干からびたような細い何か。
『見たことが無いのか?それは私のへその緒だ』
「え!ヴァン様のへその緒?!」
そんなのが儀式にいるの!?
『儀式に必要なのは自分の物。へその緒・血液・骨・髪の毛等だな』
ひぉえ~!!!
あれ?ちょっと待って!
「え…骨って?自分のじゃないですよね」
自分の骨なんて取り出せないはず。それともヴァン様なら何か方法があるのかな?
『そうだな。骨は血縁関係のある一族の者の骨だ。だが、他は全部自分の物だぞ。へその緒や血液や髪の毛は魔法で腐敗や劣化しないように保管しておいたものだ』
「へぇ~…」
…としか言いようがない。何それ!
人間の姿の時からこういう事態を考えて用意していたってことだよね。え?よくあることなのか?そんなこと…ないよね。
激しく動揺するよ。
もしかしたら僕も可能性があるってことだからね。
僕がコウモリ…。
『お前…変な事を考えているだろう?早く儀式の準備を手伝え!』
飛んできたヴァン様に頭を翼で叩かれた。
一体これを使ってどんな儀式をするつもり?
ヴァン様を見ると器用に口で枝を咥えて地面に何かを書いていた。
不思議な文字や数字が書かれた魔方陣みたいだ。カッコいい!!!
書き終わったのか真ん中の何も書いていない所に集めてきた物を置けって僕に言っている。
ヴァン様もその中心にいる。
まるでうつ伏せで貼り付けにされているかに見える体制で少し笑ってしまう。
ヴァン様に睨まれたけどね…。
ごめんなさい。
書き終わるのを待っていたかのように満月の光が雲の間から射してきた。
そしてヴァン様に満月の光があたる。
その瞬間、辺りは真っ白な光に包まれた。
な、何が起きているんだ!?
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