70 / 169
70. 波乱の予感
しおりを挟むこんなに興奮している人を見るのは初めてだ。因みに僕はまだ揺さぶられています。
「ねえ、いつからなの?ねえってば!」
そろそろ気持ちが悪くなってきたので揺さぶるのを止めてほしいんだけど…。
「うっ…」
「え?」
僕がえづいたことで女性は驚いて揺さぶるのを止めた。
「あっ、ごめんなさい。つい、興奮して…」
どうやら正気に戻ってくれたらしい。顔を赤らめてもぞもぞしている。
「今更だけど、私はマリーア。この森で魔法の薬を作っているの。貴方の名前を聞いても良いかしら?」
僕は大きく息を吸って呼吸を整えた。
「…僕はヴァンデと言います。夜分に訪れてすいません」
挨拶はキチンとしないとね。
「ヴァン…デさんか。夢の中の人と一文字違い…」
マリーアさんが僕の名前を聞いた後に何かを呟いた。
「え?」
僕は気になったので聞き返した。すると、マリーアさんは慌てて口をふさいだ。
「ああ、何でもないの!それよりブラディーボールの話を聞かせてほしいわ」
そうだ!何故マリーアさんがブラディーボールをこんなに気にしているんだろう。
「あの…マリーアさんはブラディーボールを何故知っているのですか?」
やっぱり一族の誰かから聞いているのかな?
「私…このボールを持って生まれてきたらしいの」
…と言いながらマリーアさんは袋の中からレインボーに光るボールを取り出した。
「何故なのかずっと不思議だったのだけど、ある時鑑定ができるお客様が見てくださってこれがブラディーボールと呼ばれる物だと知ったのよ」
ブラディーボールって僕達ヴァンパイア一族でなくても持って産まれてくるなんてあるのかな?チラリと窓際にいるヴァン様を見た。
ヴァン様は何か驚いた表情をして固まっていた。やはりいつもと様子が違う。いつもならやかましいぐらい話してくるはずなのに…。
これは頼りにならなそうだから、自分で調べるしかないのか。
「え…と、マリーアさんはヴァンパイアと血族関係があったりしますか?」
マリーアさんは不思議そうな顔をした。
「ヴァンパイア?いえ、私は魔女の一族よ。それが何か関係があるの?」
魔女…やっぱり魔女なんだ。え?でもじゃあなぜブラディーボールを持って産まれてきたんだ!?
「僕はヴァンパイア一族なのですが、一族の者はブラディーボールを持って産まれて来ることが多いのです」
「え!そうなのね」
目が見開いている。かなり驚いているみたい。
「あっ、でも…」
マリーアさんは何かを言いかけて途中で止めてしまった。
「でも…何ですか?教えてください」
言いにくそうに下を向いたり僕の方を見たりしてしばらく考えていた。
「決めた!話しますけど…笑わないで下さいね。実は私…幼い頃からずっと同じ夢を見るんです。その夢にヴァンパイアぽい人が出てくるんです。私はその人に「ヴァン様!」と呼びかけて幸せそうしているんです…。夢にヴァンパイアって変ですよね…」
…ヴァン様!?
えっ!?何か波乱の予感しかしませんけど~!
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる